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081話


 代官公邸に着くと、フェリクスおっさんが来てるそうなので、ワタシはジュリアンさんに「取り敢えず部屋で一服してから行きます」と伝えて貰って、例の客間に入った。


 ジュリアンさん達は、おじ様の話以降、何故か明るさを取り戻してたんで、やっぱ署名紙焼き捨ての件がショックだったみたいだね。


 全くさぁ。黙ってないで、ヤバいとかマズいって言ってくれればイイんだよ。


 こっちは脳筋なんだから、言われないと判んないし・・・って、まぁこの外見から「脳筋」の二文字は浮かばないのかも知れないけどさ。


 おじ様には無論「独立騎士団結成の際は宜しくお願いします~」って返事をした。


 だって例えその場限りのお世辞にしたって、あんなヒトにそんな事を言われちゃったら、そりゃ嬉しいに決まってるもんな。


 独立騎士団なんて、まだホントに絵に描いた餅でしか無いけど、おじ様なら歓迎だ。


「ひぃ様、本気であの男を将来身近に置かれる積りですか」


 部屋に入ると、レティのヤツがお茶の支度をしながらも、ジト目で睨んで来た。


「レティは反対なの? まぁおじ様だって冗談半分だったとは思うけどさ」


「いいえっ! あの男は間違い無く本気です。いずれひぃ様が公認騎士団を設立されたら、必ずやって来るでしょう」


 むう。コイツってば、やけに自信たっぷりに言いやがりますな。


「レティって、おじ様の事を知ってるワケ?」


「あの男は旧聖王国の元親衛騎士で、オマリー卿が育てた騎士の生き残りです。総裁殿下に請われて協会入りし、直下で手足をやっている様ですが、側近と言う程総裁殿下に近くも無い様ですから、協会に未練は無いでしょう」


 へぇ。おじ様ってししょーの筋のヒトなのか。


 だからワタシにシンパシーがあるのかな。


 考えて見れば、最初っから結構当たりは良かったし、妹弟子とかそう言う感じなのかも知れん。


「アンタさぁ、おじ様の事、妙に詳しくない?」


 用意されたお茶を飲みながら、取り敢えず突っ込んでみると、レティはムッとした表情のまま、目線を合わさない。


「あの男は初めから妙にひぃ様に秋波を発しておりましたので、胡散臭いと思って昨夜、複数の情報屋に当たったのです」


 ああ、昨日の晩か。どうりで寝不足っぽいと思ったら、そんな事をやってたのかよ。


 なんだかなぁ。コイツってばホント、能力のムダ使いが激しいヤツだよねぇ。


 それともおじ様の背景に、何かヤバイ系の話でもあるんだろうか。


「単刀直入に聞くけどさぁ。一体アンタはおじ様の何が気に入らないのよ? ワタシ的には望外の話だと思うんだけどさ」


 何かもうメンド臭くなって来たし、ド真ん中を訊いてやるか。


「ひぃ様は、それ程にあの男が気に入られたのですね・・・」


 んん? 何かレティのヤツが急に萎れた犬の様になってきましたよ。


「だーかーらー、ワタシの話じゃなくってアンタがどう思ってるのかって事よっ」


「・・・きゃらがかぶっているのです・・・」


 強い調子で言い切ると、完全に萎れたワンコ状態のレティが、俯いて何かをボソッと口にした。


「えっ? 聞こえないんだけど」


「ですからっ、あの男はわたくしとキャラが被っているのです!」


 はぁ? きゃらが何だって?


 口をあんぐりと開けちゃいながらも、レティのヤツが泣きそうな顔で言った言葉を頭の中で反芻してみたけど、何の事やらさっぱり判らない。


「ひぃ様のお側に同じ様なキャラは二人も要りません! あの男はわたくしよりも使える男ですっ。わ、わたくしは、要らない子になってしまうのです・・・」


 えっと・・・コレってマジで言ってるの?


 思わずレティを見れば、ヤツは何やら明日の処刑を宣告された罪人の様に萎れ果て、ショボボーンとした感じで床を見てる。


 ばっ、ばっかばかしいぃぃぃっ!


 一体全体何の話かと思えば、下らなさ過ぎて倒れそうになっちゃうんですけど!!


「あのさぁ、レティはレティなんだし、誰も代わりには成れないでしょ。例えおじ様と組んだとしても、ワタシとレティの関係は変わらないと思うんだけどっ」


 ドドッと巨大な疲れ(主に精神的な)に襲われながらも、辛うじて言葉を口に出すと、涙目状態から叱られた犬くらいには復活したレティが、変な上目遣いでこっちを見た。


「本当デスネ?」


「あー、もうっ! あったり前の事を訊くなっつーの!!」


 真剣な疲れ(主に精神的な)に圧し掛かられてキツい中、ちょっとキレかかりながらもそう言うと、今の今まで萎れワンコ状態だったレティが急に立ち上がってクルクル回り出しやがった。


「にょっほほほ! やっぱりひぃ様はひぃ様ですっ。レティは今、とても感動いたしました!!」


 オヒッ! 今までの雰囲気はなんだったんだよっ? 小芝居かってのっ。


 真剣な疲れのせいで机に突っ伏しながら、ワタシは頭を抱えた。


 まさかと思うけど、将来に独立騎士団を結成する際、人を迎える度にこんなのをやるハメになるじゃないだろうなぁ。


「あの男は能力的にとても使えますから、本当に来たら歓迎してやりましょうっ」


 さっきとは真逆の事まで言い出したレティにウンザリとしながら、机の上に突っ伏したまま、口だけ動かして紅茶を飲む。


 ああ。そー言えば、フェリクスおっさんも似た様な事をやってたよね、前に。


 人って本当に精神的に疲れると、頭すら動かしたくなくなるんだね。一つ勉強になりましたわ。








 後で行くとジュリアンさんに言ってしまった手前、精神的な疲れを引き摺りつつも、ワタシは仕方無く代官私室におっさんを訪ねた。


 レティは夕食の準備があるとやらで、上機嫌なままでどっかに消えたので、今は一人だ。


 この疲れを何処にぶつけてやろうかって感じだけど、多分おっさんも疲れてそうだし、当たるのも悪いよなぁ。


 そう思いながらも豪華絢爛な部屋内に入ると、何故かおっさんは、ちょっと機嫌がイイ感じだった。


「よう! 聞いてるとは思うが、俺も此処に寄せて貰う事になった」


 ぬにゅう。何の悩みも無さそうなおっさんが憎いですよっ。


「部隊の司令官サマなんだから当たり前でしょ。そんな事より、デラージュ閣下の方はどうだったの?」


 聞かなきゃいけない話をさっさと聞いて、速攻で戻って寝ちゃうかなと思って、挨拶もロクにせずにド真ん中を訊いてやる。


 するとおっさんは、何故かニヤッと笑った。


「正直、分が悪い。まだ完全体にゃ程遠いって感じだが、ハイドラに手足が生えやがってな」


 ニヤつくおっさんがちょっとキモいと思ってると、その口からトンデモ無い話が飛び出て来た。


「ちょっ、手足って事はハイドラじゃ無くて、ドラゴンじゃない!」


 竜種の魔物に手足が生えれば、それはもう立派な魔物ドラゴンだ。


 ここに来て魔物ドラゴン登場かよっ。精神的に疲れたなんて、言ってるバヤイじゃないですよ!


 ワタシは唖然としておっさんを見返した。


「流石のお前も予想外って顔だな? まぁ魔物ドラゴンなんざ、普通のヤツなら絶望しか無えバケモンだからなぁ」


 おっさんも言ってるけど、魔物ドラゴンってのは、正しく地上最悪の魔物と言ってイイ。


 もっとも正確に言えば、魔物の変化である以上は、本物のドラゴンとは違うんだけどね。


 本物のドラゴンは魔物じゃ無く半魔法生物で、基本的に人間の敵対種じゃ無い。


 人間と同等以上の知性に、対物理や対魔法においてほぼ無敵の巨大な体躯を持ち、各種の解析不可能な魔法を使う地上最強の生物なんだけど、それだけに人間には不干渉&没交渉で、普通は人前に現れる事すらほとんど無いのですよ。


 それに対して、歳月と共に力を蓄えた竜種の純粋魔物が変化するのが魔物ドラゴンってヤツで、本物には及ばないまでも、やっぱり似た様な特性を持ってるんだよね。


 大きな違いは人間に対する態度で、魔物ドラゴンは魔物だから当然の如くに人間を襲って来る。


「どうだ、少しはビビったか? ま、最悪はランスに篭城だが、そん時は俺とお前でアレをリプロンまで引っ張ってくれって話だから、まだまだ協会は深刻って感じじゃ無えな」


 ワインを飲みながら変にニヤつくおっさんは、余裕たっぷりな感じだ。


 うーむ。まさかと思うけど、おっさんってば、魔物ドラゴンに突っ掛けようって考えてるのかな。


 流石のワタシも、魔物ドラゴンに単独で突っ込む程バカじゃ無いんだけどねぇ。


「リプロンまで引っ張って、第二軍の総攻撃って感じ?」


「まあそうだな。協会にとっちゃ、今ここで俺やお前って言う人外戦力がドラゴンもどきにやられちまうと痛え」


 ふうん。成る程ね。


 戦力の漸次投入は悪手中の悪手だ。ヤるなら大戦力の一括投入で、一気にケリを付けるのが基本だもんな。


 おっさんやワタシが真に活躍するのはその時って感じかなぁ。


「で、だ。明後日にやっと俺達の出番が来る。明日、デラージュ閣下が攻勢を掛けるそうだが、ダメだった場合は徐々に撤退って事で、その撤退を俺達が支援する事になった」


「まさかと思うけど、おっさんは魔物ドラゴンに突っ込もうって考えてるワケ?」


「オイオイ。俺だってバカじゃ無え。だが、ちょいとばかり小突いてみたって、バチは当たらねえって寸法だ。何たって、閣下の撤退支援だからな。スタンピードの本尊を足止めするのは基本中の基本だろ?」


 ああ。おっさんのニヤニヤ笑いはそれが原因なのかぁ。


 ホントにこのおっさんってば、脳筋が服を着て歩いてる様な筋金入りの阿呆たれだよねぇ。


 でも、そう言う話になってるってコトは、ワタシにも「味見」の権利はあるってコトだ。


「おい、何かツラがニヤけて見えるのは俺の気のせいか? お前も本当に大概なヤツだよなぁ」


 ニヤニヤ笑いながらワインを飲んでるおっさんが、妙な言い掛かりを付けて来た。


 ちっ、余計なお世話だってのっ。人の事を言う前に、まず鏡を見ろって言うんだよね。


 ワタシはおっさんに向けてベーっと舌を出しながら、明後日の決戦を思った。


本日もこの辺で終わりにさせて頂きます。

読んで頂いた方、有難う御座いました。


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