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討伐騎士マリーちゃん  作者: 緒丹治矩
ランスの街にて
78/221

078話

 それからレティとは結構な時間話し合った。


 聞いてみないと判んない事ってやっぱり結構あるんだよね。


 例えば、ワタシが討伐士協会の事を良く知らなかった様に、レティも魔法士協会の事は全く知らないに等しかった。


 お姫様時代のワタシって、それなりに将来を嘱望された魔法士の卵だったし、マルシル王家の血を引く地封伯爵家の次期当主ってのもあって、色々な形で魔法士協会とは接触があったんですよ。


 だから魔法士協会の事は結構知ってる。


 なんたって魔法の世界は、血筋とコネが幅を利かせる世界だから、かつてのワタシなんて、群雄する各派閥から勧誘され捲くってた位だしね。


 ししょーじゃないけど、ワタシだって魔法士協会の方が馴染みなんだよ。


 マルシル以外の協会支局に行った事は無かったけどさ。


 ま、だからこそ余計にこの身では、あまり魔法士協会には近付きたく無かったんだけど、どうやらそんな事を言ってられる状況でもなさそうだ。


 そんなこんなで、お互いにある程度意見が擦り合わさって来た頃に、アリーの所から先触れの人がやって来た。


 当然ながら答えはウエルカムなのでそう言うと、侍女っぽい感じの女の人はささっと下がって、ほとんど直後にドアがノックされる。


 ぬう。なんでしょね、この阿吽の呼吸っぽい感じは。


 今この屋敷の中にいるのは皆、討伐士協会の部隊の人の筈なのに、こんなにしっくりと侍女役をこなされると、逆に違和感があるんですけど。


 おじ様の部隊の人ってハンパ無い!


「お姉さまっ!」


 レティが入り口の扉を開けると、待ってましたって感じにアリーが部屋の中に飛び込んで来て、ワタシに抱き付いた。


 うにゅう、可愛い!


 いやぁ、こんなお人形さんみたいな美少女に抱き付かれるのって、ホントに素晴しい事ですね!


「アリーが元気そうで良かったよ。結構な乱戦だったし、弾でも掠ったりしてたらワタシ、本気でおっさんに果し合いを申し込もうかと思ってた位だしさ」


 愛くるしいアリーを抱き止めて、右手で頭をナデナデしながらそう言うと、アリーがドヨヨンって顔で俯いちゃった。


「私、何のお役にも立てなかった所か、終始眠っていたなんて、本当にどうお詫びすれば良いのか・・・」


 アリーは戦闘が始まった直後、寝ている所をおっさんが魔法で起きない様にしたらしいけど、おっさんにしては中々グッジョブって感じだと思う。


 人間同士の殺し合いなんて、見せないで済むならその方がイイに決まってるもんね。


「アリーは無事である事があの場の仕事だったんだから、それでイイんだよ。前にも言ったよね? アリーにはアリーにしか出来無い事をやるべきだって」


 キュウっと抱き締めて、顔を覗き込む様にしてそう言うと、アリーは何かくすぐったい様な仕草をして顔を上げた。


「お姉さまにそう言って貰えると、何かとっても気が楽になった思いですっ。そうですよね、今の私が居ても足手纏いにしかならないのですから」


 うんうん。


 言葉の割には元気のあるアリーの雰囲気にホッとして、ちょっと惜しかったけど、ワタシは一旦抱き締めたアリーを放した。


「でも私、本当はちょっとお姉さまの御活躍をこの目にしたかったですっ。協会部隊の方々が、お姉さまの凄い大活躍を口々に教えて下さって、羨ましく思いましたから」


 離れた瞬間、アリーが妙な話をし始めて、思わずガックリ。


 新聞とかに書かれてるせいか、はたまた真夜中の即席講談会のせいか、この部隊の人達ってば、ヘンにワタシを持ち上げようとする雰囲気がある。


 さっきのレティの話も絡んでるんだとは思うけど、こうヨイショされ捲くりだと、ちょっとウンザリしちゃうよ。


「アリー、強者たるもの、己の武勇伝は語らないモノよ。貴女もワタシの義妹を名乗るのであれば、語るより語られなさいね」


 何か話してくれって言われるのがイヤなので、テレ隠しも込みで適当に予防線っぽい事を言うと、アリーのお人形さんみたいな顔が輝いた。


「お姉さま・・・カッコイイですっ。私、本当に憧れちゃう!」


 再びキュッと抱きついて来たアリーを抱き締め返しながら、至福の一時に酔う。


 にゅっふふふ。クロ君と違って、妹だとこう言う事に抵抗感が無いからイイよねっ。


 クロ君ってば、最近はこっちからのスキンシップをやや嫌がる傾向が出て来てて、「反抗期なのっ!?」ってちょっとショックに感じちゃった位だ。


 まあ反抗期って言うより、世に言う「色気づいた」って事なんだろうけど、実姉相手に恥ずかしがられてもなぁ。


 もっとも、そういう所も可愛いと思っちゃったりして、ダメ姉っぷりを色々と晒し捲くってたワケなんだけども。


 しかし、さっきから背後の妙な妖気が鬱陶しい。


 レティのヤツ、またぞろ変な事を考えながら見てやがるんだろうなぁと思って目を向けると、直後にアリーがパッと離れた。


「そう言えば私、お姉さまを昼食にお誘いに来たのでした!」


 にゅう。昼食?


 結構な不意打ちだったので、ちょっとポカンとしちゃったけど、部屋の柱に掛かってる結構な装飾付きの時計を見れば、確かに時刻は12時を大きく回ってた。


 ありゃりゃ。なんかレティのヤツと色々話してる内に、随分と時間が経っちゃった感じですよ。


「御免なさい。私、まだお姉さまの御都合をお聞きしていないのに、先走っちゃって・・・」


 ワタシがちょっと考える様な仕草をしたせいか、アリーが表情を曇らせて俯いた。


 オー、ノー! 美少女に憂い顔は似合いませんよっ。


「ううん、違うのよ。別に予定なんか無いし、討伐戦の方もワタシ如きが出しゃばる様な感じじゃ無いものね」


「本当ですかっ。良かった!」


 復活したアリーが手を繋いできたので、ホッとして握り返しながらもレティに目配せをする。


 このまま行っても大丈夫だよねってサインだけど、レティのヤツはニヤニヤ顔で頷きやがった。


 コ、コイツ、何か妙な方向に考えてやがるんじゃないんでしょうねっ?


「ではお姉さま、参りましょうっ」


 こっちの妙なやり取りに気付く様子も無く、可愛いアリーが元気良く言ったので、肯いてそのまま部屋を出る。


 さっきの侍女役の人が、ほのぼのとした感じで微笑みながら、スッとアリーの前に出た。


 うぬぅ。この侍女役の人って本当に出来る人だわ。


 とても素人女官とは思えないなーと思いながら、ニコニコしたアリーに手を引かれ、ワタシ(と後ろのレティ)はそのまま廊下に出た。


「さすがはお嬢様です。あっと言う間に斯様な美少女をモノにされてしまうとは」


 背後から妙な事を耳元で呟いてくるレティのヤツを「めっ」って睨むと、ワタシは宙に浮いた様な心持ちでアリーの後を歩く。


 ああっ、至福!


 こんな可愛らしい美少女に、嬉しそうな顔でおててを握られて連れて行かれるなんて、一体何処のパライソに連れて行かれるんでしょうねっ。


「お姉さま。こちらですっ」


 結構な邸内の廊下をアリーに手を引かれて進めば、昨夜は気が付かなかった邸内の様子が目に入って来た。


 ランスの代官公邸はその広さや規模こそ、ブロイ家の上屋敷(王都別邸)に大きく劣るものの、内容はどっこいどっこいの豪華さだ。


 田舎町で、かつ急ごしらえだったアレの代官屋敷が豚小屋に見えちゃう感じだね。


 邸内の廊下は、その一本一本が繊細な彫刻と豊かな色彩で飾られた柱から、かなりの値打ちがありそうな壁面に掛かる様々な絵画群まで、とてもじゃないけど、たかが一介の代官風情の屋敷とは思えない。


 ホント、西聖王国って金持ちだよな。


 だって代官公邸って事は、コレって全部王家のモノって事だからねぇ。


「流石はランス代官公邸って所ですね、お嬢様」


 後ろから侍女然として着いて来るレティが、半ば呆れた様な声で耳打ちして来た。


「クズ公爵共が蓄財に励み捲くった結果がコレだよ。でもこれ程の事をしても、民衆はそれ程貧しくないって方が驚きなんだけどね」


 西聖王国も南部地方となれば魔物が出易いけど、マルシルや東聖王国の様に強力な魔物がガンガン涌いて出る様な所じゃ無いから、他所と違って農業牧畜が盛んだ。


 やっぱ一次産業が発展するのって大きいわ。


 他国じゃ農地なんてほとんどが砂の城だもんな。


 他者には聞こえない程の小さな声で呟き合いながら、しかし、っと心の中で思う。 


 見た感じ、広い邸内は閑散としてて人影が少ない。


 閑散としてるのは、代官公邸が開店休業状態だからだし、その上に使用人や家人も居なくて、居るのはおじ様の部隊の人達とジュリアンさん達だけなんだから当たり前だ。


 本来なら、そんな状態の見知らぬ屋敷の中を歩くなんて、緊張感が先立つモノなんですよ。


 でもワタシ達の周囲に限って、結構な数の人の気配があるから、これが結構気楽に歩いて行けるんだよねぇ。


 おじ様が率いる特務部隊って、貴族護衛のプロっぽい話だったけど、こう言うのを見ると「確かになぁ~」って思う。


 今現在も、ワタシ達は10人近い対人のプロっぽい気配に囲まれてるのに、所謂「仁義は切ってる隠れ方」なせいか、逆に妙な安心感があるんだよね。


「お姉さまは本当にとても高貴なお生まれなんですねっ」


 にゅ? 目当ての部屋の前に着いたのか、アリーが立ち止まってこっちを振り向いた。


「だって、これだけ沢山の人達に見守られてるのに、何か安心した様なお顔をされてるんですもの」


 ほほう。アリーってば、ちゃんと人の気配を読めるんだね。


 可愛いだけじゃなくて実力も秘めてるなんて、ホントにもう、どうしてくれようかって感じですよっ。


「アリーだってそうだと思うけど、屋敷の中にこっちを見てる影が幾つもあるってのは、普通は安心する所でしょ? 別に生まれとか関係無いと思うんだけど」


「お姉さま。一般の方々ならば、こう言う場合は落ち着かなくなる物ですよ? 私だって何時もよりずっと多いので少し緊張してしまう位なのに、真逆だなんて、如何にその様な環境にお馴染みであられるかが判ろうと言う物です」


 げげっ。言われてみればそうカモ。


 思わぬ指摘にちょっとマズかったかなと思いつつ、御落胤って設定なんだからイイかと思い直して、フフッと微笑んで返すと、アリーがちょっと顔を赤くした。


「はぁ。お姉さまって本当にお綺麗で、その様に微笑まれると、何か溜め息が出ちゃいます」


 いやぁー、ちょっと顔を赤くしたアリーの方が途轍もなく可愛いですっ。


 ワタシなんて見た目はコレだけど、中身は脳筋バカで、ついでに学院病まで引き摺ってる様な阿呆たれだもんね。


「有難う。でもアリーの方がずっと綺麗で可愛いと思うよっ」


 アリーの可愛らしさに、思わず思った事を口に出すと、アリーは「えへへっ」って感じに笑って、テレ隠しに抱き付いてきた。


 にゅっふふふ! いやぁ役得役得。恥ずかしげな美少女に抱き付かれるなんて、そうそうある事じゃ無いですよっ!!


 もう喜び勇んで、踊り出したくなっちゃうわっ。


 しかし、ふと濃い妖気を感じて後ろを見ると、レティのヤツが他人には見えない角度で親指を立てたサインをだしてやがった。


 オヒオヒ。その「グッジョブ」って感じのサインは辞めてくれませんかね。


本日もこの辺で終わりにさせて頂きたいと思います。

読んで頂いた方、有難う御座いました。


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