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討伐騎士マリーちゃん  作者: 緒丹治矩
ランスの街にて
75/221

075話

申し訳ありませんが、後で見ると色々と酷い所が多かった為、前話に当たる074話は書き換える事になると思います。

内容は大きく変えませんので、その場合は笑って許してやって下さい。



「コーニス殿とお見受けしますが、大丈夫ですかな?」


 にこやかに声を掛けられたせいか、思わず差し出された手を取ると、おじ様はまるで貴婦人の介添えをするかの如く、ワタシを自走車の車内から連れ出した。


「17旅団の先遣隊が着いたと連絡があったので来てみれば、貴女がフラフラと車両に入って行くのが見えましてな。これはイカンと馳せ参じた次第ですよ」


 おじ様の様子を見るに、どうやら怒られる事は無さそうだ。


 と言うより、どうもこのおじ様は、ワタシの事を助けに来てくれたみたいですな。


「アレは許しておやんなさい。誰にだって武勇伝を語りたい欲求はある物ですし、あの二人にも悪気は全く無さそうに見えますしな」


 少し離れた所から見れば、真夜中の辻講談は未だに続いてる様で、軍曹ロベールさんなんかは、既に何時ぞやの山菜採りのおっちゃんの如く、見えないトカゲと斬り合いまで演じてる様だった。


「色々とあったとお聞きしておりますが、我々はその『色々』から完全に取り残されてしまった状況でしてな。正直、途方に暮れておったのですが、貴女方の到着で漸く戦場に戻れそうです。連中もそれが嬉しくて、つい集まってしまったのでしょう」


 うーん。言わんとする事は判るけど、問題なのはワタシ自身の耐性の無さだから、許すも許さないも無い話なんだけどねぇ。


「ポッと出の従騎士風情ですから、新聞に書き立てられる程に有名になるなど、夢にも思っておらなかったのです」


 言い訳っぽい事を口にすると、ワタシ同様に彼らを見ていたおじ様が、嫌味無く「フフッ」と笑った。


強者つわものならば、誰しもが通る道ですよ」


 うぬぅ。このおじ様、立ち居振る舞いが一々決まってる風なんですけど、何者なんでしょうね。


 ちなみに「おっちゃん」と「おっさん」と「おじ様」って呼び方の違いは、全くの私見だ。


 どう見たってこのヒト、「おっさん」って感じじゃ無いしねぇ。


「そう言えば、申し遅れておりました。私はリプロン駐留の討伐騎士団第二軍所属佐官で、4級討伐騎士のドバリーと申します」


 ワタシの疑問に気付いたのか、おじ様が自己紹介をされたので、ワタシも同様に返すと、おじ様はワタシを促して歩き出した。


 あまりにも自然な感じなんで、つい付いて歩き出しちゃったけど、こう言うのって普通はナンパだよな。


 まぁ幼女化しちゃったし、自意識過剰だろうけど。


 しかしこのおじ様、今ちょっとトンデモ無い事を言った気がする。


 もしこのおじ様の所属が本当なら、おっさんの部隊に変わってリプロンに駐留したのは、協会第二軍と言う事になるからだ。

 

 コレって本当にシャレにならない話ですよ。


 だって討伐士協会は、本当に本気で南部連合を「武力込み」で支援する積りって事だからね。


 討伐士協会には四つの軍団があって、それぞれ1から4までの番号がついてるんだけど、第二軍ってのは、協会の切り札って呼ばれる本当の軍集団だ。


 二万を超える人員と最新かつ潤沢な武装、徒歩者が居ないと言われる機動力に加えて、様々な専門部隊まで擁するトンデモ集団で、単独で国家と戦争が出来る

とまで言われてる。


 総裁直下の軍団である第一軍はエリート部隊だから政治的な側面が強くて、フェリクスおっさんの第17旅団(頭に1が付けば、それは第一軍所属だ)なんかの一部が魔物討伐部隊として有るだけのお飾り軍隊だし、第三と第四は分散して各地に散ってるから、軍団として集結する事は滅多に無い。


 それだけに一個の軍団として常に機能し続ける第二軍は、名実共に協会の最大戦力って感じなんですよ。


 この前のフェリクスおっさんの話が脳裏に浮かんだ。


『今回の件で、協会はリプロンへの大規模派兵に対する大義名分を握った』


 あれって、こう言う意味だったんだ。


 そりゃ大事おおごとだよなぁ。


 何かワタシって、物凄く絶妙なタイミングで、ド真ん中を引き当てちゃってないですかね。


 真剣に引き際を見極めないと、マジで協会に取り込まれちゃいそうで怖いわ。


 心の中で溜め息を吐いて、何気なく後ろを見ると、何時の間にかアリーをお姫様抱っこしたレティのヤツが、ちゃっかり付いて来てやがった。


 ぬう。ついさっきまで辻講談を聞きながらニコニコしてやがったクセに、相変わらず変わり身の早いヤツだ。








 屋敷の中に入り、おじ様が執務室に使ってるらしい部屋に入ると、ワタシは勧められるままに応接スペースっぽい所のソファーに座った。


 アリーは既にメイドの格好をした部隊の人達に渡してある。


 もう夜も遅いし、この部隊の人なら大丈夫だろうと思ったんだけど、レティのヤツもそれは同じ様で、あっさりと手放してた。


「さて、そろそろ本題に入りたいのですが、宜しいですかな?」


 執務机から幾つかの書類を持ってきたおじ様が、ローテーブルを隔てた前に座った。


 レティはワタシが座るソファーの後ろに立ったまま、動く積りは無さそうなので、まずはおじ様に肯いてみる。


 話の内容は想像つくけど、聞いてみない事には始まらないしね。


「我々はそもそも、第17旅団、と言うよりバルリエ卿の指揮下に入る様に命じられておりましてな。ランス支局とは事実上の没交渉なのです」


 話を切り出すと、おじ様は少し嫌な顔になった。


 協会の大スキャンダルに関係する話だもんね。嫌な顔にもなるよな。


 逃げた騎士卿ってのは、支局長代理だった(討伐騎士出身で無い限り、支局長には成れない)そうだし、上が屑なら下も屑と考えるのが普通だ。


 ワタシが「判ってますよー」って感じで肯くと、それを見て取ったおじ様が話を続ける。


「当然ながら、本部はランス支局を一旦は解散させる予定です。第12連隊もそうなるでしょうが、残すべき人物の人選は困難を極めるでしょうな」


 12連隊ってのは多分、ランス駐留の協会部隊の事だろうけど、やぱしかなり厳しい処置になるみたいだね。


 何人かは処刑されちゃったりもするのかな。


 まぁ処刑されそうなヤツは、もうとっくの昔に逃げてるんだろうけど。


「出来ますれば、貴女にはこのまま協会に入って頂き、ランス支局長と成るバルリエ卿の事実上の補佐官として、活躍して貰いたいと言うのが本部の意向です」


 出たぁっ!


 って、ここでいきなりそんな話ですか? ちょっと早すぎると思うんですけど。


「ワタシ如き若輩がその様な御立場など畏れ多い事です。まだまだ修行中の身で御座いますし、これから諸方を回って腕を磨く所存ですので、どうか御容赦をお願いしたく思います」


 取り敢えず、てきとーな事を言って「拒否」の姿勢を見せながらも、そっとおじ様の手元の書類に目を落とす。


 見ると「なんちゃら宣誓書」って書いてあるし、コレ、話の切り出しにしては本気すぎませんかね。


「ははは。いや、まぁそう言われるだろうと思ってはおりましたよ。しかし、バルリエ卿のお話には驚かれないのですな」


 ワタシの視線に気付いたおじ様が、「なんちゃら宣誓書」を書類の一番下に回しながら、こっちの目を見てきた。


 んん? おじ様、妙な所へジャブを打って来ますなぁ。ワタシがフェリクスおっさんと特別な関係だとでも思ってるのかね。


 ちょっと訝しげな目で見返しちゃうよな。


 それにおっさんがランス支局長になるって話なら、完全に予想圏内だ。


 ランスに異動って聞いた時から、多分そんな事だろうと思ってたし、あの焦燥したっぽい態度とか、例の「過分な褒賞」って話からも想像は付く。


「ワタシはそれ程バルリエ卿と親しいと言う訳でもありませんし、そもそも協会本部の方々のお決めになられた事に驚きも何も御座いませんよ」


 目を合わせながらも済ました顔で返事を返すと、おじ様は「しまった」と言う顔で頭を掻いた。


「いやいや、妙な意味でお聞きしたのでは無く、総裁殿下直下の第一軍幹部として、貴女に印章指輪を預けられたと聞いておったのですよ。誤解がありましたら申し訳ない」


 ワタシの目付きが伝わった様で、おじ様が弁明っぽい事を口にするけど、そんな風に言われちゃうと、こっちまで恥ずかしくなっちゃうよね。


 ちょっと考えれば、ワタシって今は12、3歳なんだし、妙な意味に取る方がヘンなんだよ。


「保護者的立場」とか、そんな感じだよな、普通なら。


 うにゅう。中身は16歳なんだから仕方が無いけど、自意識過剰な子供とでも思われちゃいましたかね。


「いえ、お気になさらず。ところで、ドバリー卿は憲兵佐官でいらっしゃるのですか?」


 テレ隠しに、第一の爆弾を投げ込んでみる。


 何となくなんだけど、このおじ様って、ある人とイメージがダブるんだよね。


 言えばウチ(ブロイ家)の執事長さんなんだけど、あの人って衛士畑出身で元軍監でもある人だから、このおじ様も似た様な仕事なんじゃないかなと、

ヤマを張ってみたワケですよ。


 更に今のセリフって二重の意味があるんだけど、さて、見事に気が付いてくれるかな。


「確かに、その様な立場ですな。と申しますか、そろそろ少し腹を割りましょう。今、貴女が言った『卿』の呼び方ですが、何故その様に呼ばれたか訊いても良いですか?」


「貴族の御出身と御見受けしましたので、そうお呼びした迄の事です。爵位はともかく、官位はお持ちなのでは?」


「ううむ。何と言うか、流石ですな。貴女の人物眼にはバルリエ卿も舌を巻いておった様ですが、御落胤と言う御出身はさぞかし苦労が多いんでしょうな」


 腹を割る、と言う言葉通り、即答したワタシに対して、少し砕けた口調になったおじ様が結構な正面攻撃でジャブを放って来た。


 ワタシが仕掛けた「卿」の呼び方には気が付いてくれた様だけど、どうやらこのおじ様には、ワタシの出自に思い当たる物が無いらしい。


 ま、さもありなんってトコだけど、言われる様な人物眼なんて、ワタシには無いよん。


 有るのは野生のカンだけだもんな。


「他の人生を知らないので判りませんけど、大人の間で生きねばならないのは、別に落胤の子供だけでは無いと思いますよ」


 そのカンが告げるまま、言葉の裏に「貴方だってそうでしょ?」と言う意味を込めて言うと、おじ様は少しキョトンとした顔をした後で破顔した。


「いやいや、脱帽ですよ。そこまで気が付かれてしまうとは! 貴女を年少と舐めた相手は、さぞかし酷い目に会うのでしょうなぁ」


 両手を上げたおじ様が、クックッと笑いながら続ける。


「言われる通り、ワタシは公国の直参男爵家の三男でしてね。幼少の頃に養子に出されたのですが、事実上独立させられた様な環境だったので、いやあ苦労しましたよ」 


 演技とも思えないおじ様の様子に、ワタシも何処のとは言えないが高位貴族家の直系筋である事を話すと、おじ様はそうだろうそうだろうと深く肯いてみせた。


 ふむう。しかし良く考えたら、ワタシってばこのおじ様と腹の探り合いをする様な立場じゃ無いんだよな。


「協会に来るんだぁ」って、何か強制でもされるのかと思ってたから用心深くしてたけど、それを初手で引っ込めて貰ったんだから、後はどうでもイイんだよね。


「ところで、討伐士協会の本部の指示ってどうなんですか? そこをまだ聞いてないんですけど」


 もうイイやと思って、口調を普通に戻すと、おじ様は何やら「我が意を得たり」って顔で肯いた。


「おっと、本題から逸れてしまいましたな。貴女にとっては『依頼』と言う形になりますが・・・」


 ワタシの口調の変化も織り込み済みだったのか、ややニヤけた感じのおじ様が、本当の『本題』を口にし始めた。


 それによると、協会本部は主に4つの事をこの部隊って言うか、おっさんに指示(まだおっさんは知らないけど)したらしい。


 一つ、おじ様が率いる特務派遣「大隊」の約200名は、第17旅団の指揮下に入る事。


 二つ、第17旅団の先遣部隊は、事実上、代官令嬢の護衛を主任務とする事。


 三つ、最高責任者はフェリクスおっさんで、次席が何故かワタシである事。


 最後に、デラージュ閣下が大規模スタンピード討伐に失敗した場合は、閣下とその周辺の人物も込みで護衛して、リプロンまで退く事。


 と、こんな感じだ。


 200名で大隊を名乗るって事は、討伐騎士、それもかなり歴戦の連中が10名近くは居るって事だ。


 本物の討伐騎士は一人で100人分の戦力換算をされるから、間違い無い(大隊は約千人で構成されるから)と思う。


 まぁでも、最後の件以外は大体思った通りの内容だったものの、ワタシが次席って言うのは納得出来ないよね。


「正直に言いますけど、ワタシが次席ってオカシくないですか? ワタシはタダの8級従騎士だし、協会の人間でも無いですよ」


 ワタシの身上は直球勝負だ。下らん腹の探り合いを捨てた以上、後は直球あるのみ!


「アレの件や先の紅蓮の翼の件から、協会上層部が出した判断ですので、私は何とも。ただ私見を申せば、勇者勲章ブレイブをお持ちの方はバルリエ卿と貴女だけですので、その一事を持っても、貴女は次席に相応しい方だと思いますよ。それに次席責任者ともなれば、かなりの独断が許されますからな」


 ワタシの様変わりにも、おじ様は全く変わらない様子で答えて見せた。


 うーむ、怖い人だ。と思いつつ、最後の言葉が気になる。


 独断ねぇ。ソレって、有る意味でとっても危険な事を指してる様な気がするんですけど、イイんですかね。


「成る程。それはつまり、独断&単独でデラージュ閣下をお救いに行くってテも有りなワケですね?」


「さて。私如き者からその辺りの是非は申せませんな。ただ、私見が許されるならば、咎められる事は無いだろうと申しておきます」


 意味ありげに微笑するおじ様を見て、思わずガッツポーズを決めそうになっちゃったよっ。


 にゅふふふ。こりゃぁ、とっとと依頼書にサインして、明日以降に期待って感じだね。


 やや諦めかけてたけど、どうやらハイドラちゃんに手が届きそうな気配ですよぉ。


本日もこの辺で終わりにさせて頂きます。

読んで頂いた方、有難う御座いました。


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