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討伐騎士マリーちゃん  作者: 緒丹治矩
人の襲撃
71/221

071話

昨日は色々ありまして投稿が出来ませんでした。

申し訳ありません。

基本的に月曜日から金曜日の週5回投稿するスタイルを崩したくは無いのですが、今回の様な突発的な事があった場合は、笑って許して頂けると嬉しいです。


「こちらで如何で御座いましょうか、お嬢様」


 簡単な軽食を遅くに取った後、お茶よりお酒の気分だったのでレティに言うと、ヤツは上物っぽい白ワインを出して来た。


 グラスに注がれたブツを口元に運ぶと、とってもイイ香り!


 こりゃ結構なブツかもねーって思いながら口に含むと、ほんのりとした甘さも上品な、とっても綺麗なお味が口中に広がった。


 ぶはぁ。何コレ? こんな所で飲む様なブツじゃないよっ。


 思わずグイッと行きそうになる所を、意志の力で何とか抑え込む。


 まだ安全地帯には程遠いってのに、リラックスし過ぎるのはまずいもんね。


 ワタシ達は未だ動く貴族執務室で移動中だ。


 壁に掛かる、凝った装飾で飾られた大きな時計を見れば、時刻は既に午後9時を大きく回ってる。


 随分近くなって来たとは言え、この分だとランスの城内に入れるのは11時過ぎになると思う。


 討伐士協会ご自慢の装甲自走車両なら、山道の裏街道だって結構なスピードで走れるし、ダレクの村からランスまで、半日もあれば着く筈だったんだけどなぁ。


 勿論、遅くなった理由は件の襲撃のせいだ。


 色々な後始末とかで、あの後更に結構な時間を食っちゃったんだよね。


「ワインのお供に、この様な物も御座います」


 何処から出したのか、レティがローテーブルの上に置いた小鉢を見ると、中は牡蠣のオイル漬けが入ってた。


「なーんか、妙にサービスが良くない?」


 早速小さなフォークで牡蠣に手を付けながら、レティを見ると、ヤツは気持ち悪い程の笑顔を返して来た。


「フォルダンとカルノー(魔法師のヤツね)を仕留められたのですから、本来であれば盛大に祝いたい所ですが、それはランスに着いてからと言う事で、今は前祝いと言う所で御座いますよ」


 なんだかなー。


 コイツってばそんなにあの二人に遺恨があったのかな。


 実際、あるじであるワタシがかたきを取ってやった形なんだから、普通なら喜ぶのも判るんだけどさ。


 コイツがそんな単純な事で喜ぶタマだとは、どうしても思えない。


 ちょっと変な気はしながらも牡蠣を口に入れると、口の中一杯に芳醇な味と上品な燻製の香りが広がって、思わずニマっとしちゃう。


 にゅうん。野趣溢るるって感じを想定してたのに、この上品なお味はなんでしょね。


 ワインが進んじゃいそうでヤバいですよ。


「お気に入り頂けた様で何よりです」


 むう。笑みを顔に貼り付けたレティがキモいです。


 どう考えても取っておきっぽいブツがホイホイ出て来るし、これって並みの機嫌の良さじゃないよな。


 コイツに一体何があったのか・・・。


 って、そ-か!


 良く考えたら、先の傭兵連中からの剥ぎ取りがあったじゃんかっ。


 連中の装備ってかなり良かったし、人数が人数だけに所持金品も相当な額に上った筈だ。


 そりゃレティも笑いが止まらないかぁ。


 二個目の牡蠣を口に入れながら、ちょっとダウナーな気持ちになって、ソファーに身体を預ける。


 現実に死体を燃やす時って、燃え難い物は剥ぎ取ってから燃やすし、そもそも、例えソレが軍隊であろうとも、法を無視した「狼藉者」の所持品は討伐者のモノなので、レティは何一つ悪い事はしてないんだけど、ちょっと気が滅入る話だよなぁ。


 大体さぁ、こっちは後で大量(マジで500近かった)の死体を野焼きスペシャル連発で焼かされちゃってるんだよ?


 人殺しの対人傭兵共なんて、一人残らず死んで良しとは思うものの、気分が落ち気味になっちゃうのはしょうが無いよね。


「ふう。やっと話が終わったぜ。マリー、お前ってヤツは本当に大変な事をやってくれやがって!」


 絶品の牡蠣をつまみに上物のワインをちびちびりながら考え込んでると、フェリクスおっさんが運転席側の扉を開けて入って来た。


「べっつに怒られる様な事はしてないけどね」


 おっさんの視線を無視しながらも一応返事はして、ワタシは更にワインを飲んだ。


 ランスの街が近くなってきたから通信魔法が使えるそうで、おっさんは運転室の魔導具でずっとランスの誰かと話してたんだよね。


「ったく、お前ってヤツは外見は麗しいのに、本当に中身は可愛くないヤツだ! お前がこの数日間で、一体どれ位協会に恩を売ったと思ってるんだ? お陰で協会本部は右往左往なんだぞっ」


「ふーん。別に恩とか売った積りは無いし、勝手に右往左往してればイイじゃん」


「お前なぁ」


 おっさんが額に手を当てて天を仰いだ。


 まあ、おっさんに言われる迄も無く、確かにアレの町からこっち、ワタシってば協会に恩を売り捲くってる感じだよね。


 先の戦闘の最後に捕まえたあの小太りのおっさんは、なんと三馬鹿公爵家の一つ、ロダン家の直系次男だったそうだしさ。


 この件一つ取っても、討伐士協会は西聖王国公爵家が傭兵部隊を動かして協会の部隊を襲った動かぬ証拠を握ったってワケで、そりゃ本部の人達が政治事に大慌てになるのは当然だ。


「だって小太りおっさんを捕まえたのもジュリアンさん達で、ワタシじゃないしぃ」


 レティにワインのお代わりを注いで貰いながら、ワタシは更にソファーに深々と座り直した。


「ああ、ああ、そうだとも! ジュリアンは近日中に討伐騎士に昇進が決まったぞっ。実力が付いて来てたし、後は実績だけだったからなぁっ」


 ワタシの言葉に、おっさんは片手を放り上げる様な態度で応じて「ドカッ」と執務机の椅子に座った。


 むう。このおっさんは一体何に憤ってんのかな。


 どう考えても、イイ事尽くめだと思うんだけどねぇ。


「へえ、良かった! 軍曹さんとかは?」


 執務机に頬杖をついて、何か嫌ぁな感じでこっちを睨むおっさんを軽く無視して、他の人達の事も訊いてみる。


「はっ。皆、棚からボタ餅状態だから、ロベールや他の連中も似た様なもんだっ」


 ロベールって言うのは軍曹さんの名前だ。


 皆がちゃんと今回の報酬を貰えるみたいで良かった!


「良かった事尽くめじゃない。それで何を怒ってるワケ?」


 両手を広げて良かったアピールをすると、おっさんが憮然とした表情で立ち上がった。


「問題はお前の事だ! 協会本部じゃ、お前にどう報いるかって話で揉めてやがるんだよっ」


 はっ?


 協会がワタシの事をどうするかって言われても、こっちが考える事じゃないよねぇ。


「そんな事を言われても、こっちじゃどうも出来ないよ。協会本部が決める事でしょ?」


 おっさんはL字形のソファーの、ワタシ達が座っていない方の一辺に座ると、何時の間にか持ってた自前のワインボトルを一口らっぱ飲みした。


 うわぁ。幾ら何でもワインのらっぱ飲みは無いわー。


 それじゃそこらの道端に転がってる飲んだくれ親爺と同じじゃん。


 流石にレティもそう思ったのか、立ち上がっておっさんに真新しいグラスを渡すと、おっさんのボトルを奪って、そのグラスに注いでやった。


「ああ、何か悪いな。俺はどうもこう、育ちが悪いモンでな」


 おっさんがレティ相手に頭を掻いて詫び言を口にするけど、良く見れば、美人(レティだって見栄えはイイからね)の酌でワインを楽しむ騎士爵サマって感じで、それなりに絵になってる感じだ。


 レティって、こう言うカッコ付けっぽい所はバッチリと決めて来るヤツだからなぁ。


 でもおっさんって、このテの女に免疫が薄いのかね。


 ワタシ相手の時と違って、随分と当たりが違う様に思うんですけど!


「おおっと、話の途中だったよな」


 ちょっとニヤけ顔のおっさんが超ウザいけど、まあ仕方が無いんで、ワタシは少し上体を起こして話を聞く姿勢を作った。


「ぶっちゃけて言うとな、お前は今、真剣にヤバい状況だ。考えても見ろ、大量のギガリッパーを単独で仕留めた単独一等功の数日後には、紅蓮の翼の二枚看板をこれまた単独で討っちまったんだぞ? バカ共が目の色変えてお前を追ってもおかしくねえ」


 妙に機嫌が良くなったおっさんが、それでもニヤけ顔を直してからこっちに話を振って来た。


 真横に座ってお酌をするレティに何かテレてるっぽいけど、言ってる事は意外にまともだ。


 力で有名に成れば、力で挑戦されるのは当たり前だもんな。


 これから色々と妙なヤツらに挑戦されたり、着け回されたりするだろうなって事は、想像に難くない。


 でも、ワタシ的に問題なのはそんな事じゃ無いんだよなぁ。


 大問題なのは、傭兵部隊の名前の方なんだよ。


 だって「紅蓮の翼」ですよ?


 どう考えたって、学院病の固まりみたいな名前だと思うんだけど、世間の反応ってどうなんでしょね。


 ワタシなんかが聞いた時は、あまりの素晴しいセンスにビックリして笑いも出なかったよ。


 こんな恥ずかしい名前でも、西聖王国では著名な公認独立騎士団だったそうだし、もしかして、世間では「カッコイイ名前」って評価なのかなぁ。


 だとしたら、結構暗澹たる気持ちになっちゃうんですけど。


「うーん。言ってる事は判るけど、その話と協会の話がどう繋がるワケ?」


 まぁ、名前のセンスとか言ってる雰囲気じゃ無いし、こっちの返事を待ってる風なおっさんに答えを返して様子見すると、おっさんは空になっちゃったグラスにワインを注いで貰いながらも嘆息した。


「お前、やっぱり何も判って無いみてえだな」


「んん? 変に有名になってるみたいだし、これからワタシの首を狙って来るバカが一杯出て来るカモって話じゃないの?」


「そんなどうでもイイ話はしてねえだろうよ。お前を狙うのは、ウチ(討伐士協会)と魔法士協会を筆頭に、王侯貴族共って事だ」


 へ?


 ちょっと呆けた感じになっておっさんを見ると、おっさんは「やっぱりな」って顔で、こっちに顔を寄せて来た。


「大体な、フォルダンとカルノーって言やぁ、西聖王国でも指折りの使い手だぞ? あいつら二人を相手にして完勝しちまった上に、戦術級魔法で奴等の部隊の半数を消し炭にしちまったなんてくりゃ、お前の名前は一気に旧聖王国全域に轟いちまう。そしてそうなりゃ間違い無く、二つの協会から始まって、王族だの大貴族だのの殆どを巻き込んだお前の争奪合戦になるって事だ」


 こっちを睨む様にして、一気に捲くし立てたおっさんの長広舌に、一瞬思考が停止した。


 えっと、何ソレ?


 何時の間にそんな大それた話になってるんでしょうか。


「で、でもさ、アレでの事はさておき、傭兵団との戦闘の件は協会の機密扱いになるんじゃない?」


 何とか適当な返事が口から出たのを幸いに、頭を働かせようとするんだけど、なんか全然ダメだ。


 にゅう、不味い。本当に、全く、予想の範囲外の話だよ、コレ。


 何か冷や汗がツツーっと背中を伝い落ちてますよ。


「ああ。なんたって、グランツのじいさま直々の命令が出てるからな。協会内で表立ってそれに逆らうヤツは居ねえ。だが蛇の道は蛇だ。フォルダンとカルノー程の有名人をったヤツが誰かなんて事は、あっと言う間に知れ渡るぞ」


 げげぇ、マジかよ。あの二人ってそんなに凄い有名人だったのか!?


 思わずレティの方を見ると、ヤツはニコニコしながらうんうんと肯いてやがった。


 ぐはぁっ! こ、これはマズいですよ。


 こいつが上機嫌な理由って、この事だったのかっ。


 ヤバい。未来とか将来とかの具合が、音を立てて悪くなって行く様な気がするんですけどっ!


本日もこの辺で終わらせて頂きます。

読んで頂いた方、有難う御座いました。


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