070話
前話の69話にちょっと変な所があったので、少し直しました。
話の筋に変更などは無いので、再読される必要は無いと思いますが、申し訳ありませんでした。
「ひぃ様!」
フォルダン氏に黙祷を捧げながらも思考加速魔法の速度を落として、風系と水系魔法のミックスで広場の周囲を消化してると、のこのことレティがやって来た。
「レティッ! アンタ何やってんのよっ!!」
完璧に消火を終わらせてから、ワタシは目の前に跪いたレティを怒る。
「も、申し訳御座いません! 恥ずかしながら、わたくしにはあれ程の魔法の只中で戦える力は無く、己の及ばなさを恥じるのみです」
ガックリとうな垂れるレティにイラッと来る。
だーれがそんな下らない事で怒ってるかっつーのっ。
ワタシがアンタにそんな事を求めるてワケが無いって、判ってて言ってやがるのかね。
「そっちじゃなくてっ! コイツよコイツッ」
ストレージもどきからさっきの魔法師の首を引っ張り出して、レティの眼前に突きつけてやる。
コイツって、髪の毛掴んだ時に判ったんだけど、件の魔法師で間違い無いと思うんだよね。
ほぼ黄色級の魔法力を持ってるし、こんなのそうそう他には居ない筈だ。
「ガッチリ瞬殺だったよ、こんなヤツッ。何でこんなのにビビッてたのよ!」
何かレティのヤツってば驚愕の表情になってるし、やぱしコイツで当たりだったか。
ほーんと、やってらんないよねっ。
「た、確かに、この男で間違いはありませんが・・・本当に、この男を仕留められたとは・・・」
「なーに言ってんのよっ。アンタが散々脅したせいで、本命の騎士卿殺しのワザを使ってるヒマが無かったんだからね!」
たったの3発しか作れなかったけど、今回カマそうと思ってた、思考加速魔法の最中に使う影斬誘導弾は出番が無かった。
フォルダン氏との戦闘は魔法師ヤロウに気を取られてる内に始まっちゃったし、あんな戦いの中じゃそんなあやふや物を使ってる余裕なんて無い。
レティの言葉を遮って言い返し、むむむぅっと睨むと、ヤツは真顔になって顔を上げた。
「言わせて頂きますが、この男は討伐魔法士として金章3位に至った男であり、その上、あの魔法士協会からも絶縁寸前と言われる程の札付きで、他国ではかなりの賞金首になっている様な強者なのですよっ」
「はぁ、何ソレ? この場を言い逃れようって、適当なコトを言ってるんじゃ無いんでしょうねぇ?」
妙に真面目な顔でこっちを見上げるレティの態度に、ちょっとウンザリしながらも問い質す。
「紛うかた無き真実でございます。まさかこの男を瞬殺なされるとは、このレティ、ひぃ様の力量を完全に見誤っておりました」
ぬうーん。なんかレティのヤツってば、変に神妙な顔付きだし、この場はしょうがないから折れておくかなぁ。
この場の処理とか残敵掃討とか、まだまだやる事は一杯あるし。
溜め息をつきながら、ストレージもどきを開けて男の首を仕舞うと、ワタシはやってられないって感じに両手を広げた。
「とにかくひぃ様が強すぎるのですっ! あのフォルダンを終始圧倒した先の戦いは本当に圧巻で御座いました!! まさか大気割りを牽制ワザとして使われるなんてっ!」
「だーかーらー! 大気割りとか言う人外ワザなんて使えないって言ってんでしょっ。それに圧倒なんかしてなかったからねっ」
折角和解のサインを出してやったのに、跪いたままでワタシを褒め上げるレティがウザいです。
「何を仰いますかっ。ただ見ている事しか出来ませんでしたが、まさしくあれは圧倒的な強者の戦いで御座いました!」
とにかく立てって感じで手を振ったら、立ち上がりながらも、まだ変に褒め続けるレティがウザ過ぎですよっ。
「あのフォルダンってヤツは本当に強かったの! 終始こっちが先手を取れたから割とイイ感じで戦えたけど、後手を踏んでたら難しかったよっ」
ガルルルゥって感じに、噛み付かんばかりの態度で言い切ってやると、流石のレティも驚いた様に黙った。
ホント、褒め過ぎなんだよ。
確かにそうやって褒められれば嬉しいけど、だからって、あのフォルダンってヤツがチョロいみたいな物言いは辞めて欲しいと思う。
大体さぁ、先制の範囲魔法で灼熱地獄と化した中での戦いじゃなかったら、どうなってたか判らないんだよね。
こっちは「自分で起こした人体発火を自動でレジストしちゃう」様な対魔法無敵女だから、あんな中でも普通に戦えたけど、相手は違うもんな。
灼熱地獄の魔法を無効化するか、対抗するかした上で戦わなきゃいけないんだから、結果論で言えば、初めからこっちに有利な状況を作っちゃった事になるんだし。
ある意味で、我ながらド汚い戦い方だったと思うよ、ホントに。
「はぁ・・・。確かにあの戦いは、ひぃ様得意のフィールドに相手を引きずり込んだ形でしたから、ひぃ様が御自分を卑下なされるのも判りますが」
諦めた様な顔で膝の土埃を払うレティが、何か遠くの方を見ながら言った。
何だよ。やっぱワタシの言いたい事をちゃんと判ってるんじゃない。
「バッチリと判ってるんだったら、もうソレでいいでしょ?」
「ええ、ええ。判っておりますとも。しかしひぃ様、わたくしは判っても、他の方々は如何で御座いましょうかねぇ」
んん? 他の方々?
ヤベッ。気が付かなかったよ。
急にニヤついた顔になったレティのヤツを無視して、探知魔法もどきに映った影の方を見ると、200ヤード(約183m)近く向こう、焼け跡と化した広場の向こうから、誰かが走って来てるのが判った。
その影は、広場に入ってくればもう丸判りで、さっき別れたジュリアンさんだった。
「コォーーニィースゥーどぉーのぉー!」
軽く手を振りながら走り寄るジュリアンさんは、何か結構身奇麗なままで、とても大規模戦闘をこなして此処まで来たとは思えない感じだ。
って、やっぱ思考加速を続けたままじゃツラいか。
取り敢えず思考加速の魔法を解いて、片手に持ってた白剣も鞘に収める。
「ジュリアンさんっ、こんな所迄来ちゃって、戦況の方はどうなの!?」
色々と感覚が普通に戻った所で、目の前まで走って来たジュリアンさんに即座に尋ねると、ジュリアンさんはちょっと息を整えてから顔を上げた。
「はっ。コーニス殿と侍女殿に敵部隊を混乱させて頂いたお陰で、本体の方は皆無事のまま、敵を殲滅する事が出来ましたっ」
「殲滅って、本当?」
「ハイ。敵の勢いが衰えた所で、閣下が自らお出ましになって敵兵を殲滅されました」
うわぁ。
フェリクスおっさんってば、我慢出来なくなって暴れちゃったのか。
ちょっと自慢げな感じのジュリアンさんが可笑しい。
ま、自分達の部隊の大将が敵を殲滅してくれたんだから、嬉しくなるのも判るけどさ。
「でもさぁ、司令官閣下が直々に打って出るって、実際どうなのよ?」
バラバラと続いて焼け跡広場に入って来た部隊の人達を見ながら、少しだけ釘を刺させて貰うと、それはジュリアンさんも判っていた様で苦笑いが返って来た。
「ははは。いや、笑って良い事ではありませんが、現実に閣下自らの御活躍で誰一人として死なずに済んだのですから、我々も素直に感謝する事にしております」
成る程ね。もしジュリアンさん達が「大将が直接戦闘に出る事」を恥と思わない様なら、怒っておこうと思ったけど、ちゃんと判ってるんだったら、こっちはもう言う事は無いよ。
おっさんも一応は頃合を見計らって出たんだろうし、勢いが無くなった状況であのヒトが暴れたら、人間相手の傭兵部隊なんて一溜まりも無かっただろうしなぁ。
取り敢えずはおっさんのストレス解消になったんじゃないかと、こっちも前向きに考えておくかね。
「お嬢様、わたくしは残敵の掃討と死体集めに行って参りますので、アレはお任せ致します。ではっ」
ジュリアンさんの言葉に肯いてると、隙を見計らってたのか、レティが速攻で仁義を切って、結構なスピードで森の中に消えて行った。
むうっ。レティのヤツ、逃げやがったかっ。
「コーニス殿、アレとは何の事でしょうか?」
ちょっとムッとしたけど、考えて見れば適材適所かと思い直し、ジュリアンさんへの返答も兼ねて30ヤード(約27m)位向こうの木々の間に停まってる自走車を見た。
コレってさ、ずっと気になってたんだよね。
ジュリアンさん達に気付かなかったのも、そっちに気が行ってたからだし、レティと話し続けたのも、向こうの出方を待ってたからだ。
だってこの自走車、探知魔法もどきでは中に人が居る反応があるんですよ。
たった一名だけど、普通ならこの傭兵部隊の大将か何かだって考えるのが自然だと思う。
大体この自走車、灼熱地獄の影響で表面は焼け爛れているものの、モノ自体は結構なシロモノだ。
おそらく貴族、それも結構な貴族サマの持ち物で間違いはないだろう。
魔法師のヤツを簡単にヤれたのは、実はアイツって、灼熱地獄からこの自走車を護る事に集中してたからなんじゃないのかね。
「あの自走車の事でしたか。確かにかなり怪しい感じですが」
ワタシは更にこっちにやって来た2人とジュリアンさんに合図をして、距離を保って様子を見るように言うと、ゆっくりとその自走車に近づいて行った。
この中に居るヤツは、結構な使い手の可能性が高い。
おっさんに限らず、戦闘部隊の大将ってのは大抵そう言うモンだ。
英雄グランツもそうだけど、高位貴族の中には、偶にだけど凄まじい使い手って本当に居るしね。
鞘から白剣を抜いて魔法力をくれてやる。
最低限度の1.5倍程度で、思考加速魔法も再励起した。
影斬魔法をカマして、刃が6フィート(約182cm)を超える長さになった白剣を上段に構えると、気合を入れ直す為に地面を踏み鳴らす。
なんかドカンドカンと凄い音がした気がするけど、気にしないっ。
良し! フォルダン氏を上回るかも知れん大将とやら、真っ向勝負だ!!
ジュリアンさん達が固唾を呑んで見守る中、自走車に約7フィート(約213cm)まで近づいたワタシは、ゆっくりと大声を上げた。
「出ぇてぇ来ぉなぁいぃなぁらぁ、くぅるぅまぁごぉとぉ斬ぃりぃ捨ぅてぇるぅぞぉぉぉ」
ああ。なんかカッコ付かないけど、思考加速魔法使ってるからしょうがないよねっ。
「まあぁまぁ、まぁ、待ぁったぁぁぁ! いぃのぉちぃだぁけぇはぁおぉたぁすぅけぇおぉぉぉっ!」
ワタシが宣戦布告すると、ゆっくりと開いた扉から、小太りのおっさんが転がり落ちて来た。
ハレ?
えっと、マジですか?
小太りおっさんはどうみても素人で、戦闘どころか運動だってまともに出来そうな感じじゃ無い。
「はぁぁぁぁ」
盛大な溜め息をついて、ワタシは即座に思考加速魔法を解除した。
何かやってらんないって言うか、ドッとお疲れぇーって感じなんですけど。
影斬魔法も解いて、白剣を鞘に仕舞うと、ジュリアンさん達に合図を出して来て貰う。
ブルブルと震える小太りおっさんが、ジュリアンさん達に連れて行かれるのを見ながら、更に溜め息。
どうしてワタシの人生って、こう間抜けな感じのオチが付く事が多いのかなぁ。
本日もこの辺で終わりにさせて頂きます。
読んで頂いた方、ありがとう御座いました。




