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討伐騎士マリーちゃん  作者: 緒丹治矩
人の襲撃
67/221

067話


 お腹が一杯になって幸せな気分になったワタシ達は、小休止の後で再び出発した。


 食事の間も小休止の間も、変わった事は何一つ無かったので、指揮車内の人間はダラケ気味だ。


「何かピクニックにでも来たみてえだな。連中は一体何してやがるんだ?」


 こっちに視線を向けて来たおっさんが、ふあーっとデカい欠伸をしながら、執務机に頬杖を付いた。


 まーねえ。こんな感じの雰囲気だと、このまま何もなさそうに感じちゃうよな。


 指揮車内は超平和な空気が流れてるし、部隊全体も昼食と小休止でちょっと緊張が緩んだ感じだったしね。


 緩んだ雰囲気を感じ取ったのか、アリーは隣のスペースで寝ちゃってる位だ。


 昼寝をする様な歳じゃないけど、やっぱ緊張が続いてたせいか、食後で睡魔に逆らえなくなった感じで、おっさんに許可を貰ったんだよね。


 でもね。対人って事なら、相手に油断させる事は基本中の基本なんだよ。


「本気で近いと思うよ。問題なのは、連中がどうやってこの部隊を一網打尽にする計画を練ってるかって事なんだけどさ」


 おっさんに答えて、ワタシはよっこらせとソファーから立ち上がって考える。


 例え地下に爆発物を埋めてても、直上では指揮車の対魔法結界があるから魔法による発火は困難だ。


 それに車列の間隔や配置も色々変えながら走ってるんで、せいぜいが直前の道をフッ飛ばす位しか出来ない筈だし、それだと一網打尽には程遠い。


 街道脇を吹っ飛ばして木々を倒す? 斜面から大岩でも転がす?


 うーん。何かどう考えても決め手に欠けるんだよな。


 大体、アリーの奪取だって連中の頭の中にはある筈だし、証拠品の奪取もあるから、一気に殺しに来る様な手は使って来ないと思うんですよ。


 にゅうん、判らん。一体全体、どんな手でこの部隊に襲撃をかける積りなのかなぁ。


 そんな感じで堂々巡りっぽく考えを巡らせてると、前にも聞いた警告音が室内に鳴り響いた。


 おっ、これって確か、運転席からの臨時報告だったよな。


「閣下、約500ヤード(約457m)先行している自走二輪が、街道上でオークの群れ約20を発見しました。こちらに向かって来るとの事です」


 何があったのかと、ちょっと緊張して耳を澄ましてると、執務机から割とどうでも良い報告が部屋内に響いて、ドッと疲れる。


 はぁ。オークが20ねぇ。ぶっちゃけどうでもイイ話だよね。


 思わず欠伸が出そうになるのを堪えて、またソファーに座ろうかとそっちに動き出した直後、ワタシの中で何かの違和感が涌いた。


 あれ? コレって・・・。


「そうか。二輪はこっちに戻せ。この先の防柵で迎え撃」


 疲れた感じのおっさんが、詰まらなそうに執務机に話し掛けるの遮って、ワタシはダッシュで執務机に飛び付いた。


「ちょっと待った! 二輪以外の全車両、緊急停止!!」


 おっさんをガン無視して大声で叫ぶ。


 これだよ! そもそも最初に爆発物を使えば、人間の襲撃だって丸判りだから、即座に対応されちゃって、パニックとかも誘えないじゃんか。


 先に魔物に襲撃させて、こっちが対魔物に切り替えて外に出た所を襲えば、向こうは楽勝になるっ。


 キキィッって言う妙な音と共に全部の車両が停止すると、そのままの姿勢で更なる指示を出す。


「バックって出来るよね? 出来る限り戻って! 自走二輪には可能な限り急いで合流する様に言ってっ」


 大体、幾ら山岳森林地帯って言っても、余程切羽詰ってなきゃ、昼からオークが群れで街道を突っ走る事なんて無い。


 冷静に考えれば、こんなの仕掛け以外の何物でも無いじゃんかっ。


「一体どうしたってんだ!?」


 自分の指示を打ち消されたせいか、ムッとしたおっさんが怒鳴って来る。


「対魔物ボケ? 遂に来たって事だよ。次の防柵は多分ヤバいし、オークはトレインだと思うよ」


 背が低いせいで、執務机の上に乗り掛かる感じだったワタシが机の上から降りると、おっさんが代わりに机に覆いかぶさった。


 あーあ。幾ら部隊がワタシの指示を優先しちゃったからって、そこ迄しなくても指揮権を要求したりしないって。


「本気で言ってるのかっ! 部隊はお前のおもちゃじゃねえんだぞっ」


 執務机に覆い被さったおっさんが、更に怒声を上げる。


 うーん。そりゃ、突然横から部隊に命令すれば、指揮官としては激怒するわな。


 でも怒ってる場合じゃないんだよ。


 額に青筋を浮かべて怒るおっさんに、ワタシは務めて冷静さを装いながらも、玄人には決定的な事実を言ってやった。


「オークの群れが、昼日中から街道を走ると思う? 冷静に考えれば判る話じゃない」


「あ? ああっ」


 まあしかし、流石は討伐騎士卿っ。


 ワタシの言葉に即座におかしいと気付いたのか、怒声も高らかだったおっさんが顔色を変えて黙り、机から崩れ落ちる様に床に座り込んだ。


「ああ、くっそぉ! こっちが対魔物部隊だってのを逆手に取るってかよっ。フザケやがって!」


 一瞬の間をおいて立ち上がったおっさんが、両手を打ち鳴らして再びの怒声を上げた。


 うんうん。今度はこっちじゃなくて相手に怒ってるワケだから、放っておきたいのも山々なんだけど、さすがに傭兵部隊相手にこのままじゃヤバいわな。


「怒ってたら勝てる戦も勝てないよ? まずは自走二輪が無事に戻って来るかどうかが鍵だね」


 ワタシに言われちゃって恥ずかしかったのか、真っ赤な顔でフーフーと息を吐いて、怒りを沈めようとするおっさんが笑える。


 イカンなぁ。脳筋者ならこう言う時こそ深呼吸ですよ!


 後で教えてあげようかな。








 さっき通り過ぎたちょっとした広さのある場所まで、各車両を100ヤード(約91m)位逆走させて止めさせると、ほぼ同時に自走二輪も戻って来た。


 おお良かったっ。ジュリアンさん達は無事みたい。


「オークの数は20近く。街道を真っ直ぐこちらに向かって来ていますっ」


 一旦指揮車の外に出たワタシ達に、二輪の後席から降りたジュリアンさんが走って来て報告を上げた。


「そうか、ご苦労だった。オークはこの辺で迎え撃つが、本命の相手は人間の部隊だ。お前達も装甲車の中に入って銃で戦え」


「ああ、待って待って。閣下、ちょっと提案があるんだけど?」


 おっさんがジュリアンさんに命令を出してる所悪いと思ったけど、ちょっと横入りさせて貰いますよ。


「ん、どうした?」


「度々、御免ね。で、ジュリアンさんて、この部隊でトップクラスに足が速いんだよね?」


 さっきの事があるからか、ちょっと微妙な顔でこっちを見たおっさんにまず仁義を切って、ジュリアンさんに昨日聞いた話を問い質してみる。


「はっ? ハイ。確かにそうですが」


 うんうん。だったらワタシやレティの足にだって、付いて来れる可能性が高いよね。


 トカゲ共とやり合う技量や気合も持ってるし、打って付けだわ。


「閣下。取り合えず、現状把握の為に威力偵察に出てみようかと思うんだけど、ジュリアンさんを借りていい?」


「あ、ああ。構わんが、ジュリアンをどうする積りだ? 確かに俺も今、お前にそれを頼もうかと思ってた所だから、威力偵察の件はイイんだが」


 ワタシの提案を聞いたおっさんが、また更に微妙な顔をしてジュリアンさんを見た。


 まーねぇ。可愛い部下を盾代わりに使われたりするワケには行かないから、そこは押さえなきゃいけないポイントだよな。


「ある程度全体を掴んだら、連絡にジュリアンさんを帰すよ。こっちはそのまま遊撃で削り捲くって、出来れば大将首を狙ってく積り」


 軍隊内での提案だの報告だのってヤツに直球もクソも無いと思って、思ってる所を遠慮無しに言うと、おっさんが片手で顔を覆った。


「一応な、お前だって現状は俺の部下みたいなモンだから、俺には保護義務があるんだぞ? そんな特攻染みた事にウンと言える訳がねえだろ」


「対魔物戦なら、味方の本隊が立て篭もる場合、最強クラスが遊撃で出て掻き回すのはセオリーじゃん」


 おっさんはそう言うけど、そもそもワタシ達はこの部隊での連携から外れた存在だから、ここに居てもアシストしか出来ないし、意味が薄いんだよね。


 言う事を言って、後はジーっと顔を見てると、流石に根負けしたのか、おっさんが両手を上げた。


「あーったくもう、判った! ジュリアン、こいつに付いて行くのはホネかも知れんがイイ経験だ。しっかり役目を果たしてくれ」


「はっ、拝命いたしました!」


 ジュリアンさんがおっさんに敬礼すると、二輪を何処かに仕舞い込んだらしい軍曹さんが、木箱を抱えてやって来た。


「お前もそれを使え。10連発のレバー式で、強装弾も撃てる最新鋭のブツだ。使い方は判るな?」


 おっさんの言葉に、何かと思って覗き込むと、そこには真新しい銃が3丁入ってた。


「うわぁ、何コレッ。使ってイイの!?」


 木製の銃床は他の銃と変わらないけど、トリガーガードがとっても大きくて、ソレを動かす事で排莢と次弾装填が同時に出来る感じだ。


 銃身が二本ある様に見えるけど、10連発って言うし、多分下のヤツが弾倉なんだと思う。


「お前は銃の腕もピカ一らしいじゃねえか。さぞかし活躍してくれると思って、とっておきを用意しといたんだよ」


 思わず手に取って、銃各部の作動を確かめてると、軍曹さんが更に弾丸カートリッジの箱を渡して来た。


「これって100発入り? 本隊の弾丸って大丈夫なんでしょね?」


「二千はあるから気にするな。勿論そいつはこの戦で使い切って貰って構わん。後、空薬莢は放置で構わんが、実包その物は出来る限り捨てないでくれると助かる」


 箱から弾丸カートリッジをバラバラと出してインベントリに突っ込みながら、ワタシはおっさんの注意に肯く。


 ジュリアンさんの仕草から、弾倉には銃の横の穴から装填する様なので、真似して弾丸カートリッジを10発装填した。


 ふと横を見れば、何時の間にか戦支度のレティも、同じ様に銃を受け取って弾を込めてる。


「おい、判ってるな? こっちは救援無しの立て篭もりなんだ。お前が死んだらシャレにならんから、くれぐれも無理だけはするなよ?」


 むう。おっさんのクセに、アレのしぶちょーの様なツンデレ物言いが笑えるんですけど。


「OKOK大丈夫。こっちだって命大事がモットーだから、ヤバくなったら一旦引き上げるよ」


 にゅっふふふ。人間相手でちょっと気が滅入ると思ってたけど、こんなの使わせてくれるんだったら話は別だよねっ。


 道の向こう側、木々の間にはもう半透明のクーちゃんがスタンバイしてくれてるし、おっさんには悪いけど、ガチで大将首まで狙っちゃうよっ。


本日もこの辺で終わりにさせて頂きます。

読んで頂いた方、有難う御座いました。


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