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討伐騎士マリーちゃん  作者: 緒丹治矩
ランスへの道
66/221

066話

連日で遅くなってしまい、申し訳ありません。


「お姉さま、私、後3手でアガりますよ?」


「ええっ、早いよぉ。アリーってこう言うの強いんだねぇ」


 動く貴族執務室こと指揮車の中で、ワタシとアリーは暇潰しにカードゲームをやってた。


 二組のカードを使って、フリーセル詰み競争って感じですよ。


 交互に一手ずつ進めて、早くアガった方が勝ちってルール。


 大抵のカードゲームは、二人でやると相手にムカッとしたりするけど、こう言うのだと、そうはならないからイイよねっ。


 ちなみに、おっさんは出発直後から、誰も居ない隣のスペースで熟睡中だ。


 出発ギリギリまで準備にコキ使っちゃったし、何か起こる迄は寝かせておく事にしてる。


「そう言えば、マリーとアリーって、音が似てるし、何か姉妹みたいだよね」


 ゲームの負けを認めて、新たにカードを混ぜ始めながら何気なく言うと、アリーが何か嬉しそうにぴょこんと顔を上げた。


「本当ですねっ。私、一人娘なのでお姉さまに憧れてたんです!」


 おおうっ。こんな素晴しい反応、期待して無かったよー。


 やや上目遣いでこっちを見つめるアリーの笑顔が、とっても可愛いっ。


「じゃあ今日から、アリーはワタシの妹ねっ」


 嬉しさのあまり、ちょっと調子に乗った事を言うと、場の雰囲気にノってくれたのか、アリーが更に嬉しそうな顔をしてくれた。


「ハイッ、お姉さま! 今日から宜しくお願いしますねっ」


 ぶふぉっ。マジですか!


 こんなお人形さんみたいなに、そんな事を言って貰えるなんて、今日は何て良い日なんだっ。


 ヤバい! 何か途轍もなくテンションが上がっちゃいそうですよっ。


 イカンイカン。こう言う時は、気を落ち着けて深呼吸だっ。


「お姉さまっ、何かあったのですか!?」


 いきなり立ち上がったワタシに、心配そうな顔になったアリーが声を上げた。


 うわっ、思わず何時ものポーズで深呼吸しちゃったよ! バカじゃないのか、ワタシ!!


「え、ああ、うん。ちょっと魔物の群れがいたんだよ。もう通り過ぎちゃったから大丈夫」


 思わず口から出まかせで誤魔化す。


 気が付けば腰に手まで当ててるし、全く脳筋ってのはやまいだよね、ホント。


「何も無かったのなら良かったですけど・・・」


「うんうん。取り敢えずは本当に何も無いから、心配しなくても大丈夫だよ」


 腰に当てた手の事を誤魔化しながら、ちょっと気分が落ち込んだ感じのアリーを宥めると、ワタシは気を落ち着けて窓(の様な魔導具)の外を見た。


 いやー、何か適当に誤魔化しちゃったけど、襲撃を警戒してるのも事実なんだよな。


 ダレクの村を出てから既に4時間近くが経過して、そろそろランスの街との中間地点に差し掛かりそうだし、近いとは思うんだよね。


「お嬢様、バルリエ卿が起きられた様です」


 部屋の隅っこで待機してたレティから声が掛かって、ワタシがそっちに振り向くと、ちょうど隣のスペースの扉が開いた所だった。


「おはよう。良く眠れたみたいじゃない?」


 ぬぼーって感じで、頭を掻きながら入って来たフェリクスおっさんに声を掛けると、おっさんはまだボーッとした感じの目でこっちを見た。


「御落胤サマは御令嬢とカードゲームかよ。優雅なもんだなぁ」


 短時間とは言え、どうやらおっさんはグッスリ眠れたようだ。


 そのままおっさんが執務机に椅子に座ると、レティがカードを片付けて、アリーを部屋の端に呼び寄せる。


「取り敢えず、今の所動きは無いかな。でも追って来てる連中は間違い無く居るね」


 ワタシはおっさんに近寄ると開口一番、取り敢えずの現状を口にした。


 追跡って言うか見張りって言うか、そんな連中が2時間位前から探知魔法もどきに入れ替わりで映ってるんですよ。


 付いて来るスピードからして討伐騎士級のヤツらだと思う。


 ま、色々と隠蔽工作とかしてるみたいだけど、山の中でワタシの探知魔法もどきをかわせるワケないから、こっちからは丸判りなんですけどね。


「向こうさんもまだ様子見って所か。だがそろそろ仕掛け所なんじゃねえか?」


 ワタシの言葉に一つ頷いたおっさんが、執務机の上の地図を睨んだ。


 ワタシもおっさんの言葉に頷いて、地図を見る。


 おっさんも同じ意見だったけど、もし襲って来るとしたら、連中はその嚆矢こうしに道をフッ飛ばす位の事はやって来ると思うんですよ。


 何時ぞや、山中でワタシが殺し屋達を葬った様に、派手な罠を連続で仕掛けて来てもおかしく無いしね。


「そうだね。かと言って露骨に速度は落とせないし、昼食って感じで一旦止まって、様子を見てみる?」


 このまま強行軍ってのもナンだし、相手の出方も見れるカモと思って提案すると、おっさんがニヤッと笑った。


「昼飯か。ちょっと誘ってみるのもイイかも知れんな」


 顎に手を当てて、何かちょっとシブい声まで出したおっさんがウザいです。


 別に変な演技とかしなくてイイから。


 寝て起きたせいでお腹が減ってるなら、ただそう言えばイイと思うんだけどねぇ。








 すぐ先にあった防柵のところで車列を止めると、まずはワタシが表に出て、仕掛けの有無を探った。


 側に居る半透明のクーちゃんが頷いてるから、まあ問題は無いと思うんだけど、色々とバレるのもイヤだから多少の演技はしないとね。


 それでも2、3分で終わらせて手を振ると、4台の車からぞろぞろと人間が降りて来て、昼食の支度に入った。


「お前の探知魔法はシャレにならん程優秀だな。本当にこのまま協会に引っ張りたくなっちまうぜ」


 取り敢えず指揮車の所に戻ると、おっさんが何か考え深げな様子で、声を掛けて来た。


 ぬう。ちょっと急ぎすぎたかな? でも流石に「ワタシにはクーちゃんが居るから余裕ですっ」なんて言えないしねぇ。


「この部隊って対人部隊じゃないからそう感じるんだよ。こっちは表に出て来るまで、対人で鍛えられてるんだからさ」


 言葉の裏に御落胤だからねーって感じを強調して、誤魔化し&かわしを試みる。


「ああ、そうかっ。そいつは何か、嫌な事を聞いちまったみてぇで悪いな。御落胤なんて、そのテで相当な修羅場を潜ってて当たり前だ」


 すると試みは成功したみたいで、おっさんが頭を掻きながら詫び言を口にした。


「別にイイよ。気にしないで」


 でも謝って貰おうとしたワケでもないのに、こう言う反応を返されちゃうと、ちょっと悪い感じがするよ。


 心の中でおっさんに御免と謝り、目を他所に転じると、見知った顔の人が大きな四角い籠を抱えてこっちに走って来るのが目に入った。


「閣下っ、コーニス殿も!」


 ジュリアンさんだ。その籠ってもしかして、ご飯ですかね?


 当然ながらまずエラい人に御報告って感じで、ジュリアンさんはおっさんの前で立ち止まると、籠の中をおっさんに見せた。


「おいおい、こいつは豪勢だな」


 ちょっと嬉しそうな顔で口を開いたおっさんに釣られて、思わずワタシも籠の中を覗き見ると、中はやっぱりご飯だった。


 タライ程もある大きな四角い籠の中に、結構な量の様々なサンドイッチから、鶏肉と思われる焼き物やサラダまで入ってる。


「はっ。今朝の内に隊で用意させて頂いた物です。これは閣下の御一行専用なのでお持ちしましたっ」


 ちょっと謙遜気味なジュリアンさんが、更に嬉しい事を言ってくれた。


 これってワタシ達だけで食べちゃってイイんだ。ジュリアンさん、有難う!


「サンドイッチは皆も同じ物を用意してありますので、遠慮無く召し上がって下さい」


「おおっ、それは助かるな。有難う。貰っておくよ」


 おっさんに続いてワタシもお礼を言うと、ジュリアンさんは少し恥ずかしそうな顔をして、去って行った。


 いやあイイ人だよね、ジュリアンさんって。


「では、ご用意は整っておりますので、あちらへどうぞ」


 何か明後日の方向から、いきなりレティの声がしたので振り向くと、おっさんから籠を奪ったレティが、何時の間に用意したのか、指揮車の外に設えられたテーブルセットの方に持って行く所だった。


 椅子の一つには、既にちゃっかりとアリーが座ってて、何かこっちに手招きをしてるし。


 なんだかなぁ。アリーはともかく、レティの早業には本当に何時も驚かされるんですけど。


 ワタシはおっさんと顔を見合わせると、笑いながら上機嫌な足取りでテーブルに向かった。


 何かおっさんの喜び様も結構な感じですよ。どうやら相当お腹が減ってたみたいだね。


 しっかし、こんな所でこれだけ真っ当な食事が出来るなんて考えて無かったよっ。


 探知魔法もどきには大した影も無いし、クーちゃんも肯いてくれてるから、このままちょっとしたピクニック気分と洒落込みますかね。


本日もこの辺で終わりにさせて頂きます。

読んで頂いた方、ありがとう御座いました。


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