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討伐騎士マリーちゃん  作者: 緒丹治矩
ランスへの道
65/221

065話

ええと、何か大変遅い時間になっちゃいましてすみません。

後で直す位なら、直してから投稿しようと思ったのですが、難産と言うか、色々と時間が経ってしまいました。

申し訳ないです。

「全く、冗談じゃねえぞってんだっ!」


 翌朝8時過ぎ、アリーをレティに任せて、ワタシは指揮車のおっさんを訪ねた。


 で、アリーから聞いた話と自分の推測を話したんだけど、どうやらほとんど寝ていない様子のおっさんは、話が終わった途端に怒声と共に両手を放り上げた。


 まあそうだよねぇ。全部ブン投げて走り去りたいですわ。


 要するにこの件、ランスの代官は魔物から逃げたんじゃなくて、ランスの内部抗争から逃げたって事でほぼ確定だと思うんだよ。


 今迄周辺の中小王領役人達とつるんで、さーんざん悪いコトやり捲くって来た連中が、南部連合の話や協会の動きの話を聞いて浮き足立って、やれ証拠隠滅だの敵性勢力との抗争だのってやり始めちゃった事が背景なんじゃないかな。


 西聖王国の王領の街だと、似た様な話は今までにもあったしさ。


 なんたって代官ってのは一番エラいから、罪を擦りつけ易いし、その為には死んで貰った方が色々と都合が良いからねぇ。


 ランスの代官なんて、間違い無くお飾り代官だったんだろうし、まともな家臣もほとんど居なかったと思うから、何時後ろから撃たれるか判らないと来れば、立て篭もるか逃げるかしか無い。


 そこにスタンピードが来ちゃったんで、それを理由に逃げるしか無くなったって感じかな。


「お前なぁ、今迄どんな人生を送って来やがったんだ? こんな話がポンポン出るヤツなんか、俺でも一人位しか思い付かねえぞ」


 どうやらワタシの話を理解したらしいおっさんが、イヤイヤをする様に頭を振りながら執務机の椅子に座ると、置いてあったグラスにワインを注いだ。


「朝からお酒もイイけどさ。大丈夫なの?」


「ああ。ぶっちゃけ、寝てねえんだ。出発したら隣の騎士用スペースで寝るから、取り敢えずの指揮はお前が取ってくれ」


 あーあ。おっさんってば、流石にかなり参ってる感じだよな。


 気持ちは判るけど、色々と投げちゃうのもどうかと思うんだ。


「指揮ねえ。せいぜい30人位だから何とかなると思うけど、本職の軍人さん達がワタシの指示になんか従うと思えないけどね」


 大体さぁ、支隊とは言え、ワタシに指揮を任せるとか、ちょっとムチャ振りが過ぎると思うよ?


「はぁぁぁ・・・。お前、全然気づいて無いのか? この選抜部隊の連中は昨日の一件以降、全員がお前の信者になっちまったんだぞ」


 ワタシが軽く睨んでやると、見せ付ける様に長い溜め息を付いたおっさんが、何かトンデモ無い事を口にして来た。


「信者ぁ? 何ソレ」


 思わず聞き返すと、椅子に踏ん反り返る様にしな垂れかかったおっさんが、妙な表情で笑った。


「全然気づいて無いのかよ。昨日なんかなぁ、令嬢の奪回を企んだバカ共を蹴散らした迄は良かったが、ジュリアン達が『お姫サンがいねえっ!』って騒ぎ出して、目の色変えて村内を走り回りやがったんだぞ? 後から来た連中まで巻き込んで、エラい騒ぎだったぜ」


 ぬにゅう、何ソレ。お姫サン呼びは勘弁して欲しいけど、その件が信者って話とどう繋がるんかな。


「ああ、ソレで衛士隊本部に来たのってジュリアンさん達だったんだ」


 何か良く判んない話だよね、コレ。


「ああそうだ。衛士隊本部なんざ、バカ共が立て篭もってるかも知らねえって言ったのに、連中、力ワザで突っ込みやがってな。お前らが制圧してたから良かったが、普通なら何人か死んでてもおかしくねぇ」


「ええっと。何か話が良く見えないんだけど」


 うーん。昨日ジュリアンさん達は村内の制圧&掃討中だって言ってたし、別にその話にワタシは関係無いと思うんだけどなぁ。


 ワタシが正直な疑問を口に出すと、おっさんは両手を広げて「やってられない」ってポーズで返して来た。


「判んねえかなぁ。イイか? お前はバッカみてえに強いわ、人間は練れてるわ、戦場は慣れてるわ、現場の指示は的確だわってヤツだから、軍人にとっちゃ、ある意味で理想のあるじサマなんだよ。その上で見た目がソレだぞ? 信者にならねえ方がどうかしてる」


「間単に言っちまうとな。軍隊ってのは基本的に命が掛かってるから、誰だっててめえが死ななきゃならねえ理由ってモノを探そうとするんだよ。お前みたいなのはソレに打ってつけって事なんだ」


 うわぁ。信者ってそう言う意味ですか!


 やっと気付いたかって顔のおっさんから目を逸らすと、ワタシはフラフラとソファーの方によろめいた。


 冗談じゃないよなぁ。


 ワタシってば何時の間に、そんな得体の知れない支持を得ちゃったんだろう。


「・・・何かシャレにならない話だよね。他人の生き死にの理由にされるなんて、真っ平ゴメンなんだけど」


「そう言うな。人並み外れて強いヤツの義務みたいなモンだと思っとけ。大体、お前がこれから暴れれば暴れる程、この先お前の信者は倍々ゲームで増えて行くぞ? 今の内にちっとは慣れとかねえと、後で大変な目に会うと思うがな」


 はぁ。何かずずずぅ~んと気持ちが地面の底に沈み込む様な話だよねえ。


 確かにこの物語の挿絵の様な外見で、その上強ければ、人が勝手に寄って来るカモとは思ってたけど、これってそんな簡単な話じゃないよなぁ。


「なんだかなぁ」


 盛大な溜め息と共に言葉を搾り出すと、ワタシはソファーに崩れる様に座り込んだ。


「おいおい、話はまだ途中だろ? 肝心の話はこれからって顔だったじゃねえか」


 人がガックリとうな垂れてるのをイイ事に、何かちょっと復活したらしいおっさんが、話の続きを催促して来た。


 ああ、くっそぉ。何か身体に力が入り難いよ。


 色々と細かい話をすり合わせようかと思ってたんだけど、もうイイや。


「だから大問題なのはさぁっ、代官夫妻が逃げる時に、ダダを捏ねたアリーを、此処ならばって感じで協会に預けたのに、バカに売り渡されちゃったって事なんだよ!」


 もう考えるのヤメヤメ。


 直球勝負って感じでド真ん中を投げてやると、今度はおっさんが再度ガックリと執務机に凭れ掛かった。


 うむっ! 効いた様だ。勝ったな。


「ほぼ間違い無く、お前の言う通りだろうな。今朝早く連絡が着たんだが、ランスの政治屋騎士卿の片方が出奔したそうだ」


 ぶふぉっ! 大笑いじゃんっ。そっか。おっさんがボロボロになってる理由はソレだったのかっ。


「あーあ。ソレって協会の大スキャンダルだね」


 何か一気に気力が戻って来ちゃいましたよっ。


 いやー、はっははは。笑えるわぁ。


 声に出して笑うと、机の上で潰れたカエルの様になってるおっさんが、ドンッと大きな音を立てて机の端を叩いた。


「まーったくだ! だから貴族のヤツを外から入れるのは反対なんだっ」


 ぬにゅう。討伐士協会って所も、本当に色々とありそうだよね。


 将来、もし内部の人間になる話があっても、マジで断る事にしようっ。


「で、どうすんの?」


 流石にちょっと可哀想になったんで、話を進めてあげると、机の上に顎を乗せたおっさんが口だけを動かしてワインを飲んだ。


 何かまたエラく器用な真似が出来ちゃうんだねえ、このおっさん。


「お前と侍女が令嬢を確保してなきゃ、本当に危なかった所だが、お陰で助かった。令嬢はこのまま俺達と一緒にランスへ連れて行く予定だ」


 うんうん。予定通りって所かな。だったらこっちも、本当の肝心要かんじかなめを言わせて貰おうっ。


「成る程ね。だったら、全員に銃。出来れば連発銃と出来る限りの弾薬を揃えて。後、対物理の魔導兵装があるとイイんだけど」


 もはやこれ以上は無いって位にダラケ切ったおっさんに、必要事項を簡潔に言って行く。


「なーんの為だ? 襲撃でもあるってのかよ」


 案の定、ダラケ切ったおっさんは真面目に取り合う気が無いっぽいけど、なんだかなぁって感じだよね。


 なんでこんなにニブいのかな。


「この話って、多分西聖王国の中央に直結する話だよ。クズ公爵の誰かだと思うけど、そこまではまだ判んないな」


 細かい説明とかメンド臭いから端折って、ド真ん中を口にしてやると、やぱしって感じで、おっさんが目を剥いた。


「ああっ!? 何でそうなるんだよっ」


「この村が『こう』だって事は、間違い無くアレの代官とその一派は商伯のポケットに手を突っ込んでたって事だよ? そんな大事、たかが代官風情で出来るワケ無いじゃない」


 見れば判りそうなもんだと思うけどねぇ。


 結構な組織ぐるみで、商伯のモノを筆頭に散々と予算を抜き捲くってた筈なんだよな。


 前代官以降、ほとんど町や村の整備にお金が使われていないみたいだし、大箱の10や20はガメててもおかしく無いと思う。


「死んだアレの代官が、クズ公爵の誰かの直飼いって事かよ!」


 おんや? ダラけ切ってたおっさんが、急に立ち上がっちゃいましたよ。


 このヒト、攻撃される様な事があると燃えるタイプかね。


「ランスの協会に居た腐れ騎士卿を走らせる程度の裁量はあったんじゃないのかな。で、協会主流派がアレだのこの村だので証拠をガッチリ押さえたと見たら?」


「そうかっ。疑問だったんだが、令嬢を引っ張った奴らの親分がクズ公爵の誰かって事なら話は判る。しかもそんな話まで絡んでるとなりゃ、こいつは大事おおごとだ」


 何か腕を組んでウンウンと唸り出したおっさんがウザいです。


 とんだ熱血野郎って感じだよなぁ。


「多分、アレの代官を迎えに来た中央の傭兵団がそこら辺にいる筈だよ。でも護衛どころか死なせちゃった挙句、証拠まで取られちゃったら、どうする?」


「手ぶらじゃ帰れねえ。少なくとも、何かアリバイを作らねえとマズい・・・成る程な、こりゃ絶対に仕掛けて来やがるか」


 ううーん。何か見た目にも暑苦しいおっさんから、更に妙な熱気が放射されてる感じで、ウザいどころの騒ぎじゃなくなって来たんですけど。


「そもそも、ワタシとおっさんが居ればイイって言う話自体がおかしいんだよ。そう思わない?」


「ああ、全くだ。そう考えて見れば辻褄は合う。間違い無く釣り出しだなぁっ。ヤロウ、ふざけやがってっ!」


 ああ、なんかダメだわ。


 プリプリ怒り出したおっさんがウザ過ぎる。


 しょうがないから物理的にちょっと眠って貰おうかとも思うけど、それはおっさんに大規模襲撃への備えをして貰った後じゃないとマズいから、暫くは仕方ないか。


 ワタシは更に熱気の放射が増えた感じのおっさんから、なるべく距離を取りながら溜め息をついた。


 しかし本当の所、連中はもっと秩序だった動きを予定してたと思うんだよね。


 南部連合の動きに合わせて、それぞれに粛々と動いて行く積りだったんじゃないかな。


 中央の傭兵部隊とかが、アレの代官一派を迎えに来て、ついでにアリーも救出(人質の為に拉致)して、そのまま撤収する流れだっただろうしね。


 でも、アレとヴィヨンのスタンピードで状況が流動的になって、個別に動くしかなくなった挙句、各個に撃破されちゃったって感じかなぁ。


 あれ? 良く考えたら、各個に撃破して回ってるのって、他ならぬワタシ自身じゃんか。


 ぬう。これはちょっとマズいかも知れませんな。


 ワタシってば、気が付かない内にクズ公爵の誰かを敵に回しちゃってたよ。


 これは本当にさっさと西聖王国からはオサラバしないと、マズい展開になってきた気がするね。


本日もこの辺で終わりにさせて頂きます。

呼んで頂いた方、ありがとう御座いました。


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