表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
討伐騎士マリーちゃん  作者: 緒丹治矩
侍女来襲
55/221

055話


 リーズをソファーに座らせて労をねぎらってると、フェリクスおっさんが案内の人と共にやって来たんで、ワタシは彼らにそのまま付いて行った。


 リーズには式が終わる直前くらい前迄は休んで欲しいと言って、レティに付いて貰ってる。


「そう言えば、ヴィヨンの騒動って終わったの?」


「ああ。魔将が討たれたって話で、ワニ野郎共も退いちまったそうだ」


「それで、のんべんだらりとしちゃってるワケか」


「おいおい、大将が休まなきゃ兵共だって休めないだろ。移動に移動を重ねて来たんだ、連中だって疲れが堪ってる」


「昼から飲んでるヒトがそんな事言っても、全然説得力が無いんですけど」


 バカな話をしながらも代官所の中庭へ出ると、さっさと演台の様な所に歩き去ったおっさんが、御大層な文言で挨拶をした。


 表彰式の始まりだ。


 結構広いテラスには列席者がズラッと座ってて、その向こうの庭には更に沢山の人達がひしめき合う様に立ってる。


 んー、結構凄い人の数ですよ。2、3百人は居るんじゃないのかな。


 名を呼ばれたので、ワタシもひと時のピエロを演じる為に人々の前に出る。


 ぶっちゃけた話、こう言うのは慣れてるし、周囲が貴族連中じゃないってダケでも気が楽だ。


 結構な歓声と拍手で迎えられたワタシは、一旦おっさんの前で騎士の礼をとって跪くと、おっさんの手振りを待ってから立ち上がった。


 おっさんが並べる御大層な文言に欠伸が出そうになったけど、何とか我慢して勲章を貰い、人々の方に向き合って聞いた風な台詞を言うと、表彰は終わりだ。


 万雷の拍手の中で脇に下がって、他の表彰者が似た様な感じで表彰されるのを見てたら、なんかお腹が減ってきちゃったよ。


 どうせ会場じゃ何か食べてるヒマなんて無いんだろうし、さっさと抜け出すかな。


 程無くして式が終わっておっさんも下がり、代わりに出て来た次官のマラブル氏がまた御大層な文言で締め括ると、場が一気に盛り上がった。


 表彰式の後は大宴会だもんね。


 ワタシが持ってたザリガニ君達の尻尾は、あと一匹を残して全て町に売っちゃったから、多分ソレが振舞われるんだろうと思う。


 数十年に一度の珍味だもんね、そりゃ盛り上がって当然だよなぁ。


 盛り上がる中庭の人達をボーッと見てると、おっさんに後ろ襟首を摘まれて、ちょっとビックリ。


「ホレ、俺達はあっちだ。行くぞ」


 むう。大宴会の料理にちょっと興味があったんだけどな。


 ワタシは仕方無く、おっさんに連れられるまま、テラスの名士達と一緒に屋内のパーティ会場へ入った。








「うーむ、さすがはレティ、コレはンマいわぁ」


「ホントだね。父さん達みたいな凝った料理とはまた違うけど、なんて言うか豪快な感じで美味しいよっ」


 宿に戻ったワタシ達は、絶賛お食事中だ。


 あの後、代官屋敷のパーティ会場では、リーズの活躍とマラブル氏&しぶちょーバリアが功を奏して、町の名士達の相手も巧く切り抜けられた。


 まあ、町の有力者達はワタシよりも実利に繋がるフェリクスおっさんに群がったので、そもそもラクだったんだけどさ。


 問題点は、ロクに何も食べられなかったって事位だ。


 でも、未成年者を言い訳にさっさと代官屋敷を後にした後、帰りの馬車でレティのヤツが「本日はお嬢様の御誕生日でございますので」とかって爆弾を落としてくれやがったせいで、リーズが大慌てになっちゃってねぇ。


 どうして教えてくれなかったのかと、胸元を掴んでグラングランと揺すられちゃったりして、結構大変でしたよ。


 そんな事言われても、本人が忘れてたんだからしょうがないよなぁ。


 しかしレティのヤツ、ワタシの設定上の誕生日なんて、何時の間に調べやがったんだろう。相変わらず謎な女だ。


 ちなみに料理がレティ製なのは、ジャンさん達が町の宴会に狩り出されてて居なかったからで、リーズに言って調理場を借りたんだよね。


「だけど、もっと早くに判ってたら、プレゼントとか渡せたのになぁ」


 ザリガニ君の揚げ物を頬張りながら、恨めしげに呟くリーズが可愛い。


 いやー、ワタシにとっては可愛いリーズを愛でながら、美味しい物を食べてるだけで幸せなんですけどねっ。


 傍らではレティのヤツが自作のザリガニ君料理を食べながら、何かウンウンと頷いてる。


 どうせならって事で、最後のザリガニ君を出しのは良かったのかも知れん。


 調理場で出した時、レティが嬉しそうに捌いてたんで、コイツってば実は結構楽しみにしてたんじゃないのかね。


「いやー、自分の誕生日とかって、結構忘れちゃうモンなんだよねー、ハハハ」


 恨めしげなリーズに乾いた笑いで誤魔化すと、リーズがお得意の「いやんなっちゃうポーズ」で応えたので、今度は本当に笑う。


 うーん、イイ感じだ。レティのヤツが「調達」して来たシャンパンもンマいし、今日はもう本当に言う事無しって感じだよ。


 トントンッ。


 ワタシが「余は満足じゃ」って感じにシャンパンを啜ってると、入り口の扉がノックされた。


 ベルが鳴る事も無く、いきなり扉がノックされるなんて、何事だろ?


 すかさず立ち上がったレティが扉を開けると、そこには酔っ払って赤ら顔のフェリクスおっさんがいた。


「いやぁ、何か盛り上がってる感じの所を悪ぃが、ちょっと急用でな。中に入ってもイイか?」


 勿論良いよぉと言って、おっさんを招き入れると、ダイニングの椅子を勧める。


「悪いが、明日の昼頃には先発隊を出す事に成った。お前も俺の車に乗って一緒に来てくれ」


 椅子に座って開口一番、おっさんはそう切り出した。


「何かあったの?」


 別に出発が早まる位はイイけど、これってもしかしたら厄ネタですかね。


「ヴィヨンで討伐の報告があった水棲魔物の魔将が、手負いでランス付近に上陸したんだそうだ」


「何ソレ! そんな事ってあるの?」


 心配そうな顔のリーズを見ながらも、あまりのアホ臭い話に思わず大声が出ちゃう。


「ランスの支局は政治屋の騎士卿が2人居るだけでな。ヴィヨンの助っ人を指揮してたのは4級の若造で、今から自伝の準備をしてる様なヤツだ。手柄をアセったんだろうと思うが、バカな話だ」


 ドッとお疲れーって感じだけど、ちょっとおかしな話だよね。


 ヴィヨンの騎士卿が一度は討伐を確認してるんじゃないのかな。


「ヴィヨンに元から居る連中はソレを見逃したの?」


「判らん。あの若造が頼み込んで、先鋒を取らせて貰ったんじゃねえかな。水棲魔物のスタンピードは全貌が判り難いから、手を別けなきゃなんねえし、ザコのケイマンだって、普通の討伐士じゃ隊伍を組まないとムリだ。討ったと報告して来た客将に遠慮したってトコだと思う」


 はぁ。何か聞いてるだけで疲れちゃう様な話だなぁ。


 協会にも結構バカとかクズとかってのが多いのかな。


「良くそんなので討伐士協会の騎士卿が名乗れるねぇ」


 疲れた口調で思った事をそのまま口にすると、おっさんもやってられんって感じで両手を上げた。


「全くだ。言い訳は出来ねえが、若造は口ダケは回るヤツだったからな。ヴィヨンの連中は言い負かされちまったんだろう。全く、お粗末にも程があるぜ」


 おっさんの口振りだと、多分ヴィヨンの騎士卿達は降格にでもされる感じだけど、若造の人の現在はちょっと気になる。


 何か若造の人の話が過去形だしさ。


「もしかして、若造の人はヤられちゃったって事?」


「ああ。ランスでは北上したデラージュ閣下直々に率いる討伐軍がヤってる最中だそうだが、若造のヤツは先鋒を志願して食われちまったとよ」


 あーあ、やっぱなぁ。まぁでも、騎士として戦って死んだんなら、そうそう悪口も言えないか。


「ふうん。そう言う所はさすがに協会の討伐騎士だね。始末の付け所が判ってるワケだ」


「そう言って貰えると嬉しいが、ヤツのバカのせいで、こっち寄りだったランスの代官がリプロンに逃げちまって総スカンだ。お陰でデラージュ閣下のお出ましってワケだなんだが、一刻を争うって程じゃないにしろ、さすがに協会のメンツ丸潰れだからな」


 うんうん。面目丸潰れだよね、ソレってさ。


 討伐士協会の派遣司令官が大ポカやった上に死んじゃって、代官閣下がフォローで討伐部隊の指揮を執ってるなんて、笑い者もイイ所だ。


「こっちは勿論OKだけど、ワタシなんか連れてって大丈夫なの?」


「お前の噂はもうランスにも届いてる。千体斬りだの討伐魔女だの、何か凄えあだ名が付いちまってるみたいだぜ?」


 げげぇー!? 何その学院病っぽい二つ名はっ?


 思わず頭を抱えちゃうよ!


 派手なコトやっちゃったし、ブレイブまで貰っちゃったんだから、二つ名が付くのはしょうが無いとは思うけど、学院病モロ出しみたいな二つ名は勘弁だよねっ。


「そのカッコ悪い二つ名って、マジ?」


「はぁ? カッコ良いじゃねえかよ!『千体斬りのマリー』だぜ? 俺ならシビレちまうけどなぁ」


「本気で言ってるの? どう考えてもタダの笑い者ネタとしか思えないんだけど・・・」


「おいおい! 従騎士の内に二つ名が付いて、しかもそれが『千体斬り』だなんて、羨ましいにも程があるじゃねえかっ。そっちこそ本気で言ってんのかよ!?」


 うわぁ。何かおっさんが「こいつ脳味噌湧いてんのか」って顔で見て来ちゃいましたよ。


 なんでこのテのあだ名って、こうガキ臭いんかな。


 っつーか、協会の騎士卿で爵位を三つも持ってるこのおっさんですら、こう言うセンスなんだもん。他の討伐士連中は推して知るべしって感じかぁ。


 こうなったら、更に別の活躍でもして、その恥ずかしいあだ名を何とかするしかないのかね。


「とにかくワタシも行くよっ。明日何時に何処に行けばイイ!?」


 俯き加減だった顔を上げて、気持ちを入れ替えたワタシは、噛み付く様な口調でおっさんに訊いた。


 とにかく、その学院病モロ出しのあだ名を何とかする為にも、この話はノッて行くしか無いよねっ。


 魔将がナンだろうと、このマリーちゃんが絶対にヤってやるよっ!


 ワタシはそう決心すると、何か呆れた様な顔のおっさんを尻目に、両手をググッと握り締めて気合を入れた。


本日もこの辺で終わりにさせて頂きます。

読んで頂いた方、有難う御座いました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ