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048話


「判った、判ぁーった! 降参だっ」


 立ち上がった阿呆は、何故か無手のまま両手を挙げて笑い出した。


「ったく、お前はアレだなぁ。喧嘩っぱや過ぎるぞ? 確かにコイツは屑だが、お前もキレるのが早過ぎる」


 ぬう? 一体何のマネでしょね、この阿呆は。


 思わず訝しげに睨み付けると、阿呆は「心外だ」って感じに、挙げた両手をブラブラと振って見せた。


「俺だよ俺! 見忘れたとは言わせないぞ? リプロンで会ったろうがっ」


 はぁっ!? まさかの知り合いぃ?


 思わず、金ぴかおっさんの顔をじっと見つめると、確かに、どっかで会った様な記憶が・・・。


「まさかと思うけど、リプロン支局で会った、査定師のおっさんか!?」


「おう! やっと思い出したか。全く世話が焼けるぜ。こっちは大変だったんだぞ。お前さんの見た目が全然違ってるんだからな」


 へぇっ!? 何ソレ?


 目が白黒しちゃうよ! 一体全体どーなってんの!?


「うっ、た、確かにあの時は、舐められない様に、母親の形見の魔導具を使ってた、けどさ」


 ワタシは何とか言い訳を引っ張り出すと、スッパ抜いたまま両手に握り締めてたカタナ剣と鉄棒をインベントリにささっと仕舞った。


「だろーな。まぁ、魔法力波動までは誤魔化せないから、こっちもそれで確認したワケなんだが、確かにそのツラじゃ、そうそう人前にゃ出られんわな」


 おっさんが合図をすると、外から兵士が二人やって来て、へたり込んだバカを引きずる様に連れ出した。


「ま、取り敢えずの証拠は取れたから、コレであの屑の首も取れるだろう。お前さんも後で証人としてサインしてくれよ?」


 ぬにゅううう。もしかして、この審議会自体がやらせだったって事ですか?


 デラージュの名を不正に使って、正規の審議会に介入した罪をデッチ上げる場だった、とか。


「あの屑は中々尻尾を出さないタヌキでな。閣下もほとほと困って、俺が頼まれたってヤツだ。まあ悪かったな」


 うにゅう! こっちがまだポカーンとしてる間に謝られちゃいましたよ。くやしぃー!


「はぁ」


 ワタシは一つ溜め息をつくと、椅子に座って呼吸を整えた。


 周りを見れば、驚いたのはワタシだけじゃなく、しぶちょー達も未だに狼狽状態から立ち直ってない感じだ。


 ちょっと気が晴れた。しぶちょーもこんなのをやられる側に立てば、少しは身に染みるだろうね。


「しかしナンだな。凄え気迫だったな、ええ? 本気で金章騎士とやり合う積りだったのか?」


 ぬにゅう。肩を震わせて笑うおっさんがムカつく。


 取り敢えずは笑えない様にしてやるか。


「思考加速だったら使えるよん。太刀筋の限定される室内だし、悪くても相打ちでしょ?」


 ホントは3分しか続かないけどね。


 案の定、おっさんの笑いが凍って、顔色も変わった。


 思考加速の魔法って、周囲が止まって見える程に自分の頭の中のスピードを爆速状態にする魔法で、難易度超級の身体強化魔法だけど、コレが出来ないと、例え凄い実力を持っててもそれをコントロールする事が出来ないから、宝の持ち腐れになっちゃうんだよね。


 ついでに言うと、コレが出来るか出来ないかってのが銀章と金章の分かれ目って言われるんで、金章の連中はこの魔法技に絶対の自信を持ってたりするから、打って付けだ。


「・・・そいつは驚いたな。流石は伝説の騎士最後の直弟子って所か。ギガリッパー数十体を単独撃破したのも納得だ」


 おっさんはもうお手上げって感じに、またもろ手を挙げると、再度笑い出した。


「ちょっと待って! 何、その伝説の騎士って?」


 聞き逃せない言葉が出て来ちゃいましたよ。


 それってまさか、ししょーの事じゃないよね?


「オイオイ、お前の師匠はお話に出てくる白銀しろがねの騎士じゃないか。知る人ぞ知るって所だが、弟子のお前さんが知らん振りってのは良くないな」


 おっさんは両手を下げて笑いも止めると、何かこっちを言い聞かす様な感じで、片手の人差し指を突きつけて来た。


「はぁ? 何の事?」


 ウチのししょーってば、魔法士で魔法学教授ですよ?


 何をそんな妙な言い掛かりを付けるかねぇ、このおっさんは。


「旧聖王国最後の英雄、グランツェン殿下の親友である白銀しろがねの騎士は、かの御仁の事だぞ? まさか知らんのか?」


 にゅう。白銀しろがねの騎士なんて、それこそ誰だって知ってるっての。


 英雄グランツの親友で、若い頃に2人で冒険の旅に出て、聖王国辺境を魔物相手に暴れまわった話は、本から歌劇まで何種類になるかも判らない程だ。


 ま、男二人で~って話なので、アレな人達の間では「そー言う関係」だって思われてて、そっちの方でも有名だけどさ。


 ・・・待て。良く考えたら、ソレって最近、何処かで聞いた話に良く似てるよな。


『白ナントカ騎士などと呼ばれておったよ』


 いつぞやのししょーの言葉が脳裏に浮かんだ。


「お前の師匠ってのは、オマリー・ブーツェン卿だろ? 違うのか?」


「ぐへっ!」


 脳裏に響いたししょーの声と、おっさんのダメ押しのダブルパンチを食らって、ワタシは椅子から前のめりに転がり落ちそうになった。


 何とか先に両手を床に付けて、転がり落ちるのは防いだけど、頭を打って妙な声が出ちゃったよ。


「う、ウソでしょ? ししょーが白銀しろがねの騎士だなんて・・・」


 妙な体勢から涙目でおっさんを見上げると、おっさんはブンブンと勢い良く首を横に振ってみせた。


 し、ししょー・・・。ひ、酷すぎる・・・。


「ちっくしょー! あのウソ付きじじぃー!! このケジメは何時か絶対取ってやるからなぁぁぁ!!」


 思わず立ち上がって絶叫!


 何が魔法学教授だ、嘘つきじじぃめっ!!


「ああ、何か悪い事を言っちまったみたいだが、その辺にしといてくれ。取り敢えず、審議会を続けたいんだが・・・」


 おっさんが何か言ってるけど、ワタシにはもうそんな声を聞いてる心の余裕は無い。


 フーだのハーだのと、怒りを抑える為に深呼吸してる内に、審議会とやらは終わって、気が付いたら支部の裏庭の塀に寄り掛かってた。


 そして一旦持って行かれて返って来たワタシの討伐士章には、名前の上に小さな白い星が1つ付いてた。


本日もこの辺で終わりにさせて頂きます。

読んで頂いた方、ありがとうございました。


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