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討伐騎士マリーちゃん  作者: 緒丹治矩
アレの宿屋
46/221

046話


 夕食はジャンさんの宣言どおり、ギガリッパーが入った前菜の一皿から始まった。


 マリネ風に野菜と和えた一品で、言われないとこれが魔物の肉だなんて気が付かない程、洗練された味わいだ。


「このエビみたいな味のお肉がギガリッパーなの?」


 リーズの言葉に、多分そうだと思うよって答えながらも、ワタシはあっと言う間に完食。


 もっと大味なのかと思ったら、淡い味わいの中にもコクがあって、何とも言えない美味しさだった。


 次はトマト味の具沢山のスープで、コレがまた何と言うか「うーむ」と唸ってしまう程の素晴しさだ。


 火の通り加減が絶妙で、プリッとした食感がまた堪らないですよ!


「うわっ、コレすっごく美味しいよっ。ギガリッパーって本当に美味しいんだね!」


 リーズの言葉に、全てが集約されてる様なお味でしたよ。


 それから色々と出て来たんだけど、料理が全く違うんで、同じギガリッパー料理なのに、これが全く飽きないどころか、もっと食わせろって感じ。


 庶民の味である筈のニンニク系ソースで絡め焼きした小品なんか、皿拭きのパンが無くなるかと思ったわ。


 でも、圧巻だったのは終わりの方に出たギガリッパーの焼き物だ。


 包み焼きって言うか、蒸し焼きって言うか、その中間みたいな料理で、うっすら焦げ目が付いてるギガリッパーの肉と、鳥腿肉が一緒の皿に乗ってたですよ。


 鶏肉と一緒ってどうなのよ?と思いながらも、ギガリッパーを食べると、何かすっごい濃厚な味で、味付けは塩だけだと思うのに、大人の握り拳二つ分位あった量が一瞬で消えちゃいました。


 いやぁ、これがギガリッパー本来のお味なんですかね。エビに似てるんだけど、海っぽくなくて、何て言うか旨みの詰まった様な素晴しさでしたわ。


 で、しょうがないから残った鶏の方を食べると、これがまた素晴しいお味でビックリ!


 ギガリッパー風味とでも言うんでしょうかねぇ。こちらも多分塩味だけだと思うのに、ちょっと今まで食べた事の無い様な味と香りで、とっても洗練されたお味ながらもコクがあって、鶏肉の美味しさを噛み締めちゃう様な素晴しさがあった。


 最後に可愛らしい山羊のチーズが少し出たけど、その時にはもうパンなんか完食しちゃってて、リーズと二人でチーズのみを食べましたです、ハイ。  


 ぶっちゃけ食べ過ぎで、リーズなんか「うーん、お腹が苦しぃー」とかって唸ってたから、例えパンがあっても入らなかったと思う。


 でもデザートは別腹ね~って感じで、季節モノであるイチゴの絶品タルトをお代わりまでしちゃうと、さすがのこのワタシの「ちょっとだけ人間離れした」身体も限界が近くなってて、幸せな笑顔でグロッキーな感じになってるリーズと一緒に、しばらく椅子の上でダラっと呆けちゃいましたよ。


 もう口も開かなーいって感じ。


 いやー、美食って、本当に素晴しいですねっ! 


 まあさすがに何時までもそのままってワケにも行かないし、さっきの百合っぽい雰囲気も消えてたんで、暫く呆けた後はリーズと一緒に部屋のお風呂に入って、そのまま二人で一緒に寝ちゃいました。








 朝起きたら「私、マリーにお嫁に行けない身体にされちゃった」とかって、下着姿でふざけるリーズに、寝ぼけ頭で大笑いした。


 もう夏も近いから、二人共、下を穿いてるだけだし、お胸サマはそのままで寝てたからねぇ。


 もうちょっと歳が上だったら、モロにそんな感じに見えちゃうかも知れん。


 ちなみにそのお胸サマだけど、リーズに完敗してしまいました。


 わ、ワタシの方が半年近く年上の筈なのに、どーしてっ!?


 って、良く考えたら、それってタダの設定ですがな。


 実年齢なら3歳上だけど、この肉体の年齢は全く判らんからなぁ。


 さっさと服を着て顔を洗ってるリーズの後姿に、ちょっと恨めしい視線を向けながらもベッドから這い出ようとすると、昨日の昼の嫌ぁな記憶が蘇った。


 はぁ。なんかマジで今日これから支部に行くのヤだよなぁ。


 昨日の夜、部隊の本隊が着いたらしいざわめきも聞こえてたし、また面倒臭い事に巻き込まれるんじゃないかと思うと、このままベッドで二度寝したいわ。


「ねぇマリー、私ちょっと朝食を貰いに行って来るけど、早く起きた方がイイよ。支部に行かなくちゃいけないんでしょ?」


 うわっ、リーズに窘められちゃうって、三歳年上としてどうなのよ?


「ああ、うんうん。もう起きるよ。行ってらっしゃーい」


 唸りながらも返事をして、何とか上半身を起こすと、入り口の扉に手を掛けたリーズがこっちを見てた。


「私が戻って来ても寝てたら、濃厚なキスで起こすから、どうなっても知らないよ?」


 ぶっほ、げほげほ。それはちょっと勘弁して下さいませ、リーズさん。


 小さく笑いながら部屋を出て行くリーズに苦笑しながらベッドから出ると、ワタシはさっさと顔を洗って着替える事にした。






 


 ってなワケで、朝食後、まだ9時前だってのにさっさと支部にやって来たのはイイけど、肝心のしぶちょーが居ねえと来た。


 まあ11時って言ってたし、二時間も前に来たこっちが悪いんだけど、支局の部隊が早く着いたのは誰だって気が付くんだから、幾らワタシでも早く来るって思うのが普通なんじゃないのかね。


 受付に居たソレーヌさんに中に入れて貰ったのは良いけど、まだ誰も来てないって無表情に言われちゃったし、ダイニングに行っても誰も居ないし、どうしようかと思っちゃいますよ。


 誰も居ないダイニングのテーブル脇にある椅子に座って、宿で洗って新しい中身を入れた水筒を出した。


 無論中身はいつものレモン水だけど、なんとこれはメイドバイ・リーズさんだ。


 朝食後に「そう言えば、例の水筒ってもう中身無いでしょ? 出してくれれば洗って中身を入れておくよ」って言われたので、その場で渡したら、何か速攻で返されて、そのまま宿から出るのを見送られてしまったと言う事件(?)があったのですよ。


 何かリーズがホントに侍女って言うか従者って言うか、ヘタすると嫁っぽくなって来ちゃいましたな。


 朝食の乗ったワゴンを押して、部屋に戻って来た時の第一声が「ちぇっ、ちゃんと起きてるしぃ」だったし、どうもあのセリフは半分以上本気だったんじゃないかと思ってしまいますよ。


 リーズさんや、ワタシは可愛いモノがとっても大好きなだけで、別にゆりりんな世界の人では無いので、そこの所はお間違いの無い様にお願いしたく思います、ハイ。


 ってまー、ぶっちゃけて言えば、ホントは別にそっちに行っちゃってもイイんだけどさ。


 実際、意外にビビリが多い野郎サマと違って、女の子ならワタシの正体を知っても平気な率が高そうだしね。


 別に子供が生みたいって切に思ってるワケじゃないし、この身体になって以降、そのテの体内プロセスが完全に止まってる臭いんで、元々不順どころの騒ぎじゃ無かった「アレ」も、再開は何時の事になるか判らん状況だ。


 最悪はなんぞ魔法的な術式でも食らわさないと、もう来ないのかも知れん。


 件のシルバニアの女王サマはどうやって子供を生んだのか、ちょっと聞いてみたい気もするな。


「はぁ」


 溜め息をついてレモン水を飲む。


 意図的にそっち(恋愛)方面は考えない様にしてたけど、ちょっとポジティブ方向に考えてみると、意外に選択肢はまだ多いのかも知れない。


 冷静に考えれば、両方イっちゃうってテもあるし、一応高位士族になる予定に成っちゃったから、側室とかだって普通にアリだ。


 ぬう。ちょっと夢が広がっちゃったカモ。


「何やってるんだ? また物騒な事でも考えてるんじゃないだろうな」


 おや、待ち人が来た様ですな。


「物騒な事って、具体的にどんな事を言いたいワケ?」


 売り言葉には買い言葉ですよって感じで、ダイニングに入って来たしぶちょーをチラっと睨んだ。


「お前さんだったら何でもアリだろう。実際、お前さんが本気で暴れ出したら、今来てるバルリエ卿以外は手が出せないだろうしな」


 相変わらず、大仰なゼスチャー付きで肩を竦めてみせたしぶちょーを、ちょっと本気で睨んでみる。


「オイオイ、恐い顔をするなよ。折角の綺麗な顔が台無しだぞ?」


 ワタシに睨まれたしぶちょーが片手で顔を覆って、大げさに天を仰いだ。


「大きなお世話だって言うのっ。それより、そのなんちゃら卿ってのが、昨晩着いたリプロン部隊の大将なワケ?」


「バルリエ卿だ。信じられない話だが、デラージュ閣下の側近氏を一緒に連れて来ていてな」


「一緒なの!? ソレって何かヤバくない?」


 昨日のワタシの見立ては、どうも悪い方に外れたみたいだ。


 その二人がどんなヤツらか判らないけど、直参貴族で大都市の代官やってるヤツの手下と、騎士爵は間違い無しの協会の部隊長が組んだとなれば、悪い予感しかしない。


「全く持って、お前さんが今考えてる通りの連中の様でな。閣下の名代として来た男は、悪名高い強請り屋で有名なヤツだ。それこそ、何百人もの生き血を啜って来た様なクズ中のクズだな」


 大仰な仕草を辞めたしぶちょーが、嫌そうな顔で毒づいた。


 うはぁ。キング・オブ・屑サマですか、それはまた何か凄いのが来ちゃったよね。


 世の中、腐った貴族も多いけど、本当に腐ってるのは大抵は配下の連中だ。


 件のボキュなんとかが良い例で、おエラいさん方の名の下に悪党働きで肥え太る屑なんて、道っ端に転がる死体にたかる蛆虫もビックリする程いる。


 ヘタをすると、配下が腐ってるせいで、実は結構真っ当な領主の風聞が最悪なんて言う話まである位なんだよね。


「ヤバい所の騒ぎじゃ無いじゃん、ソレ。バカの件が知れるとマズいねぇ」


 思わず小声になって最大の懸念を呟く。


「そっちはもうどうにも成らんよ。お前さんが後も残さず焼いちまったから、証拠が全く無い。今更手も足も出んさ」


 珍しく、片手の掌を返す程度の仕草で答えたしぶちょーの言葉にちょっと安心する。


「ふうん。じゃあ何を狙ってるってワケ?」


「正直判らん。閣下の名代を名乗ってはいるが、この町の支配権は持っていない様で、マラブルがその話をしたら断られたそうだ」


 ぬう。次官氏の訴えに取り合わない名代ってなんでしょね。


 名代って言うからには、何らかの権限を持って此処にやって来てる筈なんだけど。 


「何ソレ。まあどうでもイイけど、しぶちょーはワタシにどうして貰いたいワケ?」


 コップに入ってるレモン水の残りをググっと飲み干して、水筒を仕舞いながら、嫌な顔のままのしぶちょーに訊いてみる。


「11時から、スタンピード討伐の功績審議会を開く。いの一番はお前さんの功績審議に成るから、そこは大人しくしててくれ。連中の出方が見えない以上、こっちからは手が出せん」


 ああ、審議会ね。そう言えばそんなのもあったな。


 公式に一等功とか色々決めるヤツなんだけど、今回は小規模だから、協会支部でやるのか。


 ワタシが「ま、聞いておくよ」とだけ答えると、しぶちょーがまた大仰な仕草をしながら渋い顔をした。


本日もこの辺で終わりにさせて頂きます。

読んで頂いた方、ありがとうございました。


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