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討伐騎士マリーちゃん  作者: 緒丹治矩
辺境のスタンピード
37/221

037話

活動報告にも書きましたが、第6話を大きく書き直しました。

話の内容や設定は基本的に変わっていないので、既読の方は再読して頂かなくて大丈夫だと思います。

また、ちょっと来週から仕事が忙しくなりそうなので、暫くの間は月水金の週3回更新にさせて頂こうと思います。

申し訳ありませんが、宜しくお願いします。



 防柵でのトカゲ狩りに一段落が付くと、ワタシ達は再び代官を追った。


 ぶっちゃけワタシが倒したヤツは、あの場は20ちょいでしたよ。


 なんて言うか、やっぱしぶちょーと、専属騎士氏ことドニさんは結構強かった。


 ワタシが暴れ出した直後から、勝手に連携っぽい形を取り始めたその二人が後に付いて、左右の従騎士状態でリザードマンを追い回す展開になっちゃってねぇ。


 四半刻(約15分)も掛からなかったんじゃないかな。


 しぶちょーとドニさんに十数匹ずつは取られちゃったから、リザルトは三人が三人ともイイ勝負って感じだった。


「マリー、代官一行は兎も角、ザリガニの方はどうする?」


「あー、うん。ソレはぶつかってみないと判んないかな。ドニさんはザリガニの事知ってるの?」


「いや、ほとんど知らん。前回の時はオレが生まれて直ぐ位の頃だったしな」


「でも、実際にザリガニ魔獣のガッシュを確認したのってドニさんでしょ?」


「ああ。ただ判ったのは、奴等が馬鹿デカい事と、その割りに素早い動きをするって事位だ。済まんな、役に立てなくて」


 現場指揮に残った補佐のおっさんに代わって付いて来た、ドニさんと話しながら走る。


 リザードマン退治の後に援護のお礼を言われたんで、ちょっと話したら結構意見が合ってさ。


 それ以来、何やかやと話しながら来てるんだよね。


 ぶっちゃけ、しぶちょーと話すとまたどんなショックな物言いが飛び出るか判んないし、ドニさんは抑えの効いた人だから、話してても気楽だ。


「んー、それだけ判ってれば現状では十分じゃない?」


 実際、大きさと素早さが判ってれば、大抵の対処は出来る。


 勿論、その対処ってのはダッシュで逃げる事も含まれるけど。


「お前さん、ホントに若いくせに人間が練れてるな。普通なら『ここまで来といてソレかよ!?』とか、怒り出すヤツが居てもおかしく無いと思うが」


「んんー、そんな事無いよー。現場って恐ろしいモノだし、後で何とかなる様な事に命を賭ける必要は無いでしょ?」


 街道に踊り出て来たゴブをホイホイと斬り飛ばしながら返事をすると、ドニさんが笑った。


「おい、聞いたか、支部長!? コイツは本当に凄いヤツだ! オレにこの歳でこんだけの腕があったら、とんでもねえ天狗になってたと思うぞ?」


「あ、ああ。まーそうだな」


 ドニさんに話を振られたしぶちょーが、曖昧に答えた。


 まーねぇ。今までが今までだけに、しぶちょーには賛成し辛い意見だろうねぇ。でも、悪いのは大抵しぶちょーの方だと思うよ。


「んん?」


 探知魔法もどきに、いきなり人影が出た。100ヤード(約90m)位前だ。


「どうした、マリー?」


 ワタシの様子に即座に反応したドニさんがこっちを見る。


「多分、高い樹から降りたと思うんだけど、90ヤード位先にいきなり人影が出て来たんだよ」


 幾ら街道とは言え、所詮は整地してあるだけの幅20フィート(約6m)位の土道だし、両脇は鬱蒼とした木々が生い茂ってるから、スタンピードが起こってる最中に素人がいて良い様な場所じゃ無い。


 そもそもワタシだって、探知魔法もどきが無かったら、恐くて全開で突っ走っちゃう程、目視の効き辛い場所なんだよね、この辺って。


「いや、大丈夫だ。多分味方だろう」


 しぶちょーの言葉に、ちょっとハっとした。


 ドニさんは首を捻ってるけど、多分、そいつがトレインやってた、しぶちょーの「本当の仲間」の一人に違いない。


「おいマリー、心当たりがありそうな顔だな?」


「ああ、うん。多分しぶちょーが説明してくれると思うよ。ホラ、あそこに居る!」


 既に前方の少し高くなった辺りに、人影が見えてる。


 あれ、でも何かシルエットが女の人っぽいかな?


「ソレーヌ! そっちは無事か?」


 ワタシが首を捻った瞬間、しぶちょーがちょっと大きな声で叫んだ。


「はぁっ!? ソレーヌ? 支部長、マジなのか?」


 ドニさんがビックリした顔でしぶちょーの顔を見た。


 ワタシも超ビックリ! 一体どうなってんの、コレ?


「支部長ぉ!」


 向こうの人影もこっちに駆け寄って来る。


 近づいて見ると、人の顔を覚えるのが苦手なワタシでも、はっきりと支部受付のソレーヌさんだって判った。


 街道の高くなる所の手前でワタシ達が止まると、ソレーヌさんはしぶちょーの目の前まで駆けて来てから口を開いた。


「代官一行はギガリッパーの群れに当たって、ほとんどが死亡しましたが、代官本人とボキューズを含めた計5名が脱出してこっちへ戻って来てます」


 はぁ、成る程ねって感じだけど、何かこの二人、妙な雰囲気じゃないですかね。


 ソレーヌさんはしぶちょーだけ見てて、ドニさんとは目を合わせないし、ワタシに対しては何か睨む様な目で見るし。


 コレって、もしかすると、そう言うコト?


「おい、ソレーヌ! 一体どう言う事なんだ。どうして討伐騎士でもないお前が此処に居るんだ!?」


 ドニさんが堪らずにソレーヌさんに近寄って問い質すと、ソレーヌさんがちょっと怯んで、しぶちょーの方を見た。


「待て。ソレーヌは討伐級こそ低いが、足はそこらの騎士より上だ。それでオレが代官の追跡を頼んだんだ」


「オイオイ、そんな話は初耳だぞ! 一体全体どうなってんだ、これは?」


 ソレーヌさんに助けを求められた感じのしぶちょーが誤魔化しっぽい事を言うと、ドニさんは今度はしぶちょーに噛み付き出した。


 あーあ。そりゃマジになって命まで賭けてやってたのに、自分がハブだったって事を知らされれば、誰だって怒るよね。


 ホントになんだかなーって感じ。


 しぶちょーって、本当に他人の気持ちとか全然考えないからなぁ。


 でもワタシはもう真相に気が付いちゃったから、ただただ精神的に疲れるってダケだ。


 なんて言うか、さっきからずっとソレーヌさんがワタシを見る目が冷たいしさ。


 これで判らなかったら女子じゃないって。


 って言うか、もう色々と丸判りで、ドッとお疲れって感じだけど、ドニさんには助け舟でも出しておくか。


「ドニさん、これが所謂『ドッとお疲れぇ』ってヤツだよ。ハイハイ、判った判った」


 ワタシが万歳をする様な仕草でそう言うと、ドニさんも少し気が付いた様で、ガクっと疲れた様な感じでこっちを見た。


「な、ちょっと、何の話ですか!?」


 オヒオヒ。しぶちょーなら兎も角、ソレーヌさんがこっちに詰め寄るってどうなのよ? ホントに疲れるんですけど。


「ええ? あー、まー、トレインお疲れ~って感じかな?」


 ワタシの言葉に、ソレーヌさんは今度こそ「ゲッ」って顔で怯んだ。


 日頃無表情な美人系の人がこうなると面白いなぁ。


「お前さん、気が付いてたのか?」


 ソレーヌさんの次はしぶちょーが食い付いて来た。


 女の後に出て来るってどうなん? ま、ご希望とあらば言ってあげるけどさ。


「北門の魔物がトレインだったって事と、ザリガニ引っ張ったのがソレーヌさんだって事はね。愛の力って凄いよね!」


 ぶふぉっ!


 しぶちょーの問いに真正面から答えると、しぶちょーが吹いて、ソレーヌさんが真っ赤になった。


 そりゃ幾ら何でも、今のソレーヌさんの満身創痍具合と、かなりきっちりした足腰の装備を見れば、それだけでもピースは嵌るって。


「ホントなのか、マリー?」


 まだ納得行かないって顔のドニさんが訊いて来たから、ド真ん中を答えてあげやう。


「初めっから、代官の件は二人きりでケリ付ける積りだったんじゃないの? そんで後は出来るだけザリガニ削って後退して、町に篭城って作戦だったと思うよ」


 あー、何かホントに疲れて来たわ。


 しぶちょーがこの件で秘密主義だった理由が「職員タラシ」だったなんて、考えただけで疲れるっちゅーの。


「ああ、いや、そうじゃ無いんだ、お前達。俺は、この件が終わったらソレーヌと正式に・・・」


 ドニさんと二人でジト目で睨んでやると、しぶちょーが白状を始めた。


 ま、本気なら許しましょうかね。利用したってのなら、この場で斬り捨ててもイイけどさ。


「はぁぁぁぁぁっ」


 ワタシの説明としぶちょーの白状を聞いたドニさんが、盛大な溜め息を漏らして、地面に膝を付いた。


「んじゃ、ワタシはちょっとクソ代官一行を片付けてくるわ」


 何かしぶちょーとソレーヌさんが抱き合っちゃったりしてて、此処に居るとアツいしダルいし、やってられん。


 探知魔法もどきに映る代官一行らしい人影も近づいて来たしね。


「あ、おい待て、マリー!」


「いいからいいから。しぶちょーはソコでソレーヌさんをいたわってやりなよ」


 とっとことーって感じで街道の高い所へ移動すると、そこは小高い丘の様になってて、結構見晴らしが良かった。


 見ればちょうど50ヤード(約45m)位下った所に、代官一行と思しき一団がいる。 


「ああ、いたいた。おーい、ここだぞー!」


 ワタシは一行に声を掛けると、片手剣を腰の鞘に仕舞って、鉄棒だけを右手に持った。


「おおおっ! お前はナンだ!? 救出部隊の先駆けかっ?」


 何か左右二人の従者っぽいヤツに支えられて、緩い坂道を登ってたデブいオッサンが、ワタシを見つけると、急に元気になった感じで小走りにやって来る。


 うわぁ、ホントにガマガエル風って感じのクソだわ。こんなの剣で斬ったら、剣が腐りそうだ。


「よっこいせ!」


 小さな掛け声と共に、寄って来たガマガエル野郎の脳天に鉄棒を食らわせ、やや遅れてきた左右の従者二人もすかさず同様に潰す。


「なっ、キサマァァァッ!!!」


 声も出せずに倒れ伏した三人を見て、さっきまで疲れた感じだった屑寄騎ともう一人が、一気に凄い勢いで突っ込んで来た。


 もう一人と違って、屑寄騎の方は、それでもまだ剣を抜いていない。


「ホイッ」


 前にいた屑寄騎じゃ無い方のヤツの剣を掻い潜って、鳩尾の辺りにつま先をぶち込む。


「ぎゅえっ!」


 身体がくの字に折れ曲がったそいつを一瞬盾にすると、左下段に持った鉄棒を上に振るって、盾のヤツの後ろ側から素晴しいスピードで降って来た屑寄騎の剣に合わせた。


 バチィンッ!


 イイ音がして屑寄騎の剣が砕け散った瞬間、上体を倒す様にして鉄棒を屑寄騎の喉元にブチ込む。


「ゥゲェッ!」


 即座にやや後ろに跳んで、まだくの字に折れ曲がって昏倒中のヤツの頭も鉄棒で潰した。ついでに屑寄騎にも止めを刺す。


「はぁ、疲れたー」


 大の字になって寝たい衝動を抑えて、背後のしぶちょー達を見ると、何かソレーヌさんが震えてしぶちょーに抱き付いてた。


『あの子、こわぁい』『オレがいるから大丈夫さ』とかって感じですかね?


 やってらんないよなー、もう!


「マリー、お前、本当に凄いヤツだな! あのボキューズを瞬殺するなんてっ!!」


 と思ったら、元気を取り戻したっぽいドニさんが、いきなり走り寄って来てベタ褒めしてくれた。


 ぬにゅう。人殺しとか本当は絶対にやりたく無いくらい嫌いなんだけど、こんなして言われると、ちょっと救われるよね。


「あ、うん。抜き打ちワザってさ、来るぞって判ってたら、対処はラクでしょ? こっちは普段から何時来るか判んない魔物相手なんだから、基本どんなテでも使うってのに、舐めすぎだよね」


 嬉しくなって、ちょっと本心を言ってみるテスト。


「おおっ! そう言えばそうか! 人間相手で剣を持ってると、つい剣技で相手になってしまうんだが、試合じゃ無いんだからそうだよなぁ」


 おおっと、ドニさんには通じたっぽいですよ!


「何かお前さんには教えられる事が多いなぁ。12、3の人間と話してるとはとても思えん」


 まあねぇ、ホントはもうすぐ16歳だしねぇ。


「ま、何はともあれ、一件落着って所?」


 ワタシはうーんと背伸びをすると、ドニさんを見た。


 代官一行の死体はインベントリやストレージの中身を回収したら、例の野焼きの魔法で骨も残らず燃やしちゃう積りだし、もう後は終わったも同然だよね。


 ああ、早く帰ってお風呂に入って寝ちゃいたい。


「オイオイ、落着はアレを何とかしてからだろ?」


 ん? ドニさんが指差した方向に、遠目にも馬鹿が付く程デカいザリガニが見えた。


 ああ、そう言えば、まだアレが居たんだっけか。


本日もこの辺で終わりにさせて頂きます。

読んで頂いた方、有難うございました。


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