036話
ワタシ達が走り出すとすぐに、右手から新手のリザードマンが襲い掛かって来た。
くっそぉー、こいつらで取り敢えずのストレス解消をしてやるるるぅー!
二匹が前後で強襲気味に突っ込んで来る。連中のお定まり連携だけど、探知魔法もどきで判ってるから何て事もない。
まずは前のヤツの脳天に、左手の鉄棒で渾身の一撃をブチ込む。
「ブギュッ!!」
一撃で頭蓋骨が陥没して即死したソレを右に避けて、直後に右手のカタナ剣で後ろのヤツの首を真横に斬り飛ばすと、更に右側へ跳んだ。
「来いやぁっ、トカゲ野郎!」
左側面からほぼ同時に食い付こうとしてた別の二匹の内、近い方の一匹の脳天に、さっきの一匹に食らわせた後、そのままグルッと一回転してタイミングを合わせた鉄棒の先端を叩き込む。
「ボギョッ!」
両目が一気に飛び出す程の一撃を食らったソイツが、もんどり打って倒れると、一瞬たじろぎながらもこっちを向いた後ろのヤツの頭上に、一直線にカタナ剣を斬り込んだ。
「くきょっ」っと妙な音と共に、首から上がスパッと縦に真っ二つに切れたソイツから、噴き出した血をバックステップで避ける。
探知魔法もどきに直近の魔物がいない事を確認しながら、ふんっ!って感じで鉄棒とカタナ剣をその場でブン回して血糊を飛ばすと、ワタシは一息ついた。
「ふう! 何かちょっとだけスッキリしたかなー」
後ろを見ると、苦笑いのしぶちょーと、ビビり捲くりの補佐のおっさんが立ってる。
「おっかねぇぇ・・・トカゲ野郎を四連体破なんて、こんなトンデモ無い使い手、初めて見たわ」
ほとんど八つ当たり気味にリザードマンに叩き込んだせいで、芯がズレたんじゃないかと心配して、鉄棒を何度か振って確かめてると、補佐のおっさんが何か呟いた。
ああ、連体破ね。そう言えばそんなモノもあったね。
討伐士証の討伐ポイントの付き方には幾つか特殊なパターンがある。
連体破ってのは、連続して同じ魔物を撃破した場合を指して、これにはボーナス点みたいなヤツが付くんですよ。
どうやってソレをカウントしてるのかは謎だけど、一呼吸くらいの間に次の魔物をヤると、ポイントが倍になるそうだ。
この連体破には五連まであって、ゴブだと1>2>4>8>16って感じになるって聞いてるけど、今まであんまり考えた事無かったよなぁ。
うーん。この辺りのポイントの稼ぎ方とかって、一度ちゃんと考えた方がイイのかも知れない。
「そう言えば、悪かったな。お前さんの討伐級を上げてやる暇がなくて」
何処かに飛んでった、二匹目のリザードマンの首を拾ってきたしぶちょーが、声を掛けて来た。
「べっつにイイよ。どーせ後二年は6級に成れないんだしさ」
騎士は15歳にならないと成れないのが普通だから、討伐騎士も15歳にならないと成れない。
だから例え今年、7級証がカンストしても全くの無意味だ。
「まぁ、お前さんならそう言うだろうと思ったが、一応詫びは入れないとな」
へえへえ、律儀なコトですね。でもそんな事より、普段の言動にデリカシーとか考えろって思うんですけど?
ワタシはポイポイとストレージもどきにリザードマン死体を放り込むと、カタナ剣を水洗いして、丁寧に拭いて鞘に差し、インベントリに仕舞った。
代わりの片手剣をインベントリから出して腰に差すと、しぶちょーが合図をしたので、取り敢えず続く。
カタナ剣を仕舞ったのは、正直言って恐くなって来たからだ。
なんて言うか、このカタナ剣って切れ過ぎるんだよね。
さっきのリザードマン頭部の縦割りとか、普通はそうそう有り得る話じゃ無いのに、ほとんど手応えすら無かったし。
こんなのをメインで使ってたら、本気で腕が鈍っちゃうよ。
ワタシは片手剣を抜いて何回か振って感覚を確かめると、しぶちょー達の前に出た。
3人の力関係を考えると、この場合はワタシが先頭を行くのが吉だからね。
「トカゲ野郎共はどうだ?」
前に出てすぐに、後ろの補佐のおっさんの声が聞こえた。
「この先、しばらくはいない感じだね。もしかして防柵が近かったりする?」
今まで遭遇したリザードマン共は、はぐれか、群れの斥候のどっちかだ。
幾らこの辺に強い魔物が少ないって言っても、スタンピード時のヤツらの群れなら30は下らない筈だから、そいつらが居るとしたら、討伐士隊が居る防柵の所だと思う。
「ああ、あと300ちょいって所だな。やっぱ奴等、ウチの連中に食い付いてやがる臭いかっ」
復活したらしい補佐のおっさんが真面目な声で答えた。
ワタシが前に出てから、ワタシ達は三人が一列になって走ってる形だ。
ワタシとしぶちょーの間に最弱の補佐のおっさんを挟む形だけど、これからリザードマンの群れにブチ当たろうって所だから、この形は絶好かな。
何も言わなくても、すぐ後ろに回ったワケだから、しぶちょーって「戦闘絡みだけ」はホント頼りになると思う。
「大分ゴブリン共の肉片も多くなって来やがったから、そろそろヤバいかもな」
補佐のおっさんがボソッと呟いた声に、しぶちょーが反応した。
「誰か人のヤツはあったか?」
「取り敢えず、人間の死体らしき物は無かったです。だからまだ誰もやられて無いとは思いますが・・・」
ふうむ。取り敢えず、専属騎士氏は優秀らしい。
少なくとも、リザードマンの群れに討伐士隊が急襲されたワケでは無い様だ。
町を出た当初は、商人とかを町中に入れる為の援護や囮をやった筈だし、その上でリザードマンの群れと当たって人的被害ゼロだったら、かなりの腕だよ。
これは結構期待してもイイかもねーって思った矢先に、探知魔法もどきに反応が来た。
かなりの数のリザードマンだ。こりゃ40はいるね。
直後に人の反応も捕らえたけど、一人以外は固まってる感じだから、多分この一人が件の専属騎士氏だろう。
「二人共! 100ヤードちょい先にリザードマンの群れを見つけた。数は40以上!」
リザードマンの群れが直線距離で120ヤード(約110m)に迫って来て、ワタシはしぶちょー達に警告を出した。
「40! シャレになんねえ!」
「最悪は一旦防柵の中に飛び込むぞ! 二人共、無理はするなよ? 特にマリー、お前は気を付けろ!」
二人の反応があまりに違うんでちょっと笑う。
「ま、10やそこらならワタシだけでも何とかなるけど、流石に40匹のリザードマンにまともに突っ掛ける程バカじゃないって」
取り敢えず、しぶちょーには模範解答を返しておこう。
「俺はお前の北門のアレを見てるからな。あんなバカは絶対にやるなよ!?」
うむーん。何かホントに信用が無いなぁ、ワタシって。
自業自得だけどさぁー。
とか思ってると、見えて来ましたよ、防柵が。
って、超不味い展開じゃんか!
防柵の向こう側、かなり離れた所に専属騎士氏らしい人がリザードマン二匹に梃子摺って追い込まれてる所だった。
しかも、足が止まった騎士氏の背後から別のリザードマンが突っ込もうとしてるし!
彼我の距離、約120ヤード(約109m)。
この距離じゃ絶対に間に合わないよ!
ワタシは片手剣を鞘に突っ込むと、インベントリから上下二連銃を出して、迷わずジャンプした。
不味い事に鉄甲弾はストレージ魔導具の中で、今は炸裂弾(鉛弾の先端に切り込みがあって、当たると弾が裂ける)しか無いから、巧く当てないとリザードマンには効かない。
その上、ワタシが銃弾に掛けられる誘導魔法なんて知れてるから、十分に狙わないとマズい。
本当なら地面に座って撃ちたいんだけど、勢いを殺してる時間が無いし、走りながら撃つ位なら、跳んだ方がマシだって判断。
10フィート(約3m)程の高さの空中で、専属騎士氏の向こう側から突っ込んでくるリザードマンに、瞬間的に照準を合わせる。
「当たれ!」
ズパン!って音と共に、専属騎士氏の斜め前に突っ込んで丁度口を開けたリザードマンが、引っ叩かれた様に仰け反って転がる。
「次!」
その後ろから来たヤツも、ドンピシャで片目を撃ち抜くと、弾かれた様に転がった。
「ふうっ」
着地して銃をストレージに仕舞い、片手剣に持ち替えて、息をつく。
当たって良かった!
「トンデモ無い腕だっ! 何処でも狙撃屋で引っ張りダコだぞ!!」
やや後ろから、興奮した補佐のおっさんが叫んだ。
にゅふふふ。ワタシはししょーと違って、銃もバッチリだからねぇー。
専属騎士氏の方は、今の援護で持ち直した様だ。
梃子摺ってた二匹の内の一匹に引導を渡して、リザードマンが群がる柵内に飛び込むのが見えた。
防柵の中は、討伐士達が群がるリザードマンを槍で突いて牽制してるけど、一般人達も居る様で、あんまし捗ってない感じ。
「来たぞ!」
しぶちょーの声と共に、右斜め前の茂みからリザードマン3匹がこっちに突っ込んで来た。
判ってるって。こっちは探知魔法もどきがあるんだからさっ。
「しぃっ!」
歯の隙間から息を吐いて、ワタシは一気に先頭の一匹との距離を詰めると、下段から勢いのままに片手剣を振り抜いて、左側に跳んだ。
チッって手応えと共にリザードマンの首がスッ飛び、流れのままに右上段に構えると、口を開けてこっちを向いた二匹目の口元に斬り付ける。
カチンって感じの手応え。
口から上が無くなったリザードマンが、突っ込んで来た勢いのままに倒れこんで来るのを、飛び乗る事で躱すと、三匹目はしぶちょーが倒してた。
「しぶちょー、ナイス!」
飛び乗ったリザードマンの死体から、更に前方に跳んで着地すると、再度走り出してしぶちょーに声を掛ける。
「それはこっちのセリフだ! 全く凄いヤツだよ、お前さんは!」
おおっとぉ! しぶちょーがワタシを褒めましたよ!!
全くもう、何時もそうして褒めてくれればイイのにねっ。
気を良くしたワタシは、更に突っ込んで来るリザードマン数匹に笑いながら突っ掛ける。
「足を絶対に止めるな! 周囲を良く見て行けよ!」
しぶちょーが何か叫んでるけど、もう止まらないっての!
トカゲ野郎共を全部地獄に叩き落して、さっさと本命のカス代官を潰しに行かないとねっ。
本日もこの辺で終わりにさせて頂きます。
読んで頂いた方、有難うございました。




