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討伐騎士マリーちゃん  作者: 緒丹治矩
辺境のスタンピード
35/221

035話


 ふと人の気配がしたのでそっちを見ると、支部長補佐のおっさんがしぶちょーの横に来てた。


 現状報告かなと思ったらその通りで、補佐のおっさんは一度こっちと目を合わせて仁義を切ると、しぶちょーの方を見ながら話し始める。


「代官一行は半刻(約30分)前に手勢だけを連れて逃げました。今、門前はバリケードを敷いて二重体制を作ってる所ですので、門扉自体は開いてます」


「はぁっ!? 討伐隊の編成もやんないで逃げたぁ?」


 補佐のおっさんの報告に驚いて大声で聞き返すと、しぶちょーが苦々しい顔でこっちを見た。


「あのガマガエルは正真正銘のクズだからな。有り得る話だ」


 マジかよソレ。無能とかそう言うレベルじゃないだろ。


 こりゃ見敵必殺でオッケーだな。


「南門にはまだゴブリンが少々来てる程度ですから、援護は要らんでしょう。問題は先発で出たドニが率いる連中です。1マイルと行かない所でトカゲ共とヤってるとさっき、報告が来ました」


 ドニってのは会議にも居た専属討伐騎士氏のコトだったと思う。


「防柵の所か?」


「間違い無いでしょう。20人程でそれなりのメンツが揃ってますが、トカゲ相手にその数じゃ防戦一方になっておかしくない」


 防柵ってのは、街道沿いにある簡易避難所の事で、丸太組みの柵で囲まれた一角の事だ。


 イザとなったらそこに逃げ込んで長槍で戦えば、結構期待出来るんだけど、リザードマン相手だと耐久力的にも大分役不足の感が否めない。


「聞いてなかったけど、ザリガニのケツは何処が持ってくれる手筈なの?」


 補佐のおっさんの言葉が途切れたので、ちょっと口を挟む。


 大事な話だから、今の内に聞いておかないとね。


 ワタシや支部長がザリガニに対抗出来なかった場合、その後は篭城戦になるから、援軍が来ないとツラい。


「リプロン支局とランス支局に、もうとっくに要請は出してる。ヴィヨンの方は水棲魔物が暴れてて、こっちに構ってる暇が無いんだ」


 ありゃりゃ。ヴィヨンの騒動って魔物が原因だったのか。


 それじゃ近場の都市の支局はアテにならんわ。


 でもリプロンからココ迄じゃ凄い時間が掛かるよね。


 ヴィヨンとリプロンの丁度中間辺りに位置するランスからだって、軍勢がココ迄来るのにどんだけ掛かるか判んないし、ヘタするとランス支局の部隊はもうヴィヨンの救援に出ちゃってる可能性だってある。


 ザリガニがどんだけの化け物か、当たってみる迄は判んないけど、爆弾槍がキいてくれればイイけどなぁ。


「討伐士協会だ! 北は一段落付いた! 通るぞ!」


 そうこうしてる間に南門に到達したワタシ達は、しぶちょーの大声を聞いた衛士達が道を開けるのももどかしく、ダッシュで門を通過した。


 見れば門前には大きな石塊を積み上げた結構なバリケードが出来てる。


 大型魔物が勢いに任せて門扉に体当たりするのを防ぐ為の物だけど、こんなのを速攻で造るってのは、結構凄い事だよな。さすが最前線の町だよ。


「二人共気をつけろ。先発組がリザードマンとぶつかったからには、この辺はもう奴等がウヨウヨしてておかしく無い」


 しぶちょーの声にワタシは返事を返すと、インベントリから鉄棒を出して左手に握り、右手でカタナ剣を抜いた。


 リザードマンは動き出したら最後、群れが手当たり次第に動く物を攻撃しながら移動するから厄介だけど、オーガと同等に強いとされる割りに、実際にはオーガ程の魔法や物理の抵抗力は無い。


 確かにその灰色がかった鱗は物理抵抗力が凄いから、余程剣に自信が無い限り、普通の討伐士は槍で刺す以外に攻撃方法が無いけど、逆に言えば防御はそれだけだ。


 オーガと同等のパワーやスピードも、その身体的特徴(二本足で歩くデカいトカゲ)から、動きの予測は容易いし、それ程の脅威じゃない。


 じゃあ何が問題かって言えば、群れを成しても精々5、6体のオーガに対して、リザードマンは最悪数十の群れで動く事と、稚拙ながらも連携を取ってくるって事だ。


 実際、リザードマンが多い所では、オーガはほとんど居ない。


 リザードマンが連携を取って数匹で襲い掛かれば、例えオーガだって簡単にヤられちゃうからだ。


 要するにリザードマンを相手にする時は、向こうに連携を取らせない様に戦うのが大事だって事で、それは大抵の場合、先手を取ればウマく行く。


 無論、それはワタシじゃなくても同じ事だね。


 ワタシは町中では閉じてた探知魔法もどきに意識を寄せる。


 何時もの様にスッと感覚が広がると、探知魔法もどきには、距離はあるものの、既に何匹かの魔物の反応があった。


 取り敢えず警告を出し易い様に、しぶちょー達にはカミングアウトしておくか。


 さすがに300ヤード(約274m)強の範囲だとは言えないから、100ヤード以内に絞りたいけど、それでも全然違う事は確かだ。


 さっきの北門の戦いで距離感掴んどいて良かった!


「ワタシは探知魔法が使えるから、連中の動きは大体判るよ!」


「本当か!? 有り難い!」


 ワタシがカミングアウトすると、間髪を居れずに、しぶちょーが答えた。


 この反応! いいねぇ。この人、戦闘だと頼りになりそうだよな。


「この先約50ヤード10刻(時)に3、90ヤード1刻に4、取り敢えずはそんなトコ!」


「判った! 新情報は逐一言ってくれ!」


「了解ぃーっと、そろそろ来るよ! 左側に気をつけて!」


 指示の出し方もイイねっ。これなら安心して突っ込めるかな。


 ワタシは街道の左側の茂みから顔を出したリザードマンにそのまま突っ込む。


「バカ! いきなり前に出るなっ!」


 補佐のおっさんが何か言ってるけど、無視してリザードマンの懐に入ると、低い姿勢からカタナ剣で逆袈裟に斬り裂く。


「グギャッ!」


 体高7フィート(約213cm)はあるリザードマンが、短い右腕と首を同時に飛ばされて一瞬で絶命した。


 素早い動きで首を伸ばして、ワタシに噛み付こうとした二匹目の首を返す刀で斬り飛ばすと、一気に茂みから躍り掛かって来た三匹目の喉元に鉄棒を付き込む。


「ブギャッ!!」


 たたらを踏んだ三匹目に、更に勢いを乗せた前蹴りを叩き込み、体勢が完全に崩れた所をカタナ剣で首を飛ばした。


「ふうっ、まあまあかな」


 さすがにリザードマンは影斬で斬り飛ばす事が難しいから、カタナ剣の刀身を延ばす事は出来ないけど、結構イイ感じだ。


 こいつらの連携を潰すには、一気に押さえ切るのが最も簡単な方法だから、そういう意味でもイイ感じで出来たと思う。


「バッ、ま、マジか、コレぇっ!!」


 背後の声に振り向くと、10フィート(約3m)位後ろで、補佐のおっさんがこっちを指差して泡食ってた。


 んん? あー、そう言えばこのおっさんは、ワタシの北門での活躍を見てないんだっけ。


 ま、いっか。無視無視。


 魔物の死体は魔物を呼ぶから、出来る限り回収しないとマズいんだよね。


 ワタシがさっさと倒したリザードマンの回収をやってる間も、おっさんは何か喚きながら、ジタバタしてるみたいだった。


「いい加減に落ち着け! コイツはこう言うヤツなんだ。バカみたいな使い手なんだよ!」


 さすがのしぶちょーも、補佐のおっさんの狼狽っぷりに怒ったのか、怒鳴っておっさんを嗜める。


「さっきだって北門で、500はラクに居たゴブリンとオークの集団を、あっと言う間に独りで切り伏せちまったんだ」


「ご、500・・・」


 むう。ソレを言われるとナンだね。ちょっと恥ずかしさが蘇っちゃうんだけど。


 ホイホイと死体と斬り飛ばした首を回収すると、ワタシはしぶちょー達にクルっと振り向いて、さっきの隊長サンの如く親指を立てて合図した。


「お、どうした? 無い胸は張らないのか?」


 は? 無い、むね?


 見れば、何か呆然って感じに立ち竦む補佐のおっさんの隣で、しぶちょーが胸を突き出す様なカッコで笑ってた。


 げげげげげぇっ!! このオッサン、いきなり何てコトをををっ!!!


 しかもこのオッサン、こっちが見た直後に、今度は補佐のおっさんの背中をバンバン叩きながら、可笑しそうにマジ笑いを始めやがった!


「いやぁ、あまりにも抉れた胸だったし、最初はナニやってんのか判らなかったんだよ。どうやらコレは褒めて欲しい時の仕草らしいって気が付いた時は、もう笑った笑った」


 ぬにゅぅぅぅぅっ! コ○ス、絶対に後で○ロス、このオッサン!!


「ソレ、思いっきりセクハラですヨ? 怒ってもイイですカ?」


 思わず棒読み口調で返す。うむ。冷静になれ。冷静になってこのオッサンも叩き斬れ!


 って、違う違う。マズいわ、ついカタナ剣でブッた斬りそうになったわ。


「おおっ、いや、済まんな。何かそんな雰囲気だったから、つい口が滑っちまった。悪かったな」


 どう贔屓目に見ても、悪かったなどとは毛程も思ってなさそうなしぶちょーが、それでも詫び言を口にしたので、取り敢えずは怒りを納める事にする。


 ワタシって超平和主義者!


「後で覚えてろヨ・・・」


 でも半眼になってボソッっと呟くコトは忘れない。


「オイオイ、恐いなぁ」


 しぶちょーが肩を竦めておどけ返した。


 ええいクソォ! 補佐のおっさんは何があったのか判らんって感じでキョドってるけど、お前を復活させる為にしぶちょーが取った言動だって判りやがれぃ!


「どーでもイイけど、さっさと行かないとマズいんでショ?」


 半分棒読み口調で先を急げと促すと、思い出したかの様に、しぶちょーと補佐のおっさんが走り出した。


 ワタシも続いて無言で走り出す。


 ガルルルゥ、誰が抉れ胸だってぇっ!? この一件は忘れないぞぉ! 後で必ずケジメ取ってやるからなぁっ!!


 ワタシは半分涙目でそう心に誓いを立てると、しぶちょー達を抜いて、また先陣を切って走り出した。


本日もこの辺で終わりにさせて頂きます。

読んで頂いた方、ありがとうございました。


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