033話
外でパッドで読んだらあまりにもヘンだったので、32話をちょっと直しました。
町の大通りを突っ走る。
一気に励起された風系の魔法を受けて、身体がスッ飛ぶ様に加速して行く中、インベントリに手を突っ込み、右手にカタナ剣、左手に例の鉄棒を握ると、鉄棒を担ぐ様にして左肩に掛けた。
周囲に注意喚起の為、大声で叫ぶ。
「どけどけどけどけぇーっ! 当たると痛いぞぉー!!」
幼女化のお陰でサイズが全く合わなくなって、今のワタシはまともな防具をほとんど付けてない。
せいぜいが肘と膝のパッドと皮の手袋くらいで、足なんてサンダル履きだ。
でも不思議と、全然恐怖を感じないんだよね。
考えてみれば、ししょーだって何時も平服だったんだから、こんなナリでも、今のワタシの方がずっとマシなんだけど、そう言う感覚でも無いし、ホントに不思議。
所謂これが強者の余裕ってヤツなのかな。
まだそんなモンに成った覚えは無いんだけどなぁ。
ほとんど全開で走って行くと、あっと言う間に朝に来た北門が見えた。
周囲を武装した人間達が動き回る城門は、所々が鉄材で補強された頑丈な門扉が閉まっていて、城門前には更に石材を詰んだバリケードが作られ始めてる。
「ちょっと、どいてろぉーっ!!」
門の上から長槍で魔物を小突いてる衛士達に叫んで、ワタシは躊躇無くジャンプした。
対魔物篭城戦なら初手から大量の矢や銃弾は使えないから、ほとんどの衛士や討伐士達は、城壁の上や隙間から長槍で魔物の数を削る戦い方が基本なので、門や城壁の上には大勢の衛士達が見える。
13フィート(約4m)超の城壁に人の身長を足せば20フィート(約6m)近い。
全開で助走してる様なモンだから大丈夫な筈だけど、結構ギリギリな高さだ。
と思ったのも束の間、ジャンプしたワタシの身体は、物凄い勢いで城壁どころか衛士達の頭上の高さをも軽々と超えた。
「うっひゃぁぁぁ!」
思わず変な声が出た。
ぬう。考えてみれば幼女化以来、こんな大ジャンプは初めてなんだけど、これ程とは思わなかったわ。
30フィート(約9m)位は行っただろう高さから城壁の向こう側を見ると、城壁の向こうは魔物で一杯だ。
結構な量だわ、コレ。
眼下を見ると、大量のゴブが城壁に取っ付いて犇き(ひしめき)合ってて、偶に混じるオークが城門に体当たりを食らわしたりしてる。
なんか変な虫が一杯湧いたみたいでキモいです。
アレの中に着地すんのかぁ、結構勇気がいるよなぁ。
とか何とか考えてる余裕も無く、身体は衛士達の頭上を飛び越え、降下体勢に入った。
ワタシはそのまま手頃なオークに一旦着地(?)すると、更に反転して近場のゴブ溜まりのド真ん中に降りる。
走ってた勢いは殺してたけど、上から落ちて来た勢いのままだったから、まともに当たったオークの身体がスッ飛んじゃったんだよね。
瞬殺って感じだけど、着地出来なきゃ意味が無い。ちょっと反省。
地面に降りた直後、結構な量の魔法力を突っ込んで影斬の魔法を励起。
6フィート(約182cm)まで刀身が伸びたカタナ剣で、ワタシに驚いて一瞬動きの止まったゴブ共に真横から斬り掛かると、一気に5、6匹のゴブが両断されて、上半身が宙に舞った。
おおう、スパスパ行っちゃうわぁ。今宵(昼だけど)のカタナ剣は血に飢えておる!
直後に近くのオークの頭に飛び乗って、飛び去り際に蹴り殺しながら、カタナ剣を振るってゴブ共を薙ぎ払う。
パッと見、数は5、600って所かな?
一箇所に留まらなければ、結構な数を食えるかも知れない。
ちょうどイイ具合にオークが混じってるから、そいつらを飛び石代わりに使ってやろう!
3匹目のオークに飛び乗ろうとした直後、そいつが豪腕を振って来たので鉄棒でブッ潰して叩き折る。
「よっしゃー!」
そのまま首っ玉に蹴り足をブチ込み、勢いのまま頚椎を踏み砕いて着地。100点満点!
思わず声も出ようってモンだ。
グラッっと倒れるオークを蹴り飛ばして次のオークへ。
勿論、その間に影斬かましたカタナ剣でゴブ共を肉塊に変える事も忘れない。
バカみたいな量のワタシの魔法力を食ったカタナ剣が雷気の精を呼んで、影斬の刀身ごと花火の様に煌く。
よっし、絶好調だ。
「オラァー! どんどん来いぃぃぃっ!!」
いいねいいねぇっ、完全にこっちのペースだよ!
こうなりゃ数を減らすなんてショボい考えは捨てて、一気に殲滅と行っちゃいますか!!
結局、あたりが魔物の死体だらけになるのに、物の四半刻(15分)も掛からなかった。
ワタシは最後のゴブの首を刎ねると、んんーっと背伸びをして、一息つく。
反対側の門がどうかは知らないけど、取り敢えず、ワタシの探知魔法もどきに魔物の影は無い。
何かワタシって何時の間にか、ホントに凄く強くなってるわ。
本当だったらもっと慎重になってイイ数だし、この数相手にこんな綺麗に決まるなんて、ちょっと前だったら考えもしなかったよなぁ。
さっきまで魔物の吼え声で五月蝿かった周囲も、今は静かなものだ。
影斬の魔法を解いて辺りを見回すと、魔物の死体と血の海の中に突っ立ってる事に気が付いて苦笑した。
たった瞬き一つ分程度なんだけど、余裕があるってデカい。
それがあるからこそ、これだけの魔物を斬ったって言うのに、返り血だってほとんど浴びてないんだしね。
ま、サンダル履きの足は魔物の血でゲロゲロだけどさぁ。
それにしても静か過ぎるよな。
門の方を見ると、門や城壁の上に一杯居る衛士や討伐士風の連中は、何か全員が全員、固まった様に動きが無い。
「おーい、終わったから、死体片付けを手伝ってよー」
試しに、門に向けて声を掛けてみる。
すると、即座に通用口から衛士達がわらわらと出て来て、一斉に魔物の死体を片付け始めた。
ちょっとガックリ。
こっちが声を掛けるのを待ってたのかぁ。別にイイけど、衛士ってそんなんで勤まるのかな。
彼らの仕事は相変わらず早い。キビキビとした仕草で、テキパキと魔物死体が町内に運び込まれて行く。
ただなんか、誰もワタシと目を合わさないんですけど。
衛士の人達は、黙々と魔物の死体を片付けてて、偶に声が聞こえても、それは仕事の指示と返事だけで、他の声は聞こえない。
なんだかなぁ。
今の戦闘を見たせいでビビられたのかな。
そんなこっちゃ、衛士として先々大変だと思うんだけど。
「お疲れ~」の一言も無いなんて、どんだけビビってるんだっての。
「本当にとんでも無いヤツだな、お前さんは」
何か妙に静かな雰囲気の中、背後から聞いた声がした。
振り向くと、長剣を片手に持った、辛気臭い表情のしぶちょーが立ってる。
ええっ! ここはホメるトコでしょ!?
ワタシがムッとして睨むと、しぶちょーがお手上げの仕草をして苦笑した。
ぬにゅう。ヘタレならヘタレらしくすればイイのに、こんなトコだけ格好付けちゃって、何だかなぁ。
しぶちょーに嫌味の一つも言ってやろうかと一歩踏み出すと、通用口から、今度こそ褒めてくれそうな人物が出て来た。
「いや、いやぁ! 凄いモノを見せて頂いたっ!! さすがはマリー殿だ!!」
隊長サン!!
名前忘れちゃったけど、イイ人だっ。
何時の間にか呼び名が「マリア殿」から「マリー殿」に代わってるけど、こっちとしてもその方が気楽でイイ。
「本当に凄まじい武者振りでしたよ! あれこそがツワモノの戦いなんでしょうなっ!!」
辛気臭いしぶちょーと違って、隊長サンはもうワタシを手放しでベタ褒めだ。
やっぱ、こう来なくっちゃねっ!
いいよいいよー、もっと褒めて褒めてぇー!
ちょっとイイ気分で、ワタシは薄い胸を反らした。
にゅふふふふ。このマリーちゃんの活躍を見たかぁって感じ。
どーよ、これ? って感じでしぶちょーを見ると、しぶちょーはしかし、相変わらずの辛気臭い顔で、親指で門の向こう側を指差した。
「イイ気分になってる所悪いがな、反対側はもっとエラい事になってると思うぞ?」
本日もこの辺で終わらせて頂きます。
読んで頂いた方、ありがとうございました。




