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討伐騎士マリーちゃん  作者: 緒丹治矩
アレの町へ
24/221

024話

改訂版です



 森の中をテクテクと歩いてると、まあホントに馬鹿が付く程の数、魔物が襲って来る。

 大玉を散らしてからこっち、探知魔法もどきは向かって来る魔物を捕らえない時が無い感じだ。

 さすがに夜寝る時は大玉と一体化して樹の上で寝たけれど、その時以外はほとんど休んでるヒマが無い。

 鬱陶しい事ハンパじゃないですわ。

 ワタシはインベントリで死蔵してた片手剣を右手に持って、やって来たゴブの首をスパスパと斬り飛ばした。

 左手には盾代わりに太さ約二インチ(約5cm)の鉄棒を持ってる。

 これは元魔法銃研究用の資材で、長さが二フィート半(約76cm)と振り回すのにちょうど良いと使ってみたらビンゴだった。

 叩いて良し、突いて良し、防御して良しの三拍子揃った立派な武器ですよ。

 考え付いたワタシってエラい!

 もう自分から先に仕掛けるとか、そんな阿呆な事しなくても、来たヤツの攻撃を棒で潰して片手剣で刈り取るだけでほぼ無敵だもんな。


「ふう。取り敢えずはコレで暫くは来ないかな」


 目の前に居たゴブを全部首無しにすると、探知魔法もどきに映る魔物はほぼゼロになった。

 この探知魔法もどきは幼女化後に距離がバカみたいに広がって、元の半径五十ヤード(約45m)から三百ヤード(約274m)程度に広がってる臭いので、暫くは魔


物が襲って来る事は無いと思う。

 実測してみないとマズイとは思うものの、広すぎて面倒臭いから放ってあるんだよね。

 だっておかしくなってるのは探知魔法もどきだけじゃない。

 他の魔法関連も同様な上に肉体の性能までハンパ無く上がってるので、それに慣れるだけでも大変なのですよ。

 木を斬ってる時に気付いちゃいたけど、この身体はパワーとスピードが凄くて、それはもう感覚的に追い付かない位だ。

 棒切れ一本で防御し切れるのも、片手剣でスパスパとイケるのもそのお蔭と言って良いと思う。


「ふんっ」


 片手剣をブンッと振って血糊を飛ばし、軽く拭いてから鞘に収める。

 うんむ。剣速が速くなったお陰か、振るだけで全く血糊が残らなくなりましたな。

 ちょっと嬉しい。

 剣を振るスピードが速くなれば、その剣技に強烈なアドバンテージをもたらしちゃうからね。

 例えば「斬る」と言う行為に必要なのは剣の性能では無く技術で、モノが何だろうとこの技術が無いと上手くは斬れないけれど、それを十全に発揮する為には少々の余裕が必要になる。

 ゴブはともかく、オークの首が受身ながらも綺麗に落とせる様になったのは、剣速が上がったせいでこの余裕が出来たからだ。

 前は身体を動かして余裕それを作らないとダメだったから、お陰でワタシの剣技は一段階上の世界に入った。

 色々試してみた感じだと、前は何とか真似出来る程度だったししょーの剣技の難しいヤツが、マジな実戦で使える程になってた位ですよ。

 正直に嬉しい。

 まだまだししょーとガチでやり合える域では無いと思うけれど、剣技ってヤツにはある種のロマンがあるんだよな。


「しかし幼女体形に成ったら逆に身体能力が上がるって、理論的に有り得なくない?」

「キュッ」


 何気無く側にやって来たクーちゃんに話し掛けて、ちょっと考え込む。

 客観的に考えれば有り得ない事だよな、コレ。

 ホントにこの身体、人間の細胞で出来てるのかな。

 まさか魔物に成ってたりしてないよね?

 ちょっとと言うか、すごーく心配なんですけど……。

 そのまま立ち止まってると、クーちゃんズがわらわらと追い付いて来て魔石を渡してくれた。

 こう言う時はクーちゃんも一度に現れる数が増えたから、とっても楽になっちゃいましたよ。

 魔石を受け取ってお礼を言うと、今度はゴブ死体をわらわらと運んで来てくれるので、そっちはストレージもどきに収納だ。


「クーちゃん、ありがとう」


 ゴブ死体を運び終わり、次々に地面に消えて行くクーちゃんズにお礼を言うと、足元に何故か消えないクーちゃんが一人居た。

 何かズボンの裾を引っ張って訴えてる感じですな。


「クゥーン」


 はぁっ。仕草が何とも言えず可愛い!

 なんて喜んでる場合じゃないか。


「えっとね、そろそろ人里が近いから、アレは出来ないの。ゴメンネ」

「キュッ」


 詫び言を口にすると、最後のクーちゃんも聞き分け良く返事をして消えてくれた。

 アレと言うのはワタシが研究開発ストレージの一つに入れてる「骨格だけゴーレム」のコトで、クーちゃんはコレで遊ぶのが大好きらしい。

 歩いて来る最中に色々な実験や検証をやって来た中で、このゴーレム骨格の実験をやったらクーちゃんが狂喜乱舞して凄かった。

 ヘンなクセが付いたりしない様に気を付けないとダメだとは思うものの、元々結構お気に入りらしいのは知ってたし、魔法力以外ではご褒美的なモノって始めて発見し


たので、これからはちょくちょく使ってあげようと思う。


「まあ爆炎地雷と一緒で、人前で使うのは避けたいけどねぇ」


 そう言えば例の爆炎地雷は本当にシャレにならないブツだった。

 殺し屋連中がアレだけ反応したのもヘンだったからと、試しにちょっとゴブに食らわしてみたら、食らったゴブが一瞬で燃え尽きちゃって目が点ですよ!

 いやー、ビックリしました!

 確かに出力に自信はあったけれど、あれ程とは思わなかったもんなぁ。

 アレじゃ流石の討伐騎士も食らったら御終いだから、結局ワタシは例の殺し屋連中を根こそぎヤっちゃったらしい。

 これは真剣に反省しなくちゃだよね。

 ああ言う時はちゃんと検証済みの手段を使わないとダメだって、嫌って程判りました。

 初手からあんなの食らわしてたらこっちの殺意も否定出来ないしねぇ。


「まあ別に殺し屋連中なんて死んで良しだから構わないけどさ」


 ワタシは声を出して考えを打ち切ると、探知魔法もどきに意識を向けて再度周囲を確認した。

 完全に朝になって来たせいか、進行方向に限れば探知魔法もどきに映る魔物の姿は少ない。

 そろそろ早朝と言う時刻でも無いからさっさと動くとするか。

 人里が近い所で騎士走りとかやって目立ちたくないしね。

 もう腰に吊るした片手剣があればイイかと、鉄棒はインベントリに仕舞う。

 実際、魔物が少なくなるのは人里が近い証拠だ。

 魔物は人間を嫌うから、普段は人間の群れから離れようとする習性があるからね。

 そして案の定、歩き出して暫く行くと探知圏内の端が山道の様な地形を捉えた。

 森の木々もややまばらになって来たから、ほぼ山道で間違い無いと思う。

 山道に出ちゃえばもう魔物はそんなに出ないし、この辺ならもうアレの町まで近い筈だ。


「ん? この影は人間かな?」


 探知魔法もどきに人影らしきモノが引っ掛かったので取り敢えず確認。

 うん、間違い無く人間だわ。

 道に出る初っ端で人に会うってのはツいてる証拠かな。

 大まかな地図はあるけど、現地の人に道を訊いた方がずっと早いのは当然だ。

 どうせ誰も見てないので人影に向かってダッシュ!

 木々を抜けて茂みを飛び越え、ホイッと山道に出ると、大きなカゴを背負った太いおっちゃんらしき人物の後ろに出た。

 おお、本当に人間だよ。

 此処はまず挨拶でしょうな。


「どーもー」

「うわぁっ!」


 しかし挨拶すると太ったおっちゃんが突然スッ転んだ。

 あちゃあ、マズかったかな。


「えっと、一応人間だから、そんなに驚かなくても?」


 取り敢えず明るく声を掛け続けて誤魔化す。

 良く考えたら、例え人間でも盗賊とか色々あるもんね。

 ちょっと考えが無さ過ぎたカモ。


「ふへぇ、驚いた。坊主は討伐士け? ちっこいんでゴブリンかと思ってビックラこいたど!」


 すると転がってたおっちゃんがこっちを見て、ちょっと怒りながら立ち上がった。

 しかも痛いところを突いて来ましたよ。

 確かに今の自分の身長じゃゴブと間違えてもおかしくは無いけれど、それを改めて言われちゃうとちょっと悲しい。


「はぁ。まあ確かにチビだけどさ、コレでも討伐従騎士なんだぜ?」


 やや落ち込みながらも討伐士章を出せば、近寄って来てソレをマジマジと見たおっちゃんが大声を上げた。


「ひゃぁー! じゅ、従騎士サマでしたか。そりゃ失礼を!」

「いや、別に構わないよ。こんな時間に山で知らないヤツと出くわせば誰でも驚くって」


 態度が一変してペコペコするおっちゃんを気にするなと制す。

 そりゃこの身分至上主義の世の中じゃ、従騎士なんて一般人から見たらエラい人だからねぇ。

 そんな人に理由無く怒ったりしたら、何があるか判らないもんな。

 でもこんな山道でそこ迄卑屈にならなくてもイイと思う。


「もしこれからアレの町に行くなら付き合って欲しいんだ。こっちは初めて行くから道が良く判らなくてさ」


 そしてすかさず目的を話すと、これから帰るところだったらしいおっちゃんは二つ返事で承諾してくれて、ワタシ達は一緒に歩き出した。

 道を訊くと、どうもここはアレの町の程近くで、おっちゃんも町の住人らしい。


「そーいえば、おっちゃんは何でこんな山の中にいたんだい?」

「山菜獲りだいなっ。もう山アスパラも終わっちまうし、今が稼ぎ時だで!」


 歩きながらワタシが訊くと、おっちゃんは後ろを向いて背中に背負ったカゴを見せた。

 ついでに向き直って胸を張るものの、胸より腹の方が出てるのはご愛嬌だ。


「山菜獲りって……ゴブ一匹にビクビクしてるのに、こんなトコまで来てたら命が幾つあっても足んなくない?」

「だーいじょうぶだ! オラぁこう見えても、逃げ足だけには自信があるだよっ。足じゃゴブリンなんかにゃ負けたコトがねぇ!」

「ぷぷっ。それホントかよ」


 とてもじゃないけど、足が速そうには見えない太り方のおっちゃんの言葉につい笑っちゃう。

 幾ら何でも話を盛り過ぎだと思うよ、ソレ。


「だっけど、あんな山の中を歩いて来るってぇこたぁ、見かけに寄らず、アンタァ強いんだろぉなぁ」

「え? ああ、まあオークの数匹程度ならチョロいけど、世の中、上には上があるからさ」

「へえぇぇぇっ、オークがチョロいんか! そりゃー強いわぁ。オラァそんな強いおヒトにゃ初めて会っただよ!」


 自慢話を笑われたと言うのに、全く怒り出す気配も見えないおっちゃんとバカな話を続けながら山道を下る。

 むう。今の話って、もしかして初対面のヤツを和ませる為のギャグだったのか?

 だとしたらこのおっちゃん、かなり人と話し慣れてる感じだね。

 田舎の人には珍しいタイプかも知れん。

 それによくよく見れば、おっちゃんが背負ってるカゴは結構な量の山菜で一杯だ。

 どこか秘密の場所でも持ってるみたいですな。

 トリュフとかのハンターだと、そんな場所を秘匿してるのが普通だって聞くしね。

 そんな事を考えながらもバカ話に付き合ってると、茂みからゴブが三匹飛び出て来てこっちに向かって来た。

 勿論こっちは探知魔法もどきで判ってるから余裕だけど、おっちゃんは途端に悲鳴を上げてその場に座り込んだ。


「しょーがないなぁ。そんなんでオレが居なかったら、マジでヤバかったんじゃないの?」


 ワタシはおっちゃんの前に出ると、先頭を走ってくるゴブに軽く蹴りを入れて後ろに転がし、そのまま踏み込んで後の二匹の首を一刀でスッ飛ばした。

 返す剣で起き上がろうと上半身を起こしたヤツの首も刎ねる。


「ひぃっ、ひぃぇぇぇっ!」


 ゴブの血がちょっとかかっただけで、おっちゃんが更に悲鳴を上げて転がって行くのを見ながら溜め息。


「おっちゃん、返り血くらいは避けてくれよな。そこまで面倒は見られないよ?」


 あーあ。

 カゴの中を守る為の網がトッパずれて中身が出ちゃってるのに、おっちゃんは構わず転がり続けてますよ。

 ただ幸いな事に、ゴブとは反対方向に転がってるお陰で山菜類に被害は無いようだ。

 仕方が無いから拾ってあげますかね。

 でもおっちゃん、今度山に入る時は護衛を付けたがイイと思うよ、マジで。



この辺で終わらせて頂きます。読んで頂いた方、ありがとうございました。


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