第81話 祭りの翌日
祭りから一夜明け。
自室——自コンテナの扉から這い出した俺は、いまだに撃ち上げられ続けているミサイルの音を聞いて、自分がしでかした愚かな行為を再認識した。
10万発という数を完全に舐めていた。
昨夜おこなった計算では、1発4千万のミサイル10万発で4兆ヌール。それに打ち上げにかかる電気代、クラウザーム・ヴァイロン号の燃料費、残業した軍人に支給したお茶とおやつ代、タクシーチケット。その他諸々の経費をすべて入れると4兆2千億ヌールだった。
いまも打ち上げ中だということを考えると、まだ経費は増え続けているだろう。
俺は、ヘルディナンドに連絡して、状況を確認することにした。
「ヘルディナンド。聞こえるか」
『ザザッ。はっ。聞こえております』
「状況を報告しろ」
『ははっ! いま目の前でミサイルが炸裂しまくっています! ザーッ。実に壮観であります!』
「そうじゃない! 敵の状況がどうなっているか説明しろ!」
『ジーッザザッ。はっ! ミサイル撃ち上げ直後に、凄まじい爆発がありました! それ以来は沈黙を守っております!』
その報告を聞いた俺は目を見開いて、脳をフル回転させはじめた。
ミサイル打ち上げ直後? それ以来沈黙!?
俺は状況を察して頭を抱えた。
「おいヘルディナンド! それはつまり、ミサイル撃ち上げ直後に撃墜しているということではないのか!?」
『まぁ、おそらくそうでしょうね。ご命令通り、跡形もなくなるまで全弾撃ち続けてやりますよ! ザッ』
「やめろ! いますぐ撃つのを止めるん——」
俺が静止しようとした瞬間に、ミサイルの爆発音がやんだ。ヘルディナンドのやつ、随分行動が早いじゃないか。
『いまちょうど撃ち尽くしたところです! いやぁ、久しぶりに爽快な任務でした! ありがとうございます!』
「くそぉぉぉぉ!」
やってしまったことは仕方ない。
俺は、皇帝にどうやって言い訳するか考え始めた。
◇
一方その頃。
「な、なんですって!?」
ムツヴァル星の正統王位継承者、ジョナール・ムツヴァルは、バンユー撃墜の報を聞いて、自分の屋敷で叫び声を上げていた。
バンユーは弟であるが、もともと他人のように育った。その死を悼むよりもこの星を変えられるかもしれないという期待のほうが強かった。
「すぐに革命軍を作り上げましょう……いや、武力で解決してはダメ。対話よ……」
ジョナールは、近くに立っている家臣のほうを向いて指示を飛ばした。
「王城に連絡して、ハスキューと会談の席を設けてちょうだい!」
「はっ! かしこまりました!」
家臣が走って部屋を出ていこうとしたそのとき、部屋の外が騒がしくなり、別の家臣が慌ただしく部屋に飛び込んできた。
「ジョナール様! 王城からの兵士が参りました! ハスキュー様がレジスタンスに拘束されたとの事です!」
その報告を聞いた途端、ジョナールの目が大きく見開かれた。
「なんですって!? レジスタンスはなにか要求をしているの!?」
「そ、それが、ジョナール様を王にせよと申しているそうです!」
「……は?」
「また、王城の兵士の大半が、そのレジスタンスに加わったそうです」
ジョナールは小さく息を吐くと家臣を見回して、威厳を込めた声を出した。
「そう……。それでは、王城に参りましょう」




