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「ただの経費削減ですが?」〜銀河最弱の補給艦隊が、俺の「在庫管理」で最強になったようです〜  作者: 架木 空
アストラの辺境開拓

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第78話 ミサイルの打ち上げ

 日が暮れ、頭上には満点の星空が現れていた。

 俺が空を見上げていると、マオの声が聞こえた。


「これ、すごくおいしいのよ」


 その背後から聞こえる声で、俺は嬉しくなった。

 美味しいと言ってもらえて、頑張って祭りの準備をしてきたかいがあったというものだ。

 そう思った俺は、満面の笑みで振り返った。


「このトーフというのがいちばんおいしいのよ」


 ダメだ! それを食うな!

 俺は伸ばしかけたその手を、必死で留めた。

 いや、原料はあれだが確かにうまい。それは知っている……ちゃんと食品なのだ。原料はあれだが……。

 そこに並べられた豆腐――いや、大豆を使っていないから豆腐とは別の、トーフという謎の食品か……。

 そのトーフはマオだけが美味しそうに食べていた。

 周りは相変わらず、死んだ魚のような目でトーフと、それを食べるマオを見つめていた。


 俺が仲間になってやるぞマオ。

 意を決した俺は、ゴクリと生唾を飲み込み、トーフに手を伸ばした。


「これ本当に美味しいよなぁ、マオ!」

「これ本当に美味しいですわよね、マオちゃん」


 俺が声のするほう――左側を見ると、マオの向こう側にエライアが居た。

 どうやらエライアも、俺と同じ考えだったようだ。

 エライアと俺の視線が交差すると、彼女は目を伏せ頬を紅潮させた。

 そうだよな。俺みたいなオッサンと同じセリフを同時に言ってしまうなんて恥ずかしいよな。


 そんな俺達の顔を交互に見たマオは、顔をほころばせ「うん! おいしいよね!」と無邪気に喜んでいた。

 俺の正面にいるバーネルが、マオの笑顔を見て頷いていた。目に少しだけ涙が溜まっているように見えたのは気のせいではないだろう。

 エライアの正面に陣取っていたメリアは、息を荒くしながら頷いていた。口から垂れたよだれがキラリと光って見えたのは気のせいではないだろう。


 ふとマオを見下ろすと、襟の隙間から傷跡が見えた。

 その傷がどうしても気になってしまった俺は、バーネルにマオの傷のことを尋ねることにした。


 テーブルを回り込み、バーネルの隣に移動する。

 正面では、マオとエライアが楽しそうにトーフをつついている。


「ほら。プルンプルンですわよ」

「ほんとうだ! ぷるんぷるんしてる! おもしろいのよ!」


 その光景をハァハァ言いながら見つめているメリアを無視し、マオを微笑みながら見ているバーネルに、声を潜めて話しかけた。


「なぁ、バーネルさん。マオのあの傷跡のことなんだが……」


 振り返ったバーネルは、先程までとは打って変わり、真顔で俺の目を見つめた。


「気づかれましたか。さすがはアストラ様です。あの傷跡は、バンユー様に負わされた傷跡だそうです」


「なぜあんな傷を?」


「あの子はバンユー様のお茶出しを担当しておりました。ある日、熱いお茶を持っていった所、『冷たいお茶が飲みたい』という理由で、その熱いお茶をかけられたそうです」


 それを聞いた俺は、両手を強く握りしめた。全身の震えを抑えることが出来ない。


「そんなことで? あんな幼子に火傷を負わせたというのか!?」


「お恥ずかしい限りですが、それがムツヴァル星の現状でございます……それ以来、マオ様は冷たいお茶を先に持っていくようにしているそうです。そうすれば火傷を負わされることはないと……」


 バーネルがそう言ったとき、周囲にブルータスの音声で放送が流れた。


【そろそろ花火の時間です。東の空に注目してください。ケチなアストラのご厚意で、1万発もある使用期限切れのミサイルの一部――たった10発だけ打ち上げます。お楽しみください】


 お前はひと言多いんだ! 余計なこと言わずに打ち上げろよ!

 打ち上げのカウントダウンが始まった。


【10】

【9】

【8】

【7】


 そのとき、ミサイルが打ち上げられるはずの東の空が、唐突に明るく染まった。


「なんだあれ?」


【6】


 エライアの向かい側で、息を荒くしてハァハァ言っていたはずのメリアが、空を見上げて叫び声を上げた。


「あれはフェイス殿下のブリリアント・フェイス号では!?」


「なんだって!?」


【5】


 俺が焦る中、カウントダウンは続けられるのであった。



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