第79話 ミサイルの行方
マズい。いまのままでは、フェイスを撃墜してしまう可能性があるぞ!
「ブルータス! ミサイルの打ち上げ方向を変えるんだ! 西にしろ!」
【4。えぇ……今からですか? エンジンに点火してしまってますよ?】
「いいから早くしろ!」
【3。めんどくさっ……】
「面倒でも、やらないといけないことはやるんだよ! お前の仕事だ!」
【2。わがままだなぁ】
「わがままじゃねぇ!」
【1。えーっと……どうしよう?】
「どうしよう、じゃない! 西だ! 西!」
【0】
カウントが0になると同時に、10発のミサイルが満天の星空めがけて登っていくのが見えた。その方角は、無駄に眩しい光を放つブリリアント・フェイス号がいる〝東〟ではなく、何もいない〝西〟だ。
「間に合った……」
【なんとか間に合わせましたよ。後でオイルを奢ってくださいね】
「オイルなんて、いくらでもくれてやる。廃オイルな。ところでお前、わざとギリギリまで焦らしただろう?」
【……な、なんのことでしょうかね?】
「バレてんぞ」
皆の視線が星空に昇っていく10発のミサイルに注がれていた。
そろそろミサイルが爆発するころ――
俺がそう思った瞬間、10発のミサイルが空中で爆発した。
ドゴーン! ドゴゴーン! ドゴゴゴゴーン! ドゴゴゴーン!
「わぁ、きれいなのよ! エライアおねえちゃん!」
周りの感嘆の声に混じって、マオの喜ぶ声を聞いた俺は、それを見上げながら頷いた。
ミサイルの平和利用というやつだな。
10発で4億ヌールだが、マオを笑顔にできたから良しとしよう。
俺がそう思っていたとき、ワンテンポ遅れて、凄まじい閃光と共に爆発音が轟いた。
ドガァァァァァンンン……!
……へ? 11発目?
混乱に乗じて、ヘルディナンドのやつが打ち上げやがったか?
そう思った俺は、アホ面で空を見上げているヘルディナンドがすぐ隣にいることに気づいた。
パラパラと落ちる火の粉を眺めていると、無線から雑音混じりの音声が流れた。
『ザーッ……まさか私のステルス艦隊の接近に気づくとは、やりますねぇ……ザザッ……しかし、この私の艦隊は、10発程度のミサイルでやられはしませんよ! ステルス艦の恐怖をじっくりと味わわせて差し上げましょう! クックック……ザザー、ザッ』
周囲の難民たちが、ざわつき出した。「バンユー様だ」「あの方からは逃げ切れない」などと口々に言っているのが聞こえた。
ふと横に目をやると、マオが耳をふさいで、小さな体を震わせながらうずくまっていた。
アイツか!
俺は歯を強く噛み締めた。手のひらに爪が食い込む。
震える手で、ヘルディナンドの肩を掴んだ。
「――こめ」
「……は?」
「全弾撃ち込め!」
「はっ! それでは、使用期限切れ倉庫の1万発を全弾――」
「違う! 在庫のミサイルを全弾撃ち込め! クラウザーム・ヴァイロン号に搭載している分も全てだ! アイツだけは絶対に生かして帰すなぁ!」
「ア、アイアイサー!」
目を輝かせてそう返事をしたヘルディナンドは、無線に手をかけた。




