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「ただの経費削減ですが?」〜銀河最弱の補給艦隊が、俺の「在庫管理」で最強になったようです〜  作者: 架木 空
アストラの辺境開拓

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第77話 フェイスの接近と豆腐の正体

 ブリリアント・フェイス号は、滑るように音もなく宇宙の暗闇を飛んでいた。

 その静かな電子音が断続的に聞こえるブリッジに置かれた最高級デザイナーズチェアで、気持ちよさそうに3日間寝続けていたクロス・ヴァーン帝国第一皇子のフェイスが、ゆっくりとその黄金色に輝く長い睫毛が生えた瞼を持ち上げた。

 帝国で1番面倒な男の目覚めの時間だ。


 フェイスの瞳が開くのを確認した親衛隊隊長のミグラス・デュソウスが、サッと手を上げると同時に、ブリリアント・フェイス号が綺羅びやかな電飾に包まれる。

 周囲が明るくなるのと呼応するように、ブリッジに設置された時計の針がぐるりと逆回転し、フェイスが眠った時間で停止した。

 ミグラスがフェイスの足元に(ひざまず)く。


「殿下、あと5分で到着します」


「ほう。いつもながら、お前の用意する時間短縮ドリンクの効果は素晴らしいな。3日間の行程をたった五分に短縮するとは……今度発売しよう。高値で売れるぞ」


「お褒めいただき光栄でございます。しかし、あのドリンクは宇宙一高貴な殿下の血であればこそ効果を発揮できるものでございます。下賤なものに効果は及びません。すべては殿下の血が成せる御業でございます」


 そのミグラスの世辞という名の下手な嘘を聞き、フェイスは口角を吊り上げると、高らかに笑い声を上げた。


「フハハハハッ! なるほどな! しかし、このオレに合わせてこのようなドリンクを作るお前の手腕もまた素晴らしいものであるぞ!」


「は! ありがたき幸せ!」


 ミグラスがそう答えたとき、眼前に緑色の星が見えてきた。

 その光景を目にしたフェイスは、目を吊り上げると、大きな声を出して口角をさらに上げた。


「あれがクロス・フロンティア星か! なんと貧素な星よ! 貧相なアホトラにふさわしい星だな!」


 ◇


 クロス・フロンティア星の倉庫前には沢山の食べ物――原色のプロテインブロックとろうそくが立てられた豆腐が並べられていた。

 エライアが準備した、食べられるネジも、巨大な皿にうず高く積まれている。

 移住者達の目は皆輝いている。しかし、豆腐を見るときだけは、なぜか死んだ魚のような目をしていた。


 なんでみんなそんな目で豆腐を見るんだ? このろくな食べ物がない銀河で、豆腐が唯一まともな食べ物だろうが。

 いや、落ち着け。

 みんな豆腐を食べたことがないのだろう。きっと見た目で判断しているだけのこと。一口食べれば気に入るはずだ。

 そう考えていた俺は、あることに思い当たった。


 待てよ? 豆腐があるってことは、大豆があるっていうことじゃないか! なんでいままで気づかなかったんだ? 大豆があれば何でもできる!

 納豆に味噌にきなこ。大豆ミートだって夢じゃない。

 プロテインブロックに嫌気が差していた俺は、様々な食材に想いを馳せながら、隣りにいるエライアに声をかけた。


「なぁ、エライア。大豆はどこで作っているんだ? どこにいけば手に入る?」


「ダイズ……ですか? それはなんですの?」


「え? 知らないわけないだろう。豆腐の原料だよ」


「豆腐の原料でしたら、あれですわ」


 エライアが指さした方向を確認した俺は、目を丸くした。

 どうしても信じられない俺は、確認せざるを得なかった。


「あれって? 本当にあれか?」


「えぇ、そうですわよ? あれを科学的に分解し、再構築して作っているのですわ。あれダイズっていう名前もあるのですね」


 嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ! 絶対に嘘だぁ!

 俺は、多数のハエが飛び回っている下にある肥溜めを見たあと、魚が死んだような目で豆腐を見つめた。


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