第74話 皇帝の来訪と出撃するステルス艦
俺とエライアが移民船を見つめていると、中からたくさんの人が降りてきた。皆、周りを見回し、口々に感嘆の声を上げていた。
「そんなに嬉しいのか? なんにもない星だが?」
エライアはそう言う俺を見ながら微笑んだ。
「自然が沢山あるではありませんか。クロス・ヴァーン星にはないものですわ。……あとは倉庫の機械とオイルも」
「お前、本当にブレないな……」
「そうですわ。わたくしは信念を持って機械オタクをしているのですわ」
「……そんな信念は捨てちまえ」
その言葉が聞こえていないのか、意図的に無視したのか分からないが、エライアはなにも答えずに辺りを見回し始めた。
「お父様たちはまだ降りてきませんわね」
エライアがそう言ったとき、聞き慣れたセリフが聞こえた。
「エライアちゅあん! 会いたかったよぉ!」
目の前には、皇帝とは似ても似つかない銀髪の美男子が立っている。その隣に立っていた金髪の美女が、その美男子の頭を平手で張った。
「あなた! だから控えなさいと何度も言ったはずです!」
「そんなこと言ったってさ……」
銀髪の美男子が、そう言いながら腕に付けたデバイスを操作すると、2人が光に包まれた。光が徐々に収まっていくと、そこに皇帝エグゼウスと皇后レイアが現れた。
「皇帝陛下ではありませんか!? すごい技術ですねそれ」
「やぁ、アストラ君。君には色々と伝えておきたいことがあってな」
「はい。なんでしょうか」
「まずは、この移民船だがな。見ての通り、移住の希望者はかなり多い。大体5000人くらいだな。皆この星での生活を楽しみにしている。移住者の歓迎のために祭りを計画してもらいたい。祭りは明後日だな」
「5000……あ、明後日ですか? それはかなり急ですね」
5000人規模の祭りを明後日までだと? ちょっと無理があるんじゃないか?
「それと、ムツヴァル星からも移民が来ることになっている。こちらは明日には到着するだろう」
「ムツヴァル星?」
「君の気持ちもわかるぞ。ムツヴァル星といえば銀河連邦加盟星だからな。しかし、ムツヴァル星の移民は奴隷たちだ。正確に言うと難民だな。人道的な意味合いが強い。こちらも合わせてお祭りだ」
皇帝……あんた、ただお祭りをしたいだけなんじゃないのか……?
まぁ、いい。どんな祭りにするかブルータスにも考えさせよう。
俺がそう思っていたとき、エライアがぽんっと手を叩いた。
お前、どうせまたろくでもないアイディアを――
「盛大な花火なんかいいのではないですの?」
「おぉ! いいではないか! さすがエライアちゅあんだぁ!」
よくねぇよ! 花火を打ち上げるのにいくらかかると思ってるんだ!
ダメだ! こいつらに任せておいたら、帝国の財政が破綻する未来しか見えない!
考えろ! 考えるんだ!
俺の脳が高速回転を始めた。
◇
ムツヴァル星のメインドック内は轟音に包まれていた。整備が終わり、出撃準備が整った9隻のボイド級ステルス戦艦のエンジンが唸りを上げている。
その中でも、最新鋭のネプダム・ボーゲン号のデッキに乗り込んだバンユー・ムツヴァルが叫び声を上げた。
「出撃準備は整いましたねぇ! 出発しなさい!」
「アイアイサー!」
その声を合図に、ネプダム・ボーゲン号を最後尾に隊列を組んだ9隻のステルス戦艦が、轟音とともに宇宙へと飛び立つのであった。




