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「ただの経費削減ですが?」〜銀河最弱の補給艦隊が、俺の「在庫管理」で最強になったようです〜  作者: 架木 空
アストラの辺境開拓

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第73話 移民船の到着

 ジョナールは、マオが乗ったクロス・フロンティア星へ向けて飛び立つ船を見上げていた。

 船は1日もあれば向こうに到着するだろう。あとのことは一緒に船に乗り込んだ家臣に任せておけば大丈夫だ。


 腹違いの弟――バンユーは今やこの星の王だ。王姉(おうし)の自分といえど逆らえばなにをされるかわからない。

 父である前王が暗殺されたいま、自分の命など弟を裏で操っている王太后の一存で、どうとでもなることをよくわかっていたジョナールは、密かに活動するしかなかったのである。

 今までは……。


 マオの件を見れば明らかだ。奴隷問題は火急を要することを実感した。


「もう自分の命の心配ばかりなんてしていられないわね」


 ジョナールはそう呟くと、協力者のところへ向かった。


 ◇


 一方、その頃。

 クロス・ヴァーン帝国の皇帝エグゼウスと、王妃レイアが密かに乗り込んだ移民船がクロス・フロンティア星の近くまで到着していた。


『まもなく、大気圏に突入します。座席に座ってシートベルトをかけてください』


 その艦内放送を聞いて、シートベルトを締め始めた皇帝の目に緑色のクロス・フロンティア星が映り込んだ。


「おぉ! レイア、見えてきたぞ! エライアちゅあん! いまパパンが行きまちゅからねぇ!」


 王妃はその夫をジロリと(にら)みつけた。


「あ、な、た! はしゃぎ過ぎです!」


 皇帝は肩を落として、口を尖らせる。


「はい……。でも……嬉しいんだもの」


「そもそも、エライアとは毎日会っているではありませんか」


 そう。王妃が言うように、エライア姫は毎朝宮殿で朝食を取ったあと転移装置でクロス・フロンティアの倉庫へ行き、夜には帰っているのである。ではなぜ、数日間移民船で移動している皇帝と王妃が毎日エライアと会っているのか?

 答えは簡単だ。皇帝と王妃も、エライアと同じように宮殿と移民船を行き来しているのである。

 エネルギーの無駄遣いここに極まれり。


「クロス・フロンティア星では初めて会うんだもん……」

「『だもん』『だもん』言うのはやめてください! あなたは威厳というものが――」


 王妃がそう口にしたちょうどそのとき、移民船が大気圏突入態勢に入った。船が小さく揺れたあと、次第に揺れが強くなっていく。

 船内にクロス・フロンティア星の重力が伝わってくると同時に、重力発生装置が停止――シートベルトをしている皇帝と王妃は、フッと体が浮く感覚に襲われた。


「おぉ。この感覚は何度味わっても慣れないな」

「だから、転移装置で来ればいいと言ったではありませんか」


 しばらくして揺れが収まり、船の落下速度が遅くなると、窓の外は一面の青い空に変わった。

 シートベルトを外した皇帝が窓から見下ろすと、眼下に緑色の大地が広がっていた。


「倉庫……いや、エライアちゅあ――エライアはどこかな?」


 王妃の刺すような視線を感じて、そう言い直した皇帝の視界に、四角い建造物が入り込んだ。倉庫だ。


「レイア。見つけたぞ。倉庫に到着だ」


 移民船は倉庫の目の前――停船しているクラウザーム・ヴァイロン号の隣にゆっくりと着陸する。


 ズシィンッ。


 移民船のショックアブソーバーを備えたランディングギアが地面へ深く食い込んだ。


 ◇


【アストラ。船が降りてきますよ】


 油にまみれたトイレットペーパーの活用方法を考えていた俺の思考を、ブルータスの声が遮った。


「なんだ!? また敵か!?」


【いえ。クロス・ヴァーン星からの移民船です】


「移民船? 何だそれは?」


【皇帝がクロス・フロンティア星への移民を募っていたのです】


「それは知ってる! 船が今日来るなんて聞いていないぞ!」


【聞かれませんでしたので】


「聞かれなくても言えよ!」


【はぁぁ。めんどくさい……。あ、ちなみに皇帝も乗っています】


「それを早く言えや!」


 俺は倉庫の出口に向かって走った。

 大気の浄化に成功してから、二重ハッチの内側を開けたままにしている。急いで外側のハッチを開けると、ちょうど移民船が着陸するのが見えた。

 移民船を見つめている俺の隣に、エライアがやってきた。


「移民船が到着しましたわね。お父様とお母様が乗っているのですわ」

「え? 王妃も一緒なのか」

「そうですわよ。あの中にはアストラ様も喜ぶ施設が入っていますわ」

「俺が喜ぶ……?」


 俺とエライアの目の前で、移民船の上部がパカリと割れた。

 そのまま、ゆっくりと開いていくと、移民船内部があらわになっていく。

 全体が開き切ると、そこにはじめからあったように小さな町が現れた。

 中央付近に見慣れた白いドラム缶のマークが見えた。


「あれはノレーソンじゃないか!」


 久しぶりにコンビニ「ノレーソン」を見ながら、ゴンタポイントに想いを馳せるのであった。




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