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「ただの経費削減ですが?」〜銀河最弱の補給艦隊が、俺の「在庫管理」で最強になったようです〜  作者: 架木 空
アストラの辺境開拓

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第71話 ムツヴァル星の王家

 銀河連邦の一角、ムツヴァル星の巨大なメインドックで、指導者バンユー・ムツヴァルが戦艦を眺めていた。


「ここまで並ぶと壮観ですねぇ」


 目の前に並ぶのは、ただの艦隊ではない。全てがボイド級――すなわち、一番巨大な見栄重視の超弩級戦艦ユニバース級の次に大きな、ステルス艦で構成された艦隊だ。


 通常、艦隊の編成においては6種類――パルサー(快速艦)、クエーサー(高出力艦)、ネビュラ(汎用型のバランス艦)、ギャラクシー(空母)、ボイド(ステルス艦)、ユニバース(超弩級)――をバランスよく配置するべきなのであるが、バンユーがボイド級のみで編成させたのには理由があった。

 それは、ステルス艦ゆえの、敵に察知されないという特性である。


 アストラが今まで勝ち続けてきた理由は、その類稀(たぐいまれ)なる先読み能力にあることは明白。であれば、アストラに気づかれないようにすれば、先読み能力も発揮できないという単純にして明快な戦略だ。


「この艦隊であれば、アストラにも気づかれません。クックック。こんな簡単なことに気づかないとは、連邦軍の司令官はマヌケだらけですねぇ」


 そう言いながら舌なめずりをするバンユーの足元へ、年端のいかない5歳ほどの少女が(ひざまず)き、カップを乗せたトレーを捧げ持った。

 ムツヴァル星ではいまだに奴隷制が採用されている。富める者が貧しい者から搾取をするのが当たり前という価値観のムツヴァル星では、貧しい子供が一番の弱者なのだ。


「バンユーさま、おちゃでございます」

「ふむ。ご苦労」


 そのカップを受け取り、口をつけた瞬間、バンユーはその細い目をいっそう細くしたかと思うと、いきなり少女の頭の上でカップを逆さまにした。

 冷たいお茶が少女の頭から体へと伝う。少女は咄嗟(とっさ)に両手で頭を押さえて体を小さく震わせた。

 そんなことはお構いなしに、バンユーが高い声でまくし立てる。


「冷たいではないか! 私は温かいものを飲みたい気分なのですよ! 奴隷の分際で私が飲みたいものを持ってこないとは、不敬ですねぇ!」


 怒りに任せて投げつけられたカップが、頭を庇っている少女の手にぶつかり、地面へ落ちて転がった。


「ご、ごめんなさい!」


 子供は慌てて謝り、体を震わせたままうずくまった。

 バンユーはその様子を蔑むような目で見ながら、子供の頭を踏みつけた。


「謝ったって、温かいお茶は出てきませんよ。早く持ってきなさい!」


 バンユーがそう言いながら、少女を蹴り飛ばそうとしたそのとき、一人の女性が庇うようにバンユーの足と少女の間に割って入り、その足を背中で受け止めた。


 バシィッ!


「バンユー! おやめなさい!」


 黒く長いストレートヘアを後ろで一つにまとめたその女性は、キッとバンユーを(にら)みつけながら振り返った。

 バンユーの腹違いの姉、ジョナール・ムツヴァルである。


 ジョナールは、前王ドゴールの正妃オーリーンの子だ。本来であれば彼女が女王としてムツヴァル星の指導者の立場を継ぐ予定であった。

 しかし、バンユーの母である第2王妃ハスキューの策略により、オーリーン妃は暗殺された。そして、その2ヶ月後にドゴールが急死すると、ハスキューの狙い通りバンユーが王として指導者になったのであった。


「姉上。私は王ですよ? もう少し口を慎んでもらいたいものですねぇ」

「王であれば、王らしく振る舞いなさい。バンユー、今のあなたを見たらお父様が哀しまれます!」


 そう言うジョナールをチラリと見たバンユーが、フッと鼻で笑った。


「この世にいない者が、どう哀しむというのですかねぇ。クックック」


 ジョナールは、その弟の顔を哀しげな目で見つめる。


「あなたにはなにを言っても無駄のようですね。この子は私がもらっていきます」


 そう言い残し、ずぶ濡れの少女を連れてドックを出ていくのであった。


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