第69話 開いた扉と暗闇の中の明かり
クラウス・クロス将軍がクロス・ヴァーン帝国を建国したのが400年前。
もし日本人だとしたら、クラウス・クロス将軍は江戸時代の人間ということになる。
ちょんまげで耳が短い……。そりゃあヘルメットもかぶるはずだ。
だが、ちょっと待て。
俺はエライアに疑問をぶつけた。
「なぁ、エライア。クラウス・クロス将軍の文字が書いてあるということは、あの扉も400年前のものだということか?」
「そういうことになりますわね。錆びているのも仕方ないですわね」
「では、この倉庫はあの扉に合わせて作ったってことになるな。それだけ大事にしているっていうことか……」
骨董品扱いだな。オークションにかければ、少しは帝国の財政の足しになるだろう……。って、まずいじゃないか!
そんな高値がつくかもしれない扉を、いま現在ブルータスが紙やすりで絶賛破壊中だ!
「おいブルータス! ちょっと待て! いったん手を止め――」
バキィィィン!!
【え? なにか言いましたか? 扉が開きましたよ】
手に持ったガスバーナーを消しながらブルータスが俺のほうを向いた。
遅かった。
扉はまっぷたつに溶断されたうえにひしゃげ曲がり、床にポッカリと四角い穴が開いている。表面に書いてあった文字も大半が紙やすりによって消されていた。
「それは開いたって言わないんだよ! ただの破壊行為だ! そもそも俺は錆を落とせって言っただろうが!」
【開けたかったんでしょう? 頼まれた以上の仕事をしてあげたというのにその言い草はないでしょう】
「くっ……。わかった。開けてくれてありがとう」
【どういたしまして。お困りの際はまた是非ブルータス社をご用命ください】
お前はいつから会社になったんだ。
俺は扉のことは諦めて倉庫の地下を探ることにした。
エライアと一緒に、口を開けている四角い穴へと近づくと、穴の下を覗き込む。
「暗いな」
「暗いですわね」
俺が近くに落ちていたネジ(扉の残骸)を手に取ると、穴の中へ落とし、耳をすませる。
……。
…………。
………………。
……………………。
…………………………。
ヵッ。
「深すぎる……」
エライアが両手をパチンと合わせる。なにか思いついたらしいが、どうせろくでもない思いつきに違いないことを俺は確信した。
「明かりを持ってきましょう。松明を投げ込めばいいのですわ! 前に映画でやっていましたの!」
ほらな。やっぱり予想通りだ。
「お前な。ここはオイルまみれだから火気厳禁だ。それに下には何があるかわからないんだ。もしミサイルがあったら大惨事になるだろ」
「そう、ですか……。いいアイディアだと思ったのですが……」
俺は首を傾げているエライアを放っておいて、ブルータスのほうを向いた。
「ブルータス。なにか明かりはないか? 明かりを用意して、クレーンで下に下りよう」
【閃光弾を用意しましょう】
「やめろ! 火気厳禁だっていま言ったばかりだろうが。普通にライトにしろよ!」
【では、私のライトを点けましょう。まず私の手のひらに乗ってください。一緒にクレーンで下りますよ】
ブルータスが伸ばしてきた手のひらに俺たちが乗ると、ブルータスは遠隔操作でクレーンを動かした。
ブルータスはクレーンのフックに足をかけワイヤーを掴む。
俺たちはブルータスと一緒に穴の中へと下りていった。
次第に暗闇に包まれていく。
上に見える四角い明かりが小さくなってくると、ブルータスが口を開いた。
【そろそろ明かりを点けますよ】
下のほうで強い明かりが灯された。
「ん? どこが光ってるんだ?」
俺が下を見ると、光っているのはブルータスの股間だった。
「どこ光らせてんだよ!」




