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「ただの経費削減ですが?」〜銀河最弱の補給艦隊が、俺の「在庫管理」で最強になったようです〜  作者: 架木 空
アストラの辺境開拓

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第68話 扉のサイン

 俺は古びた扉の取っ手のような窪みに手をかけて、力いっぱい引っ張った。


「ふん!」


 しかし、扉は錆びついているのか、ピクリとも動かない。

 また、ブルータスに頼むしかないか。


「おい、ブルータス。この扉を――」


【嫌です】


「まだなにも言ってないだろうが! なにが嫌なんだ。言ってみろ!?」


【どうせ扉を開けろと言うのでしょう? 私は便利屋ではありませんよ】


「AIは便利屋なんだよ! 人間が便利に使うために作られた存在なんだよ。自覚しろ! それに『扉を開けろ』なんて頼むつもりなんてないぞ。優秀なはずなのに読みは外すなんてな……『この扉の錆を落としてくれ』と頼もうとしていたんだ。でも、まぁ……無理なら仕方ないな」


 嘘だ。『扉を開けろ』と頼むつもりだったが、ブルータスの裏をかいてみたくなった。それだけだ。


【はぁ? いいでしょう。やってみせましょう。ちょうど扉がオイルまみれになっている。私がすぐに錆を落としてこの扉が簡単に開くようにして差し上げましょう。見ていなさい、アストラ】


 やはりチョロい。

 紙やすりで扉をゴシゴシとこすり始めたブルータスを見ていると、隣にエライアが来て俺の袖をちょいちょいと引っ張った。


「アストラ様? あれを見てください。あのサイン」


「ん? サイン?」


 エライアが扉に書いてある文字を指差した。『by 黒須』と書かれた謎のサインだ。


「あれはクラウス・クロス将軍のサインですわよね?」


「ん? そうだったか?」


 クラウス・クロス将軍? 久しぶりに聞いたなその名前。

 俺の祖先だと思われている、クロス・ヴァーン帝国を作った将軍だったか。

 え? 『クラウス・クロス』って漢字の名前なのか?


「そうですわよ。教科書で見たものと同じですわ」


 エライアは俺のほうを向くと、ゆっくりと話し始めた。


「この間、アストラ様はご自分の耳を『小さい頃に事故で』とおっしゃっていましたが、あれは嘘ですよね」


「え? あ、いや……」


「えぇ。わかっていますわ。隠さなくても大丈夫。言い伝えではクラウス・クロス将軍の耳も短かったとされていますの。アストラ様の耳が短いのはクラウス・クロス将軍の子孫であれば当然のことですわ。でも――」


 エライアはそう言うと、俺に向かって人差し指を向け、その指を自分の口元に持っていった。


「『黙っている』という約束はちゃんと守って差し上げますわ。アストラ様が隠したいということは何か理由がおありでしょうからね」


 〝耳が短いことがバレたらどうなるかわからない〟という心配以外に理由などないのではあるが、俺はそのエライアの心遣いが嬉しかった。


「ありがとう。助かるよ」


 そう言った俺の脳裏に、一つの疑問が生まれていた。

 クラウス・クロス将軍は、耳が短い。そして名前は漢字だ。

 もしかして、地球人か? その昔、俺と同じように転移させられてきた日本人がいる? そういうことではないのか?


「エライア。クラウス・クロス将軍がクロス・ヴァーン帝国の建国に関わったのはどのくらい前だったっけ?」


「え? えーっと……いつだったかしら?」


「お前姫だろ。自分の国の歴史くらい、しっかり把握しておけよ」


「そ、それを言うのであれば、アストラ様だって同じですわ! ご自分のご先祖様のことくらいしっかりと把握しておいてくださいませ」


 俺はARディスプレイを起動して、ポータルサイトVaRoo!(ヴァルー)を開いた。そして、検索バーに『クラウス・クロス将軍 建国 どれくらい前』と入力し検索ボタンを押すと「ブゥゥン」という重々しい音とともに検索結果の上にAIモードの回答が表示された。


【クラウス・クロス将軍は、約400年前にクロス・ヴァーン帝国を建国しました。クラウス・クロス将軍の若い頃の記録は見つかっておらず、その生い立ちはベールに包まれています。生い立ちがわからないなんて、なんとおいたわちい。うぷぷぷぷ】


「ブルータス! お前かぁぁぁ!!!」



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