第65話 地下室の捜索とダメになるトイレットペーパー
ブルータスの先導で倉庫の奥に向かって進み始めて約25分。
俺たちは倉庫の最奥に辿り着いた。他の場所はザッツが注文した真新しいコンテナが100段重ねになっているが、なぜかそこには古いコンテナがぽつんと一つ置かれ、周囲にはトイレットペーパーの箱が大量に積まれている。
【アストラ、この辺りです。足音の変化に気が付きましたか?】
「あぁ、確かにさっきまでの足音よりも高い音がするな」
ブルータスの巨体が出す足音だからこそわかる変化だ。これは俺単体では気づきようもない。
「おい、ブルータス。どこか下へ行く入口を探すぞ」
【はい。どうぞご自由に】
「どうぞご自由にじゃない! お前も探すんだよ!」
【それならそうと言ってください。『探すぞ』ではなく、『一緒に探してください』と言わないと伝わりませんよ? 本当にあなたは指示出しが下手ですね】
「うるさい! それぐらい察しろよ! 優秀なAI様なんだろうが!」
【まったく……ああ言えばこう言う……】
ブルータスがぶつぶつ文句を言いながら入口を探し始める様子を見て、俺もトイレットペーパーが入った箱をどかしながら壁面と床を念入りに探り始めた。
「ダメだ、トイレットペーパーの箱が邪魔だ」
俺はトイレットペーパーの箱をコンテナに退避させるため、その扉を開けた。
そのコンテナは、なぜか屋根がなかった。
「なんで屋根がないんだ?」
まぁいい。トイレットペーパーを入れるのに好都合だ。
俺はブルータスに向かって指示を出した。今度は別の解釈ができないよう、正確に主語をきちっと伝えるように気をつけた。
「ブルータス。ちょっと手伝ってほしい。この周辺にあるトイレットペーパーの箱をこのコンテナの中に入れてくれ」
【はい、承知しました。アストラ、やればできるではないですか。成長しましたね】
「うるせぇ!」
◇
「ダメだ……見つからん」
俺たちが入口を探し始めて1時間ほど経っていた。隠しスイッチはおろか床の切れ目の一つも見つからない。
【これはもうありませんね。諦めましょう】
「お前簡単に諦めるとか言うなよ。4千億ヌールのミサイルが眠っているかもしれないんだぞ? それ以外にも見つかっていない在庫は大量にあるんだ。それも見つかるかもしれないだろ?」
【全て損失計上済みですがね】
「え? お前ミサイル以外も120兆ヌール分すべて損失計上しちまったのか!?」
【ええ。当たり前ではありませんか。そう言ったでしょう?】
「行方不明の戦艦もか!? あれまだ減価償却終わっていないんだぞ! あと10年分は耐用年数が残っていたんだよ!」
【仕方ないでしょう。見つからない戦艦は撃沈されたゴミと一緒ですよ?】
「一緒じゃねぇよ!」
グオォォォォンンン。
俺たちが言い争いを続けていると、上のほうから物音が聞こえた。俺が上を見上げると、なぜかクレーンが動いている。
クレーンにはなにか箱のようなものが吊り下げられていた。
「な……なんでクレーンが勝手に?」
俺がそのまま様子を見ていると、その箱のようなものを吊り下げたクレーンがコンテナの真上で止まった。
「止まった……? なんだ?」
俺の目の前でクレーンに吊り下げられた箱の底がガバッと開くと、中から黒く艶のある液体が大量に降ってきた。
ドプゥンン!
「うおぉぉぉぉ!」
その黒い液体はコンテナの中に入れてある大量のトイレットペーパーの箱を台無しにしながら、開け放たれたコンテナの扉から外へと一気に溢れ出て、俺をずぶ濡れにしながら床へとぶちまけられた。
「ぶはぁぁ! オイルじゃねぇか! エライア! お前の仕業だろう!」
俺がそう叫ぶと、上空のスピーカーからエライアの声が聞こえた。
「え? あれ? なんでコンテナの扉が開いてしまっているんですの!? アストラ様、ひどいですわ! 意地悪しないでください!」
「意地悪なんかしてない! トイレットペーパーを無駄にしやがって! エライア、ちょっと下りてこい!」
俺はオイルでずぶ濡れになったままで、エライアが下りてくるのを待つのであった。
「メリアはこの状態で、自分が血まみれだと思ったわけか……なんかちょっとわかるかも……」




