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「ただの経費削減ですが?」〜銀河最弱の補給艦隊が、俺の「在庫管理」で最強になったようです〜  作者: 架木 空
アストラの辺境開拓

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第61話 みんなの「くそぉ!」

「くそ! アホトラのヤツめ!」


 クロス・ヴァーン帝国第一皇子、フェイス・ヴァーンは宮殿の自室で怒鳴り声をあげていた。


「購入申請どころか、再申請すらして来なくなりやがった! これでは嫌がらせができないではないか!」


 明らかにスペックオーバーの最高級デバイスで、アストラの申請をチェックしていたフェイスの手が止まる。


「待てよ? このザッツからの申請。まったくチェックせずに承認していたが、アホトラに差し戻したやつと、同じではないか!」


 アストラの苦肉の策に気づいたフェイスは、テーブルに拳を叩きつけた。


 ドゴッ!


「おのれ、アホトラ! 姑息な真似をしやがって! こうなったら直接嫌がらせをしに行ってやる! 転移装置ではダメだ。オレ専用の戦艦、ブリリアント・フェイス号で押しかけて、戦力で圧力をかけてやる!」

 

 フェイスは部屋の扉を開けると、外に立っていた歩哨に向かって大声で指示を出した。


「おい! 出撃準備だ! クロス・フロンティア星に向かうぞ!」 


「は!」


 フェイスは残忍な笑みを浮かべながら、靴音高くドックに向かって歩き始めた。


 ◇


「くそぉぉぉぉ! アストラめ!」


 銀河連邦軍の司令室にドラダイル・ゲイターの叫び声が響き渡った。


「おい! 銀河連邦軍内部に、アストラへ情報を流したやつがいるはずだ! 草の根を分けて、裏切り者を捜し出せ!」


 部下に指示を出す声を聞き、顔に笑顔を張り付かせた細い目の男が、ドラダイルの前にやってきた。銀河連邦の一角を担うムツヴァル星の若き指導者、バンユー・ムツヴァルだ。


「クックック。随分悔しそうですねぇ。ドラダイル殿。もう少し落ち着いたらどうですか?」


「ムツヴァル閣下! この状況で落ち着いてなどいられる訳がないでしょう!」


「まぁまぁ……そのように頭に血が上った状態で、まともな判断ができるとは思えませんねぇ。そのアストラとかいう男など、私が一蹴してあげましょう」


「なんですと!? あのアストラを舐めてかかると痛い目に遭いますぞ!」


「クックック。大丈夫ですよ。私にはいいアイディアがありますからねぇ。アストラが気付いた頃には、クロス・フロンティア星は我々の軍門に下っていることでしょう」


 バンユーは、細い目をさらに細くして、ニヤリと口角を上げた。


 ◇


「くそっ! なんでこんなに所在不明な在庫が多いんだよ!」


 棚卸表をチェックしていた俺は、帝国のあまりにも杜撰(ずさん)な在庫管理に目眩(めまい)を覚えていた。


「今期最後の棚卸しだぞ! こんな結果で会計を締められるわけがないだろうが!」


 しかも一番差異が多いのは、なぜかこのクロス・フロンティア星の倉庫ときている。

 俺がいるのに差異が一番多いなどというふざけた結果は、到底許せるはずがない。


「なぁザッツ、棚卸しの結果がひど過ぎるぞ。手を抜いて、ちゃんと全部数えていないんじゃないのか?」


「ん? あぁ、オレは工具の手入れ以外、なんにもやってないぞ」


「じゃあ、ザッツが受け持っていた奥半分は、誰が棚卸しをしたって言うんだよ」


「ブルータスとエライアだが?」


「趣味で来ているだけの姫に棚卸しをさせるんじゃねぇよ! おい、ブルータス!」


【なんですかアストラ。そんな大きな声を出さなくても聞こえますよ】


「棚卸しの結果がズレているんだが、お前ちゃんとカウントしているんだろうな」


【私がサボっているとでも言いたいのですか? なんならあなたのトイレの回数まですべてしっかりカウントしていますよ。もし疑うなら、あなたのトイレの時間を集計して、時給換算でどれだけ時間と経費を溝に捨てているか、教えて差し上げましょうか?】


「や、め、ろぉ! ただの嫌がらせじゃねぇか! この倉庫だけでミサイルが1万発も行方不明なんだよ!」


【だとしたら、それは帳簿が間違っているということですね。私は絶対に正確ですから。優秀で正確だということを証明するために、あなたのトイレの回数――】


「だから、それはやめろ!」


 ◇


「くそ! 早くエライア様の所に行きたいのに!」


 メリアは、エライアの部屋で掃除機をかけていた。今朝は皇帝への報告と、アストラの招集に時間を取られてしまったため、掃除をする時間がなかったのである。


「ふぅ、やっと終わったわ」


 掃除機をかけ終え、拭き掃除を始めようとしたメリアは、ドレッサーの上にキラリと光るものを見つけた。


「こ、これは!」


 メリアが見つけたのはエライアの髪の毛だった。


「どぅふっ、ぐふふふっ」


 気持ち悪い笑い方をしながら、メリアはおもむろにポケットからピルケースを取り出した。


「また見つけたわぁ!」


 メリアは口の端を伝うよだれを袖で拭い、その光るエライアの髪の毛を、丁寧な手つきできれいに丸めてピルケースにしまうのであった。


「これでちょうど100本目ね。あとでゆっくり……うふふ」



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