第62話 アストラの差異調査依頼
「おい、ブルータス! なにか心当たりはないのか!? ミサイル1万発で40兆ヌールだぞ? 俺が1千万年まじめにこつこつ働いても足りない金額だ」
俺は、行方不明になっている1万発のミサイルを探していた。
【そんなこと私に言われても困りますよ。先程も申し上げた通り、私の棚カウントは完璧ですからね】
「じゃあ、足りない分はどうすりゃいいんだよ」
【帳簿から削除して、雑損失として処理するしかありません】
雑損失だと!? そんなもん許してたまるか! 絶対にどこかにあるはずだ!
1万発だぞ? そんな大量のミサイルが消えてなくなるはずはない。いくら帝国でも、そんな杜撰な管理――いや、するな。あいつらならきっとやる。
俺の脳裏に、ザッツやヘルディナンドをはじめ、ポンコツ従業員たちの顔が次々と浮かんだ。
「40兆も雑損失にできるか! そもそも、このミサイルはいつから行方不明になっていたんだよ」
【この倉庫は10年前から放置されていましたから、それ以上前から行方不明なのは確実です】
「その間、棚卸しはしていないわけじゃないだろうが!?」
【棚卸しはしていましたが、差分の調査をした記録は見つかりません】
差分の調査をした記録がない、だと? そんな馬鹿な話があってたまるか!
ちょっと待て……もしかして、他の分も……?
「じゃあ、ミサイル以外の80兆ヌールの差異も、ずっと放置され続けた結果ということか?」
【まぁ、そういうことになりますね。全部雑損失で処理しましょう】
「いや、調査させる。適切に処理するんだ!」
俺はヘルメットのARディスプレイを起動し、メーラーを立ち上げた。クロス・ヴァーン帝国軍全体へメールを送るためだ。
なんとしてでも調査をさせる。今まで調査をしていないやつらだ。おそらく棚卸しなど自分には関係ないことだと思っているのだろう。
そういうやつらには、棚卸しが自分たちの生活に直結するのだと自覚させるのが有効なのだ。
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お疲れ様です。棚卸しの差異をまとめましたので、各部門で調査をお願いします。
現在120兆ヌールのマイナスとなっています。利益率を5パーセントと想定して計算すると、2400兆ヌールの売上に相当する金額です。
◯カウントし忘れている戦艦はありませんか?
◯撃沈された戦艦の損失処理を忘れていませんか?
◯出庫処理し忘れている、使用済みのミサイルはありませんか?
◯使用した弾丸の数は正確に帳簿につけていますか?
棚の差異は帝国の収益に関わります。すなわち、最終的に我々の生活に直結してくるのです。
在庫管理をしっかりと行わないと、帝国の存続が危うくなる可能性もあります。棚卸しはしっかりやりましょう。
調査の〆切は3日後の金曜日です。
よろしくお願いします。
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「これでよし、と」
俺はメーラーの送信ボタンを押した。




