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「ただの経費削減ですが?」〜銀河最弱の補給艦隊が、俺の「在庫管理」で最強になったようです〜  作者: 架木 空
アストラの辺境開拓

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第55話 銀河連邦軍の本気

 銀河連邦軍のタイフーン・ジェニュイン号を中心に、大量の戦艦がクロス・フロンティア星へと進軍を開始していた。司令官ドラダイル・ゲイターが招集した、およそ1200隻の艦隊だ。

 上から2番目に大きい空母型のギャラクシー級が約100隻、汎用型のネビュラ級200隻、高火力型のクエーサー級が300隻、高速戦闘型のパルサー級が600隻と続く。それは連邦軍全勢力の約8割にあたる数である。

 それだけの数を集めるのは容易なことではない。当然多くの燃料を消費するし、他の戦場の戦力が足りなくなる。しかし、連邦軍は他の戦場を犠牲にしても、クロス・フロンティア星に戦力を集中させる戦略を選択したのだ。


「アストラ以外は有象無象の集まりだ。他の戦場で多少戦況を損ねたとしても、アストラさえ始末してしまえば、あとでどうとでもなる」


 ドラダイルはそう言って周りを説得し、戦力を集めていた。対する帝国軍のクロス・フロンティア星にある戦力は、ギャラクシー級のクラウザーム・ヴァイロン号1隻のみ。どう考えても過剰な戦力だ。

 しかし、帝国軍にアストラという知将が現れてからというもの、アストラが関わった戦場において連邦軍が勝利をおさめたことはただの一度もないという事実が、銀河連邦軍総司令部を動かしたのだった。


 これだけの数の戦艦が集中する戦は前代未聞だった。

 ドラダイルは、タイフーン・ジェニュイン号のブリッジで、その壮観ともいえる光景を眺めていた。

 そして、同期にして親友でもあるムワルグの精神に、再起不能ともいえる多大なダメージを与えたアストラへの復讐心を燃やしながら、静かに、しかし確かな決意を口にした。


「アストラ。今日という日をお前の最後の日にしてやる」


 ◇


「アストラ様! もう起きてくださいまし。休日だからと言って、遅くまでダラダラと寝ているとダメ人間になってしまいますわよ」


 布団に潜り込んでいた俺の耳にエライアの声が届いた。コンテナ内に「ブオォォォォンン!」と、モーターの駆動音がけたたましく鳴り響いている。


「ううん……なんだエライア、お前……押しかけ女房みたいなことを……」


 まだ半分覚醒していない俺は、布団を剥ぎ取ると寝ぼけまなこでエライアのほうを見た。


「エライア……まず、その掃除機を止めて――グフォッ! ゲホッ! ゲホッ!」


 そこにいたのは、エプロン姿で掃除機をかけているエライア――ではなく、防塵メガネをかけて巨大なバフポリッシャーを手にしたエライアだった。

 俺はコンテナ内……いや、俺の部屋に充満している粉塵をモロに吸い込んだ。口の中がジャリジャリする。


「お、お前、なにをやってるんだ!?」


「え? なにって……見ての通り壁を磨いているのですわ」


 俺の部屋の壁が、一面だけ鏡面に磨かれていた。


 そのとき、エライアが俺の顔をジッと見ながら「あら?」と首をかしげた。

 その視線は、俺の目の横――耳に注がれている。


 しまった。ヘルメットをしていないじゃないか! 俺が選べる選択肢は1つしかない。〝なんとかしてごまかす〟だ。


「あ……。こ、これはだな、子供の頃に事故で……な?」


 俺は苦し紛れの言い訳をしながら、サイドテーブルに置いてあるヘルメットを手に取ると、すぐにかぶった。


「耳のことは、みんなには黙っていて欲しい。ちょっと恥ずかしいからな」


 俺がそう言うと、エライアは俺のヘルメットを撫でまわしながら、にこりと笑った。


「えぇ。わかりましたわ。誰にでも知られたくない秘密のひとつやふたつありますものね。でも、わたくしはその耳も可愛くていいと思いますわよ」


 エライア。お前、良いやつだな。


「ありがとう。助かるよ。っていうか、なんで壁なんか磨いているんだ?」


「だって、この部屋には鏡が無いではありませんか。ちょうど、新しい液体コンパウンドを手に入れたので、試しがてら磨いて鏡を作って差し上げようと思ったのですわ」


「お、お前。その液体コンパウンドを試したかっただけじゃ……」


「そ、そんな事ありませんわ!」


「ちょっとそのコンパウンドの容器を見せてみろ」


「え? ど、どうぞ」


 俺は、エライアが渋々手渡してきた容器をひっくり返し、裏の注意書きを読んだ。やっぱりだ。


「おまえ、『見えにくいところで試してからお使いください』って書いてあるじゃないか!」


「あ、あら? そ、そうでしたか?」


 エライアがそう言ったちょうどそのとき、倉庫内にけたたましいアラートが鳴り響いた。



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