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「ただの経費削減ですが?」〜銀河最弱の補給艦隊が、俺の「在庫管理」で最強になったようです〜  作者: 架木 空
アストラの辺境開拓

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第54話 それぞれの夜

 倉庫内に置いてあるコンテナの1つが、俺の自室だ。俺は、そのコンテナ内に設置してあるベッドに入り、小型デバイスでマンガを読んでいた。


 いまは一人。耳を見られる心配もないので、ヘルメットは外してサイドテーブルに置いてある。

 この世界に転移されてきてから、こんな生活をしてきたが、コンテナ内は意外と快適だった。

 〝すぐ裏手にコンビニがある〟という、地理的な優位性を失ったいま、俺の癒しはこの夜の自由時間だけだ。


「さて、そろそろ寝るか……」


 サイドテーブルのライトを消して、眠りに就こうとした俺の耳に、いつもは聞こえない雑音が聞こえてきた。


「ボエェー!」


 うるさ――


「ボェェェェェー!!」


 くっそ! うるさいぞ!

 あのゾゲロとかいう動物は外で飼えないのか?

 この星の大気のせいだろうか? いや、あのオナラの成分でも死なない生物だ。絶対に外でも大丈夫だろう。明日、ヘルディナンドに外で飼うように言っておこう。


 俺は、枕を耳に押し当てて、布団を頭にかぶった。そういえば、地球でも夜中の道路工事がうるさくて、こうして寝たことがあったな。

 そんなことを思い出していると、コンビニが恋しくなってきた。なんとしてもこの倉庫の近くにコンビニを誘致してやる。


 集落を作るには水や電気――インフラ整備が必要だ。どちらもこの倉庫に来ているので、途中で分岐させれば簡単だろう。大気の問題がクリアできたら、そちらにも着手する必要がある。


 コンビニができるなら、多少経費を使っても構わない。私的な利益のため? いや、違う。これは、俺が平穏に暮らすためだけじゃない。この星の発展のために必要なことだ。


 俺は、自分にそう言い聞かせると、眠りに落ちていった。


 ◇


 エライアは、自室の天蓋があるキングサイズベッドで、ふかふかの高級羽毛布団――ではなく、ネジ入りのゴツゴツした鉄布団の重みを全身で味わいながら、「ふぅ……うぅぅ」と眉をひそめて安らかな(?)寝息を立てていた。

 夏には最高の冷たさだが、その重さはもはや凶器だ。


 そのとき部屋の扉が、スッと静かに開き、1つの人影が音を立てずに侵入してきた。うなされている……もとい、熟睡中のエライアが気づくはずもない。

 影はエライアの顔を覗き込むと、息を殺しきれなくなった。


「はぁ……はぁ」


 おわかりだとは思うが、影の正体はメリア。エライアお付きのメイドだ。


 メイドになる前――軍人時代にあらゆる暗殺術を習得しているメリアにとって、エライアの部屋に忍び込むことなど、鍵をかけることを知らない田舎のおばあちゃんちに侵入するほどに容易(たやす)い。


 メリアは、はぁはぁ言いながらエライアの寝顔を小一時間ほど眺めたあと、両手を合わせて拝んだ。

 そして、鼻から突然出てきた血を押さえつつ、音もなく部屋を出ていくのであった。


 ◇


 銀河連邦軍司令官ドラダイル・ゲイターは、司令部の廊下を歩いて、司令室に向かっていた。

 時間は深夜だが、連邦軍は3交代制で24時間フル稼働のため人は多い。


「ムワルグが恐れているように、確かにあの男は底が知れない。だが、クロス・フロンティア星にはクラウザーム・ヴァイロン号だけしか配備されていないことはわかっている。物量で攻めればひとたまりもないはずだ。しかし――」


 先日、グルザーム・トライアングルに誘い込まれ、あっけなく返り討ちに遭った記憶が彼の脳裏をよぎった。40対1という数で圧倒していたにもかかわらず……だ。

 ドラダイルの額に一筋の汗が流れる。彼は、その記憶を振り払うように、握りこぶしを自らの額にゴツッと当てた。


「半端な数ではダメだ。またあの男の策によって、返り討ちにされる可能性がある。もっと……もっと圧倒的な物量でないと……」


 司令室の扉をくぐり抜けたドラダイルは、司令室にいた部下へ向かって大声をあげた。


「司令官たちに連絡しろ! できる限りの戦力を集めるんだ! いま集められる限りの全勢力でアストラを叩く!」


 額に大粒の汗を滲ませたドラダイルが、ニヤリと口角を吊り上げた。



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