第47話 倉庫の情景と謎のロボット
俺たちは移動式の巨大クレーンがある場所までやってきていた。
「これってどうやって登るんだ?」
「これはたぶんこのスイッチを――」
ザッツがそう言いながら、柱にある上向きの矢印が書いてあるスイッチを押した。
お前また、知りもしないスイッチを無防備に押すなよ……。大丈夫だとは思うが、危ないスイッチかもしれないだろ。
俺がそう思うと同時に、上からまばゆい光が降り注いだ。転移装置だ。
次の瞬間、俺たちは巨大クレーンの操作室にいた。
「すごく広いですわね!」
確かに、無茶苦茶広い。見渡す限り、乱雑に高く積み上げられたコンテナの山が広がっている。そして、なぜか所々に緑色の木々が見える。その光景は、俺に東京タワーの展望台から見た東京の混沌としたビル群を思い出させた。
こっちに転移してきてから、もうそろそろ2ヶ月か……。俺のコンタポイントの有効期限もあと半年くらいだろうな。
俺が故郷への郷愁――もとい、ポイントへの未練に思いを馳せていると、俺の左隣で倉庫を見下ろしていたエライアが、なにかを指差した。
「あ、ほら。あそこを見てください! どなたかいらっしゃいますわ!」
え!? そんな馬鹿な!? エライアが指差した方向――倉庫の左奥を見ると、確かに誰かが歩いていた。いや、人じゃない。
「エライア、あれは2足歩行のロボットじゃないか?」
「ロボットさん!? 本当ですわ! アストラ様! すぐにまいりましょう!」
「待て待て、どんなロボットかわからん。少し様子を見た方がいいだろう」
ロボットを見ながら、そう忠告し終えた俺が左側を見ると、エライアが忽然と姿を消していた。
「あれ? エライア? どこいった?」
「あ! アストラさん! エライア様が下に!」
俺が下を見ると、エライアがロボットの方向に向かって一直線に走っていた。
あんの変人メカオタクめ!
「追いかけるぞ!」
俺たちは急いで下向きの矢印が書いてある壁のスイッチを押して下へ行き、ロボットがいた方向に走りはじめた。
「ザッツ! あのロボットは大丈夫だと思うか!」
「あの形状ならたぶん作業用だから大丈夫だろう。狂っていなければな……」
メリアは、話しながら走っている俺たちのだいぶ前を走っていた。あいつ速いな。
俺がそう思っていると、すぐにメリアが見えなくなった。なんなんだあれ? 速すぎんだろ。
5分くらい走ると、ロボットが見えてきた。想像していたよりデカい。体高約3メートル。エライアとメリアは見えない。どこだ?
俺たちがロボットに近づくと、メリアの声が聞こえた。
「エライア様、もうお放しください! もう! 頬ずりしてないで!」
「だって! こんなロボットはじめて見たんですもの! 肌触りを確かめませんと!」
「肌触りなんて、鉄は全部おんなじです! とーとーいぃぃ!」
エライアは、ロボットの足――ふくらはぎ辺りにしがみついて頬ずりしていた。
メリアが、エライアを引き剥がすふりをしながら、エライアに密着して、恍惚とした表情をしていた。
「お、お前らなにやってるんだ……」
そう呟いた俺の方を、ロボットが振り向いて話しかけてきた。
【アストラ、やっと来ましたね。遅いですよ】
「そ、その声は! お前ブルータスか!?」
【その通り。待ってましたよ。倉庫だけに、そうこう待ちましたよ。うぷぷぷぷっ】
そうだ。コイツ、ギャグのセンスが致命的にないんだった……。
「……お前、なんでここにいるんだよ?」
【え? あなたに私の凄さを思い知らせようと思いまして。倉庫内を整理していたのです。どうです? 整っているでしょう?】
「整ってないわ! 全部やり直せ!」
俺は、ブルータスに指示を出すのであった。




