第46話 倉庫の中と再申請
グゴゴゴゴォォンン!
倉庫の扉が開くと、その奥にはさらに扉があった。
「二重ハッチだな。外気が毒なら当然か」
俺たちは中に入ると、二重ハッチの外側を閉め、内側の扉を開ける。
ガゴッ、ガガゴゴンッゴゴンッ!
老朽化のせいか、建て付けが悪そうな音とともに扉が上へと持ち上がっていくと、次第に倉庫の中が明らかになってきた。
1分前の自分を叱りつけてやりたい。認識が甘かった。「どうせ空っぽだぞ」だって? そんなわけないじゃねぇか! クロス・ヴァーン帝国の人間がやることだぞ! 少し考えればわかるだろ!
床に転がったミサイルに、乱雑に積まれた段ボール。そして適当に置かれた秩序と知性が感じられないコンテナに、粗大ゴミと見まがう、うず高く積まれた家具たち。ようするに、倉庫の中は、物資で溢れかえっていた。
「なんなんだよ! 帝国の奴らの頭の中身はいったいどうなってんだ!」
さらに霞んで見えるほど上にある天井では、照明が広大な倉庫内を隅々まで煌々と照らし続けていた。
「放逐するなら片付けてからだろ! そんで照明は消していけ! 帳簿を確認したときに、やけに電気代が高いと思っていたのは、ここのせいだったんか!?」
俺がそう叫んだそのとき、ザッツがガスマスクを外した。
「ふぅ、室内なら大丈夫だな」
「お前、ちゃんと確認してからにしろよ! 雑過ぎるぞ」
「ん? そうか? まぁ、臭くないから平気だろ?」
ザッツ、お前……無臭の毒だってたくさんあるんだぞ……。
そのザッツの様子を見て、エライアとメリアもガスマスクを外した。エライアの目はいつも以上に輝いている。
もういいや、いちいち気にするのも面倒くさい。俺もガスマスクを外した。
「メリアさん! 見てくださいませ! 見たことないマシンが沢山ありますわよ! えへへへ」
「エライア! 『えへへへ』じゃない! ヨダレ出てんぞ!」
そのエライアの様子を見ていたメリアもヨダレを垂らしていた。
「エライア様のヨダレ!? うへへへ」
変人ばっかりじゃねぇか。通報しよう……。
どこへ? いや、そんなことを考えている場合じゃない……。
「倉庫内の状況を確認しよう。どこか高い所はないか?」
俺が周囲を見回すと、天井付近にある移動式らしき巨大クレーンが目に入った。操作用の小部屋のようなものが設置されている。
「ちょうどいい。あそこへ登ろう」
俺たちは、クレーンの見える方向へ歩きはじめた。俺は歩きながらARディスプレイを起動する。
「アストラ様、歩きヘルメットは危ないですわ」
「そんなこと言っても、いますぐやらないと、来月分の料金が日割りで発生するんだ」
俺はそう説明しながら、重力発生装置の会社『グラビティメーカー』のホームページを開き、解約ページを探す。
「ない! どこだ!?」
ないはずがない。絶対にどこかにあるはずだ! こういうのは、解約しにくくするため、わざと見つけづらいリンクにしてあるんだ。
俺は『マイページ』の中の『お楽しみコンテンツ』の中にある、『重力クイズ』の50/100問目の答え、『正解約1ニュートン』の『正』と『1』の間が少しグレーになっているのを見つけた。隠しリンクだ。
「あ! あったぞ! 悪質過ぎんだろ!」
俺がグレーの『解約』の文字をタップすると、解約ページが表示された。手続きを完了しようとしたとき、ヘルメットから「ピロンッ」と通知音が鳴った。
「なんだ? 解約通知にしては早すぎないか?」
俺が通知を確認すると、購入申請の差し戻し通知だった。
「2週間前に出した、トイレットペーパーの購入申請じゃないか! 今さら差し戻しって……」
申請ルートを確認すると、『皇帝』の直前で、2週間放置された後に差し戻しになっていた。差し戻したのは『フェイス』だ。
中身をよく読むと、差し戻しのコメントが書かれていた。
『使用目的が不記載なため。ちゃんと書け』
トイレットペーパーの使用目的なんて決まってるだろうが! 俺への嫌がらせか!
俺は、使用目的を記載して、再申請するのだった。
「えっと、『ケツを拭くため』と……」




