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「ただの経費削減ですが?」〜銀河最弱の補給艦隊が、俺の「在庫管理」で最強になったようです〜  作者: 架木 空
アストラのマグネティックオペラ

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第44話 移転準備とポイントの危機

 俺は、倉庫の移転準備を粛々と続けていた。

 エライアとメリアが手伝ってくれているのは予想外だったが、非常に助かる。


「もうこの紙で管理するのやめたいよな」


 数年分の出荷管理表が閉じられたキングファイルを、段ボールに詰め終えたとき、俺の視界に不穏なものが飛び込んできた。


「こら、エライア! その手に持っているドライバーは置きなさい! それは分解して梱包する必要はないんだ!」


 エライアは、ビクリと肩を揺らすと、こちらを振り返り、ドライバーをそっと床に置いた。

 そして、目の前にあるミサイルの弾頭とドライバーを、恨めしそうに交互に見たあと、俺に少し引きつった笑顔を向けた。


「……えへっ」


 笑ったってダメなもんはダメなんだ! まったく油断がならないやつだ。


「それにしても、このペースでは絶対に終わらないな。どうしよう……」


「もっと大きな段ボールがあれば良いのですわ。そうすればまとめてどばどばっと入れられますもの」


「おい、エライア。それじゃあ中身が踊って全部ぐちゃぐちゃになるだろ」


「中身が踊らないように、オイルで満たせば良いのですわ!」


「それじゃあ全部オイルでベチョベチョになるじゃ――」


 俺はそう言いかけて、エライアをじっと見た。そうか! それだよ!


「エライア! すごいぞ! 画期的なアイディアだ! さすがエライア様だ!」


「と、突然どうしたんですの!? アストラ様にそう呼ばれると、なんだかゾワッとしますわ!」


「よし! みんな梱包をやめろ! ミサイルはその場に磁石で固定するぞ! それ以外の、動きそうなものも全て磁石で固定しろ!」


 磁石は推定100万個。いくらでも使える。

 ザッツが、ほとんど動かしていなかった手を止め、俺の方を向いた。

 お前、ちゃんと働け。


「おい、アストラ。どうするつもりだ?」


「この倉庫自体を巨大な箱として考えるんだ。クラウザーム・ヴァイロン号で、倉庫ごと運んでいけば良い。多少燃費は悪くなるが、引っ越しを間に合わせるためだ。今回は仕方ない」


 エライアを見つめていたメリアが、最初から動かしていなかった手を止めている雰囲気を出しながらこちらを見た。

 お前も働いてないのバレてるからな。


「さすがアストラさん! 素晴らしい発想です!」


「いや、エライアのおかげさ。それじゃ、一気にやってしまおう」


 俺たちは磁石をそこら中に貼り付けはじめた。


 ◇


 そして引っ越し当日の朝。


「よぉし。これで最後だ」


 俺が、小型機の脇に磁石の箱を置くと、箱が鉄の床材と小型機にピッタリと吸着した。


「ギリギリ間に合ったな。あと10分もすればクラウザーム・ヴァイロン号がやってくるぞ。そうしたら、この倉庫を甲板にくくりつければ、引っ越し準備は完了だ」


 クラウザーム・ヴァイロン号が到着するまでの空き時間で、俺が備品の購入申請をしていると、ヘルディナンドから無線が入った。


『アストラ艦長、到着しました! 倉庫を甲板にくくりつける作業をはじめます。少し揺れますのでご了承ください』


 倉庫の外側に極太のワイヤーを巻きつけ、甲板にくくりつけていく。「ゴウンッ」と重々しい音が鳴り、倉庫内が少し揺れた。


「そういえば、倉庫内も重力発生装置があるんだよな……。金額を見るのが恐ろしい」


 しかし、それも今日でおしまいだ。クロス・フロンティア星の倉庫は、宇宙空間ではなく地上なのだ。向こうに到着したら速攻で重力発生装置の契約を切ってやるぞ。

 クラウザーム・ヴァイロン号が動き出す。さぁ出発だ!


 クロス・フロンティアまでの航路はすこぶる順調だった。

 そういえば、宇宙を飛ぶときは戦闘に行くときだけだったな。こういうのは宇宙旅行みたいで、ちょっと楽しいな。

 俺がそう思っていると、エライアたちが倉庫の床にピクニックシートみたいなものを広げて、プロテインブロックを食べはじめた。


「アストラ様もご一緒にいかがですか?」


「い、いや、遠慮しておこう」


 それ以外に食べ物が欲しいな。俺は倉庫の裏手にあるコンビニへ行こうとして、重大な事実に気がついた。


「なぁ、裏手のノレーソンはどうなったんだ!?」


 その俺の質問に、ザッツが答えた。


「ん? 一緒に連れて行くわけにはいかないから、切り離してきたぞ」


「なんだと!? 向こうにはコンビニはあるのか!?」


「さぁ?」


 くそっ! 完全に盲点だった! 俺が必死に貯めた900ポイントはどうなる!?

 俺は、向こうについたらすぐにコンビニを探すことにするのであった。



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