第42話 やっと見つけた契約書とエライアの新たな扉
「こ、これだ! やっと見つけたぞ!」
ファイルを探し始めて約2時間後。俺はようやく、最新の重力発生装置契約書を見つけ出した。
俺が探している間にメリアもどこかへ行ってしま――
「って……お前らなにやってんだよ!」
エライアの隣には、無惨に分解されて、前半分がなくなった小型機が置いてあった。取り外されたパーツは、種類ごとに分けられ整然と並べられていた。
エライアはそのパーツをうっとりと眺めていた。そしてメリアは、そのエライアを恍惚とした表情で、ハァハァと息を荒くしながら見つめていた。
「おい! エライア! お前何やってるんだよ! この小型機がいくらすると思っているんだ!」
「あら、アストラ様。申し訳ございません。この子がどうしても解体してほしいというものですからぁ」
「嘘つけ! 小型機は喋らないんだよ! お前、新たな扉を開けはじめやがったな! 普通は、もっと小さい機械の分解とかやり始めるんだよ! 宇宙船からはじめるやつがあるか!」
俺がそう怒鳴ったとき、メリアが俺をジロリと睨みつけた。
「ねぇ、アストラさん。私のエライア様にそのような言葉遣いはないんじゃないかしら? エライア様は、帝国の姫よ。常人とは違うの。スケールが大きいのよ」
くっ。帝国の姫だからとかじゃないだろ! ただエライアの変人スケールがでかすぎるだけだ!
俺がそう思ったとき、ヘルメットからピロンッという音が聞こえた。メールの通知音だ。
ARディスプレイを起動してメーラーを開くと、そこに書いてあったのは、振込完了通知だった。
「お、エライア。オークションの売上金が振り込まれたらしいぞ。ノヴァオクに手数料として10パーセント――236億8000万ヌール引かれて、2131億2000万ヌールだ。全部お前のもんだぞ。どこに振り込めばいいか教えてくれ」
「え? 全部差し上げますわ」
「え?」
「わたくしには使い道がございませんもの。国民のためになるような使い方をアストラ様が考えてくださいませ」
「エライア……。お前、最高にいいやつだな。本心でそんなこといえるやつはなかなかいないぞ。ノブレス・オブリージュってやつだな」
「のぶれす、おぶり……?」
エライアは俺の言葉を聞いて、首を捻った。そりゃそうだ。そんな言葉知っているわけないよな。
「いや、わからないならいいんだ。ところで、メリア。さっき探していた重力発生装置の契約書を見つけたぞ」
「結構かかりましたね。結局どのフォルダが最新だったんですか」
「結局な、どれも最新じゃなかったんだよ。最新はな、完全にノーマークだった〝0000〟ってフォルダの中を辿っていって20階層くらい潜っていった中にありやがった。最初のフォルダ名が意味不明なうえに、20階層ってイカれてんだろ?」
「で、なんて書いてあったんですか?」
「戦艦の広さ1平米あたり月に10万ヌールだそうだ。クラウザーム・ヴァイロン号の延床面積が、東京ドームで約10個分、大体50万平米だから月に500億ヌールってことらしいぞ」
「〝東京ドーム〟がなんだかわかりませんが、それならしかたないですね」
東京ドームなんて知っているわけないよな。さっきから何を言っているんだ俺は。
しかし、しかたなくなんてない。もっと削減できるはずだ。なにか、なにか手を考えなくては。
俺がそう思っていたとき、倉庫の入口からザッツが入ってきた。バカでかい段ボールを抱えている。
「ザッツ、すごい荷物だな。手伝うぞ」
「あ、ザッツ兄ちゃん、私も手伝うわよ!」
「お、ありがとう。もっと沢山あるんだ。扉の外に置いてあるから、そっちを頼む」
俺とメリアが扉の外を覗くと、そこにはおびただしい数の段ボールが積まれていた。
「なんだこの量は? すごいな」
俺が箱を持ち上げようとすると、ピクリとも動かなかった。
「ザッツ……。これ、無茶苦茶重いじゃないか!」
「ん? あぁ、それは重いんじゃなくて、床に引っ付いてるんだ」
メリアが力いっぱいに箱を持ち上げると、突然箱が軽くなったかのように、箱を持ったままメリアが後ろに飛んでいき、そのままの勢いで後ろの壁に背中から突っ込んだ。
「うわぁぁ!」
ガシャァァン!
「おい、ザッツ……。これ、なにが入ってるんだ?」
「磁石だよ。工具を壁に貼り付けようと思ってな」
「こんな大量に必要なくないか?」
俺のその言葉を聞いたザッツは、悪びれる様子もなく、笑いながら説明した。
「1個だと思ってカートに入れたら、1パレットだったんだよ。わはは。誤発注ってやつだ! しかたねぇよなぁ、まったく」
「他人事みたいに言うんじゃねぇ! しかたなくねぇんだよ!」
みんなして俺の節約を無駄にしやがって……。
そのとき、壁にぶち当たった衝撃で思い出したのか、メリアが俺に向かって口を開いた。
「あ、忘れてた……皇帝が呼んでいたわよ」
「もっと早く言えよ!」
俺は走り始めるのだった。




