第35話 トライアングルの勘違いと恒星兵器
俺、アストラ・アエットこと星野明日虎率いるクラウザーム・ヴァイロン号は、恒星グルザームβへ向かって真っすぐ突き進んでいた。
なんだか、ちょっぴり揺れが激しくなっていた。
「グルザームβまで、およそ10分で到着します」
そのレーダーオペレーターの報告を聞いたヘルディナンドが、指示を出した。
「よし! それでは少しずつ逆噴射を開始しろ!」
……なるほど。少しずつ速度を落として、急ブレーキを避けることで燃費を節約する計画か。お前、成長したな。だがヘルディナンド、まだ甘い。
「ヘルディナンド。まだ逆噴射は早い。ギリギリまでこのまま進んで、直前になってから全力で逆噴射しろ」
「は? よ、よろしいのですか? ね、燃費が悪くなりますよ?」
「よく考えろ。俺たちが向かっているのは恒星だぞ? できる限り早く到着して、恒星フレアでエネルギー補給すればいい。状況によって、取るべき手段を変えるんだ。〝回っているものは恒星でも使え〟ってことだ」
「あぁ! なるほど! 感服いたしました! 確かに昔からそう言いますもんね! こういう時に使うとピッタリな諺ですなぁ」
え、マジ? そんな諺あるの? 所変わればというやつだな。俺がそんなことを考えているとき、レーダーオペレーターが声を上げた。
「報告します。およそ40隻の敵艦ですが、グルザーム・トライアングルの外側で待機中。こちらの出方を窺っている模様です」
「ん? なぜ入ってこないんだ?」
そう疑問を口にした俺に、ヘルディナンドが目を輝かせながら言った。
「またまた、ご冗談がお上手ですな。こんな危険な領域に、軽々しく足を踏み入れられる者はおりませんよ。アストラ艦長のように、この領域からの脱出方法を考えつく者などそうはおりませんからね」
危険? いまコイツ〝危険〟って言ったよな? 初耳なんですけど!?
「と、ところで、俺は全く危険だとは思っていないが、ヘルディナンドが考えている危険度は、どの程度だ?」
「そうですねぇ、十中八九木っ端微塵になるくらいですかね?」
何だよそれ! もっと早く言えよ! 夏の大三角形的なヤツかと思ってたらバミューダトライアングルじゃねぇか! もう入っちゃってんだよ!
何だよ脱出方法って!? なんにも思いついてないんですけどぉぉぉ!?
……ダメだ。俺が震えているところとか、部下に見せられない。そうだ、カマをかけよう。
「な、なるほど。ちなみに俺が考えている脱出方法って、なんだと思う?」
「脱出方法ですか? ……さっぱり思いつきませんね! わはははは! で? どのような計画ですか?」
「ま、まだ秘密だ。楽しみは後に取っておいた方がいいだろ?」
「確かにそうですね! いやぁ楽しみです!」
くっそ! 期待値が上がりすぎた!
ヘルディナンドに聞いた俺がバカだった。
とりあえず恒星に到着して、プラズマ・ウェーブ・キャノンとやらを撃つまでに考えよう。
俺がそんなことを考えているあいだに、クラウザーム・ヴァイロン号の逆噴射が始まった。グルザームβに到着だ。
ヘルディナンドが指示を出す。
「エネルギー補給を開始しろ! アストラ艦長、プラズマ・ウェーブ・キャノンはすぐに発射しますか?」
「いや、まだだ。エネルギー補給が終わるまで待て」
「アイアイ御意!」
……〝アイアイ御意〟ってなんだよ。俺がアイアイみたいに聞こえるじゃないか。南の島には住んでないぞ。
さて、エネルギー補給をしているあいだに、どうするか考えるぞ!
そう考えた俺が、脳をフル回転させようとした、そのときだった。
「エネルギー補給完了しました!」
早すぎるだろ! 考える時間をくれ! 仕方ない。とりあえずプラズマ・ウェーブ・キャノンを威嚇射撃しよう。当てたら人が死ぬしな。
「プラズマ・ウェーブ・キャノンを発射しろ! 目標は敵の中で一番大きな戦艦だ! 1発目は当てるな! かすめるように威嚇するんだ!」
「「「アイアイサー!」」」
「時空フィールド展開!」
「恒星フレア放射方向解析開始!」
「位相速度同期開始!」
「目標設定完了!」
ブリッジ内の皆がわけのわからない用語を叫ぶと、クラウザーム・ヴァイロン号の先端にある砲身が青白く強い光を放ちはじめた。




