第31話 小型機の中で味わうネジの味
「よし。見えてきたぞ」
倉庫を出発してから15分ほど飛んだだろうか。前方にクラウザーム・ヴァイロンが見えてきた。
もう間もなく到着だ。到着したらすぐにブリッジに行き、現状の確認と今後の方針を決めなくてはならない。
「やれやれ、忙しくなるな……」
俺がそうつぶやいたとき、唐突に後ろから音が聞こえた。
パリッ。
ポリッ。
驚いた俺が、首がねじ切れそうな勢いで後ろを振り返ると、そこにはエライアとメリアが並んで、ちょこんと(べちょんと?)座っていた。
もちろん、ふたりともオイルまみれのままだ。くそっ。機内がベチョベチョじゃないか、掃除が大変になるじゃないか。最悪シートも交換だぞ!? 修理代はどの部署で落とすんだよ!
「見えてきましたわね! メリアさん」
「そうですね。エライア様」
「な、なんでお前らが乗っているんだよ!」
「なんでって、アストラ様がいけないんですのよ? わたくし達が乗っている小型機にいきなり乗り込んできて、急発進してしまったのですわ。パリッ」
俺は自分の目を疑った。エライアが口に入れたもの……。俺の見間違いでなければ、おそらく〝ネジ〟だ。
「そうだそうだ! このスケコマシめ! ねぇエライア様。ポリッ」
メリアも同じく〝ネジ〟のようなものを口に放り込んでいる。
「いや、まさか乗り込んでいるとは思わんだろ! っていうか、なに食べてるんだよ」
「ネジですよ。グロウムさんに頼んで、鉄を食べられるように変換する装置を作ってもらったのですわ! アストラ様も食べますか?」
グロウム? あぁ、あのメカニックか。っていうか、完全に科学力の無駄遣いじゃねぇか。もっとまともなものを開発しろよ!
俺は好奇心に負けた。
「あ、じゃあ、1つだけもらおうかな?」
俺は、エライアからもらったネジを、一口かじってみる。
ポリッ!
「あ、意外と固くない――ぐふっ!」
完全に鉄の味しかしないし、食感は蟹の甲羅だ。
こんなもん食えるかぁ! なんでこいつら美味しそうに食べてるんだよ!? この銀河のやつらの味覚はどうなってるんだ!
今度グロウムに味付けというものを教えてやろう。
「な、なかなか個性的な味だな……」
俺達が乗った小型機は、クラウザーム・ヴァイロン号のハッチの中に滑り込んでいった。
「もう到着しちまったじゃないか……。エライア、お前たちだけで倉庫に帰れ」
「イヤですわ! せっかく主力艦クラウザーム・ヴァイロン号にきたのですから、ついでに見学してから帰りますわ!」
「エライア様! 私がお守りします! 存分に見学してから帰りましょう!」
おい、ふざけんな! 帝国の姫を怪我させたなんて事態になったら、始末書ではすまないだろうが! 最悪、物理的に首が飛ぶんだよ!
「これから戦場に行くんだぞ。危ないんだ! お前に何かあったら、俺はどうしたらいいんだ! よく考えろ!」
俺が叱っているというのに、反省するでもなく、エライアは顔を赤くした。また熱でも出たか? ネジなんか食べるからだ。
「そ、そのようなことを急に言われましてもぉ……。わたくし、困ってしまいますわ」
「貴様! 私のエライア様に、また思わせぶりなことを――」
そのとき小型機のハッチが開いた。ハッチの外にはヘルディナンドが立っていた。
出迎えとかいらないんだよ。時間の無駄だろう。もっと建設的なことに時間を使えよ。
小型機の中を覗き込んだヘルディナンドが、エライアの姿を見て目を見開いた。まぁそういう反応になるよな。
「エ、エライア様まで乗っていたのですか!?」
「あぁ。ちょっとした手違いでな。エライア達は艦内を見学したいそうだ。ブリッジへ着いたら、手が空いているものを案内役として配置してくれ。俺達はすぐに行動を開始するぞ! ブリッジに向かいながら状況を説明してくれ。必ず無傷で撃退するんだ!」
そうしないと、俺が処刑される未来が待っている……。
「は! なんという頼もしいお言葉! すでに勝ちまでの手順はその頭脳の中で出来上がっているということですね!」
んなわけあるか!
俺達はブリッジへと向かって歩きはじめるのであった。




