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「ただの経費削減ですが?」〜銀河最弱の補給艦隊が、俺の「在庫管理」で最強になったようです〜  作者: 架木 空
姫とメイドとアストラのトライアングル

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第29話 エライアの介抱とメリアの回復

 エライアの奇行には慣れたつもりだった俺は、自分の認識の甘さとエライアの底知れぬ変人ぶりを思い知らされていた。

 エライアに介抱を任せたこと自体が間違いだったのかもしれない。すこーしだけ目を離した隙にこんなことになっていようとは……。


「エライア。お前なにやってるんだよ。もしかして、アーユルヴェーダってやつか?」


「アーユル……? それはいったいなんですの? 食べ物ですの?」


「…………いや、なんでもない」


 エライアは、気絶しているメイドに『エライア特注ザッツ謹製鉄布団』を掛けて(乗せて?)いた。そして、そのメイドの頭には、廃オイルに漬け込んだ雑巾を絞りもせずに乗せてある。

 エライア。その布団(?)はどこからどうやって運んできたんだ?


 普通の人間は水につけて絞ったタオルを使うんだぞ。そのメイド、額から伝ったオイルが床に溜まり、もう背中側が全部廃オイルでべっちょべちょになってるじゃねぇか。


 まぁ、エライアの知り合いらしいから放っておこう。

 俺は見て見ぬふりをしながら、アンドロイドの契約書のチェックを継続した。


…………。


 20分ほど経っただろうか、俺が目を離している間に、エライアはどこかへ行ってしまったようだ。


 メイドは、エライアが残していった廃オイルまみれの雑巾を額に乗せたまま横たわっている。


(可哀想だから、せめて雑巾だけはどかしてやろう)


 俺が雑巾をつまんでどかしたとき、そのメイドの眼球が、瞼の中で動くのがわかった。


 ◇


「う、うーん……」


 私は、額からドロッとした生温かい液体が流れているのを感じながら、気を取り戻した。

 この感触は知っている。戦場での日々で何度も浴びた……。自分がこの状況に置かれる日がくるとは思ってもみなかった。


 この粘度、この鉄の匂い、間違うはずもない。紛れもなく()だ。

 もう背中側全体が、私が流した血でぐっしょりと濡れている。身体が冷たい、動かせない。頭も痛い。

 この出血量では、もう長くはないだろう……。

 よく覚えていないが、アストラにやられたのか?


 そばにアストラが立っているのに気付くと、その憎き男に目を向けた。


 ◇


「う、うーん……」


 あ、起きた。良かった、無事だな。

 俺がそう思ったとき、メイドの瞳がこちらを向いた。


「お、お前がやったのか?」


 え? 俺がやった? あぁ、雑巾のことか。


「あぁ、もう楽にしてやろうと思ってな」


「ら、楽にですって!? どうやって!?」


 どうやって? そんなの〝つまんで〟に決まっているじゃないか。


「それは、もちろんこうやって、親指と人差し指で……」


 俺が、親指と人差し指をくっつけて、つまむ動作をしながら説明をしようとしたとき、メイドの顔がみるみる血の気を失っていった。


「くっ! デコピンか、かなわないな……。もう、とどめを刺せ」


 ん? デコピン? とどめ? なんか急に変なこと言い始めたんだけど!? 助けてくれエライア! お前の知り合いだろ!

 メイドは、無言でいる俺を見ながら、重々しく口を開いた。


「私はもう長くない……。それくらい自分でわかる」


 もう長くない? 重大な病気を抱えていて自暴自棄になったパターンか……。可哀想に。なんて声をかけたらいいか……。


「それはお気の毒に――」


 俺がそう言いかけたとき、エライアの声が聞こえた。


「メリアさん! 目が覚めたのですね! お菓子を買ってきましたわよ! これを食べて元気を出してくださいませ!」


 エライアがコンビニで買ってきた、トイレの芳香剤の匂いがするプロテインブロックのお菓子を、メイドの口にグイグイ押し込む。

 メイドは、急に恍惚とした表情になると、元気そうに「エライア様ぁぁぁ!」と叫ぶのであった。





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