051
2021年から来た俺にとって、マスクは必需品だ。
二重にマスクをつけて、煙をやり過ごす事を考えた。
煙が晴れても、俺と葵は堂々と立っていた。
「え、これって?」葵は、驚いていた。
「落ち着け。燃えているわけではない、ただの煙だ。
この煙は、一過性が無い。数秒も耐えれば……自然消滅する。
煙の効果では無く、匂いを嗅いだ人間に効果があると言うことだろう……な」
「お前……」口惜しそうに生徒会長が見ていた。
「この煙は、さながら人間版のマタタビと言うことだろうか」
煙の効果が無い俺と葵を見て、生徒会長が怯んでいた。
「どうして……」
「葵、望月を頼む」
「うん」倒れている望月に、寄り添う葵。
そのまま、葵が望月を起こして肩を貸して立ち上がった。
一方の俺は、怯える生徒会長を睨んでいた。
「猫魔術の対策は万全だ。
何をしようが、俺には猫魔術が効かない。
俺は猫魔術を、徹底的に調べ上げたのだから。
何をしても無駄だよ、お前は既に詰んでいる」
「ははっ……詰んでいるか」
元気なく笑いながら、その場で崩れ落ちた生徒会長。
分厚い本が、彼の腕から離れて落ちていく。
俺はそれでも、生徒会長を見下ろしていた。
「お前は、学原だっけ?」
「ああ、そうだ」
「やっと名前を思い出した。そうか、そうか……」
「なぜ、こんなことをした?」
「学原よ、お前は永遠の若さに興味は無いか?」
「永遠の若さ?なにを言っている……まさか」
「『猫魔術』の中に、それがある。
条件は、満月のこの日……彼女にこの秘術を使うと永遠の若さが手に入る」
生徒会長がそう言うと、まるで魔法のように地面に落ちた分厚い本がペラペラと開いていく。
そして、あるページで止まった。
そこには、『時間停滞の渦』と書かれた魔術のページが見えていた。
本を拾い、俺はこのページを見て驚いた。
「これって……」
「世界は時間の渦でつながっている。
世界は時間に支配されて、渦のように永続的に動く。
その渦を止める魔術が……永遠の若さだ」
「永遠の若さ、ファンタジーのような世界だな」
俺は、呆れて生徒会長を見下ろしていた。
「それは、そこにいる望月が望んだことか?」
「永遠の若さを、望まない女はいない……」
「本当に望んだのか、彼女は?」
俺は再び、生徒会長に問いただした。
生徒会長は、俺の迫力に押されておののいていた。
俺の後ろで、一人の女が立ち上がっていた。
「望んでいません」
葵に肩を借りるように、ヨロヨロと立ち上がった望月 香美だった。




