049
バスの行き先、竜神の磯……それは市街地からかなり離れていた。
運賃が高額なこの場所は、鳴本市の隣にある島に渡っていく。
この鳴本市は、二つの島で成り立っていた。
一つは大きな本土、もう一つは鳴本大橋で繋がれた離れ小島だ。
小さな島は、三つぐらいの島が陸続きになっている島。
そこもまた、鳴本市内だ。
だが離れ小島の方は観光が主な産業で、住宅もほとんど無い場所だ。
「本当に来ちまった」
空は、夕日が沈んで暗くなっていた。
代わりに外には、満月が登っていた。
海も見えるこの場所は、潮の香りが漂ってきた。
「デートしては、ある意味最適な場所ね」一緒にいるのは、私服の葵だ。
「だけど、監視は続けるぞ」
「うん」少し離れたところに、蛭地と望月がいた。
二人は同じ制服を着たカップルで、周りには観光客がまばらにいた。
カモフラージュするモノは少ないが、まだ俺たちに生徒会長は気づいていない。
望月と一緒にいるので、気にならないのかもしれない。
「動いたね」
すぐに、蛭地と望月が動いていた。
だけど、向かったのは海岸の方では無い。
県道の道路を横切り、細い山道のような所を歩いていた。
登り坂になった山道は、細くて歩きにくい道だ。
雑木林の茂みが、行く手を阻む。
それでも、望月は生徒会長と何食わぬ顔で歩いていた。
「なんだ、ここは?」
「凄い場所ね、初めて来たわ」
「ああ、マジで普通じゃ無いな。
こんな場所に、生徒会長が何かを隠していたとは。見ろ!」
「猫の髭……」うっすらとした茂みに、髭が木にぐるぐる巻きにされていた。
「猫魔術だと、猫の髭は……」
「魔力の道しるべでしょ!アオイのガトの髭も」
「ああ、間違いなくここに……」
そんな俺たちが、遠くの視界に捉えた生徒会長の姿。
間もなくして、生徒会長と望月の二人の前に自然豊かな藪の中に一件の不自然なプレハブ小屋が見えた。
(ここか……)
生徒会長は、周囲を見回していた。
こんな人気の無い場所でも、周囲を警戒していた生徒会長。
慌てて俺は、葵とそばの茂みに隠れた。
俺たちと距離は、それほど離れていない。
後ろを振り返り、生徒会長は俺たちの存在に気づかない。
鬱蒼とする茂みと、夕日が沈む暗さで俺たちが見えない。
そのまま、望月と一緒にプレハブの小屋に入っていく。
プレハブ小屋の戸を、急いで閉めた。
「よしいくぞ。俺が前に出るから、葵は電話を」
「うん」
「後は、手はず通りに……」
「任せて」俺は茂みの奥から、プレハブの小屋に一気に駆け寄った。
それと同時に、葵は携帯電話をかけていた。
かけた瞬間、プレハブの小屋から音が聞こえた。
そう、それは望月にかけた携帯電話だった。
携帯電話をかけた瞬間に、プレハブ内で大きなブザー音が鳴った。
「おい、このうるさい音は何だ?」
プレハブの中から、声が聞こえた。生徒会長の声だ。
これは、望月の持っている防犯ブザーの音だ。
ブザーの音が聞こえた瞬間に、俺はプレハブのドアを開けた。
そして、俺は叫んだ。
「お前が、やったんだな!」と。




