047
「ふざけるなよ、アイツ!」
俺は憤っていた。
生徒会長の前で、冷静でいられるのがやっとだった。
生徒会長から別れ、裏山に来た俺はとても怒っていた。
静かな裏山に、俺の怒り声が響いていた。
「荒れておるな」ベンチの上には、赤ん坊がハイハイしていた。
「当たり前だ、なんで望月はあんな嫌みなヤツが好きなんだ?
俺の事を馬鹿にしているし……いやそれは悔しいけどまだ許せる。
でもアレだけは許せない。唐園の目の前で、彼氏宣言とかウザすぎる」
「そうか……」
「まだムカムカするだろうが、話をしよう」
俺はベンチのそばに座った。
赤ん坊は、ベンチの上から俺を見上げた。
俺も怒りを押し殺して、赤ん坊の前に立っていた。
「一つ分かったことがある」
「なんだ?」
「記憶を失ったことだ。あれは唐園も俺も……お前にも起きている。
三人に共通して言えることは、蛭地生徒会長だ」
「彼が?」
「それは間違いない。
おそらく、記憶を失った22日に何かが起った。
起ったことで、記憶を失った。その記憶を、蛭地は消したかったのでは無いか?」
「でも、何でそんなことができるの?」
「それは、分からないが……キーワードは見つけた。
『猫魔術』という言葉だ。本まである」
蛭地が持っていた、怪しい本。
この本の中身を、俺は詳しく見ることはできなかった。
「何かしら無いか?」
「なにそれ、初めて聞くわ」
「俺もだ。『猫魔術』ってなんだ?」
分からないし、普通では無い単語だ。
だけど、俺は大人だ。ここで諦めることだけは、したくない。
それに、相手の素性は分からなくても行動はしないといけない。
「あのさ、香美」
「ん?」
「お前、携帯を持っていなかったか?」
「ああ、あるけど……でもこの携帯電話」
取り出したのは、黒い折りたたみ式の携帯電話。
赤ん坊香美が言うには、これは自分の携帯電話だそうだ。
「このスマホには、何もデータが無いぞ」
「通話はできるのか?」
「できるけど、連絡先は分からない。
元々あたしは、電話帳から電話をしていたりしていたし」
「問題ないよ、貸して」
俺はそのまま、赤ん坊から携帯電話を取り上げた。
赤ん坊は、難しい顔で俺の方を見ていた。
赤ん坊に視線を落とすように、俺はスマホを下げた。
「どうするつもりだ?
連絡するにも、誰にもつながらない。電話帳も消えた携帯電話で」
「別に電話帳が無くても、電話だけならできる」
「誰にかけるんだ?」
「まあ、見てろって。ちょっとお前に、謝っておくが」
「なぜ、謝る?」
「いいから、俺がかける相手は……つながった」
携帯電話を耳に当てた。
そのまま、俺は一人の電話に電話をかけていた。
この判断が正しければ、アイツにちゃんとつながるはずだ。
「もしもし、どちら様ですか?」そう、つながった相手こそJK望月だった。
「お前に協力して欲しいことがある。
それは、俺はお前を助ける事につながるのだから」
俺は、望月と初めて電話で会話をしていた。




