045
この学校の生徒会長は、どこからどう見ても陽キャラだ。
蛭地生徒会長は、望月の公認彼氏。
女子の人気が圧倒的に高く、その人気を背景に生徒会長になった男だ。
相変わらず、男で香水をつけていた。
「ただいま」驚くほど、丁寧に話しかけてきた蛭地生徒会長。
「生徒会長、お疲れ様です」
生徒会のメンバーである唐園も、深々と頭を下げていた。
当然、蛭地生徒会長の顔が俺に向けられた。
「君は?」
「D組の学原 涼真です」
「そうか、学原君か」
生徒会長は、まるで初めましてと言わんばかりに顔を見せていた。
実際初めてでは無いが、俺は陰キャラだ。
向こうに覚えられていなくても、無理もない。
「君はなんで、ここに来たんだい?」
「久しぶりにこっちに来たら、迷ってしまって。
唐園が偶然いたから……彼女を追いかけて」
俺は、咄嗟に嘘をついた。
まさかここで生徒会長を調べているとかは、目の前で堂々と言えない。
唐園も、俺の言葉にアイコンタクトをしていた。
「うん、まったく学原君ったら……」
「そうか、それは災難だね」
穏やかな顔で、生徒会長は部屋の中に入った。
そのまま、自分の椅子に慣れた様子で座っていた生徒会長。無論上座だ。
「まあ、君も座りなよ」
「いえ、俺はそろそろ……帰ろうかと」
「座りなよ」
生徒会長の言葉に、俺は不思議な何かを感じた。
目を細めて、笑っていた生徒会長。
同じ年にも関わらず、雰囲気は大人をも凌駕する落ち着き。
まるで、現代の上司と会話をしているかのような感覚に陥った。
「うん、座って……学原君」
なぜか唐園も、俺に対して促してきた。
生徒会長の、左隣に座り俺に指さす真正面の席。
奥にある机をくっつけた、唐園。六人の生徒会役人の席が、そこにはあった。
「わ、わかりました」
俺はおとなしく、席に着いていた。
(だけど、この空気はなんか……イヤだ)
一番気になるのは、唐園の目だ。
死んだ魚のような目で、眼鏡越しに俺を見ていた。
「さて、これから君に質問をさせてもらうよ」
いきなり、不敵な笑みを浮かべて俺を見てきた。
いつの間にか、ドアが閉まっていた。
「質問って、俺は普通の学生で……」
「なに、難しいことはしない。
ただ、お話だけだよ。まあ嘘をついたら……君は大変なことになるかもね」
「そうです、生徒会長に絶対嘘はいけません」
唐園が、抑揚の無い声で言い返してきた。
やはり、この生徒会長は何かがおかしい。
俺の蘇った記憶で、危険な人間だと判断できた。
(さて、どうするか?)
俺はそういいながら、生徒会長との会話を始めていた。




