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JK望月 香美の渦  作者: 葉月 優奈
四話:俺は望月を守ってもいいのだろうか
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俺は唐園と一緒に歩いていた。

土曜昼間の廊下は、人がいなくなっていた。

静かな廊下を、二人で歩く。足音だけが、静かな廊下に響く。

ここは、普段余り歩くことがない特別教室棟の廊下だ。


「あなたは、あそこを調べたいのね」

「ああ、一つはっきりしたことがある」

「何?」眼鏡越しに聞いてくる唐園。


「蛭地生徒会長は、どんな人だ?」

「普通の人よ」

「それは唐園の事だろう」

葵の説明もあって、昨日のことを思い出した。

思い出したけど、まだ確信はどこにも無い。


「そこで、蛭地生徒会長を調べたいんだ。

唐園は、蛭地生徒会長の事を一番詳しいだろ」

「うん」唐園は肯定した。

「でも、正直困っているんだ」

「何を?」聞き返す唐園。


(危険なことに唐園を、巻き込むわけにはいかない)

俺に心を開いてくれた人は、大事にしたかった。

高校時代は、俺は聖也以外友達がいなかった。

暗くて、陰キャラと俺は言われていた。


二周目の高校生で俺は、変わることができた。

望月の事を救う、その目的は変わらない。

だけど、鬱積した現実を変えるヒントをここで得られた。

もう、俺はどこからどう見ても陰キャラじゃ無い。


特別教室棟の渡り廊下を渡ると、間もなく目的の場所が近づいてきた。

「君は、大事な人だ。君を、危険なことに巻き込みたくない。

それに、君は記憶を失うんだろう。生徒会長室に入ると」

「うん、でも……大丈夫。

普通に入っているときは問題ない。ただ……」

「ただ?」

「彼が来た時に……変わるの」

「彼……生徒会長か?」

俺の言葉に、唐園は頷いた。


恋する唐園は、一途に生徒会長を愛していた。

今でも変わらないが、ほんわかして記憶が無い……ということでもなさそうだ。

俺の記憶喪失と、どこまで関係があるか分からないが気にとめておこう。


二人で歩いていると間もなくして、生徒会室の前に来ていた。

「生徒会長は?」

「いない」

「そうか、じゃあ、お邪魔する」

唐園が先導して、俺は生徒会室に入った。



……初めて入った生徒会室は、六畳の狭い部屋だ。

真ん中に机と椅子。それから書類の棚が置かれていた。

普通の教室を改造しただけなので、置いてあるモノはあまり見栄えするモノがない。

机も椅子も同じだし、棚も職員室にあったお古だ。


唯一違いがあるとすれば、専用のパソコンだろうか。

この時代(2004年)に、個別パソコンがあるのは貴重と俺は勝手に思っていた。


「何を調べるの?」

「彼のことだ」

「うん」

俺は唐園に『本当のこと』を言わずに、生徒会室の棚を調べていた。

棚の中には、生徒会の書類が綺麗に並べてあった。

当然、そこの調査はすぐに打ち切った。


「唐園、聞きたいことがあるけど……」

周囲を見回しながら、俺が声をかけた。


「何?」

「生徒会長は、昼はここで食べるのか?」

「うん、でも……今日は帰って……あれ?」

唐園が何かを、見つけた。


それは、隅に置かれた通学カバンだ。

だけど、唐園はすぐにそれが誰のか分かった。


「幸賀のカバンね」

「マジ?」俺は、慌てていた。


蛭地生徒会長が、どんな人物かまだ分からない。

こちらの動きを、悟らせるわけにはいかない。

向こうは、俺の事をおそらく知っているだろう。

でも、俺は空いている鞄の前にしゃがみ込んだ。


「こ、これ……」

通学カバンを勝手に開けた俺は、思わず取った一冊の本に目を奪われた。


「なに、その本?」

「『猫魔術・入門』?」

訳の分からない単語の分厚い本が、カバンから出てきた。

茶色のハードカバーで辞書のように重い本は、右手だけで持ってもかなり重い。


「あっ、廊下から足音が」

「くそっ」すぐに、本をカバンの中に突っ込んだ。

バレないように、俺はカバンを締めてカモフラージュをしていた。

狭いこの部屋に、隠れる場所はない。俺は覚悟を決めて向き合うことにした。

間もなくして、やってくるのは一人の男子生徒。


「あっ、生徒会長」

生徒会室のドアには、生徒会長……『蛭地 幸賀』が姿を見せていた。



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