033
屋上で、冷たい風が吹いていた。
昼休みでも、この寒さだと俺と唐園の二人しかいない。
だけど、唐園は興奮していて顔が少し赤い。
俺から聞かされた言葉に、混乱していた。
「どうして、どうして、そんなことが分かるの?」
「本人に、意志確認をしたからな」
俺が確認できたのは、赤ん坊の香美からだ。
赤ん坊であっても同じ香美に、さっき裏山で聞いた。
生徒会長の事が、好きかというかを。
(JK)望月は、生徒会長の話をしていても、どこか冷めているように見えた。
(赤ん坊)望月は、「ぼんやり好き」という答えが返ってきた。
だけど、唐園の熱量は望月と違う。
本当に好きだと、感情が言葉に溢れていた。
取り繕うとしても、取り繕えない。彼女の気持ちは、とても正直だった。
「だから、チャンスはまだある」
「信じていいの?」
「信じろ!」俺ははっきり言い放った。
唐園は、俺の言葉を聞いてはっきりと表情が明るくなった。
明るくなったが、同時に俺の顔を疑惑の目で見てきた。
「でも、どうして私にそんなことを話すの?」
「はっきり言って、喧嘩をして欲しくない」
「喧嘩?カガミンと?」
「望月とも、葵とも。三人とも、仲良くはして欲しいかな。
それに、今の君は若いんだ。失敗しても、後悔しては駄目だ!」
「学原君……変なの」
「え?」
俺は、いつの間にか唐園の手を離していた。
唐園は、じっと俺の顔を見ていた。
「それに唐園だって、よく見たらかわいいよ」
「え?そうかな?」
メガネをかけた唐園は、俺の言葉でも照れていた。
陰キャラの唐園は、あまり言われたことが無いのだろう。
落ち着いた雰囲気で小柄の唐園は、奥ゆかしくもあり、かわいくも見えた。
巻き髪ツインテールが、かわいらしさに拍車をかけていた。
「くそっ、俺もモテモテになりたいぞ!」
「学原君って、とにかく意外な人」
「意外って、どういう意味だ?」
「なんというか、落ち着いているというか、大人びているというか……」
唐園が、一瞬俺の本質を鋭く突いてきた。
大人びていると言うより、中身がおっさんだ。
三十四年、二倍長生きしているのだから当たり前だ。
「大人の言うことは、素直に聞くもんだ」
「高校生でしょ、学原君」
「あ」言った俺は、はにかんで笑っていた。
それを見て、唐園も笑顔を見せていた。
やはりかわいい顔の唐園、蛭地生徒会長を羨ましく思えてしまう。
「うん、その顔ができれば大丈夫だな」
「ありがとう、学原君」
「おう。それと……葵」
俺が屋上の入り口の方を、指さした。
そこには、ドアの後ろに隠れていた葵が恥ずかしそうな顔で出てきた。
「な、な、なんでアオイが分かったのよ?」
「俺は大人だからな」
「まだ、それを言うのですか?」
横目で俺を睨む、唐園。
だけど、彼女から既に怒りは消えていた。
かわいらしく笑っている唐園が、そこにはいた。




