027
俺が探していた、ユメッチが突然ここに現れた。
メガネをかけた、巻き髪ツインテールの女子。
キチンと紺の制服を着ていて、小柄だけど背筋いい女子だ。
ユメッチと望月に言われたこの女が、メガネの奥の目は睨んでいるようだった。
「ユメッチ……」
「カガミン、いい身分ね。別の男と二人きりだって」
「これは違う、遊びよ」
「遊びねぇ?」トゲがある言葉で、女……夢女が睨んできた。
「男を弄ぶとか、さすがは望月さん」
「ユメッチ違うの!あたしは……」
「何が違うのよ!この泥棒猫っ!」
唐園が、望月に対して顔を赤くして叫んだ。表情はこわばり、眉間にしわができた。
怒りに満ちた顔で、望月を睨んでいた。
「泥棒猫?」俺が引っかかって、口を出した。
「そうよ、あなたは私の大事なモノを奪った。
絶対に、あなたを許すわけにはいかないから!」
「大事なモノ?」
「幸賀よ」聞き慣れない名前が、唐園から出てきた。
「あれは、その……あたしも気になったから……たまたまで」
「それでも、付き合わなくてもいいでしょ!私も好きだったのだから」
どうやら、唐園と望月の間で揉めているのは、『幸賀』と言う人物だ。
待てよ、望月は生徒会長と付き合っているのだから……
「もしかして、蛭地生徒会長か?」
俺の出した結論に、思わず照れた顔に変化した唐園。
メガネをかけていても、頬の辺りがはっきり赤く見えた。
「どうして奪ったの、私の幸賀をっ!」
「奪ったのじゃ無い、あなたを選ばなかっただけよ!」
「嘘よ!」
女の争いだ。唐園はヒステリックに怒鳴っていた。
望月も、それでも一歩も引かずに強気に受けていた。
「あなたは、それほど幸賀が好きじゃ無かったでしょ!」
「でも今、彼とはつきあっているわ!」
「ソレがイヤなのよ、当てつけみたいで見せびらかしている。
あなたは、遊びで恋愛していて……ムカツクのよ」
「そんなんじゃ無いわ!ユメッチ、あたしは……」
望月のトーンが、弱くなっていく。
そこを、すかさず責めてくる唐園。
「だったら、なんで幸賀がこんなにも好きな私から奪ったのよ?」
「それは……奪いたくて奪ったんじゃ無い」
「奪ったんでしょ」
「奪っていないです」
「いいや、奪ったのよ!」
唐園は、強く言い返してきた。
言い返しながらも後悔の顔が滲んだ唐園。
強く言われた望月は、うつむいて黙ってしまった。
その光景を、俺は二人の間で見ていた。
(どうすればいい、俺は……)
恋の修羅場は、現代でも俺は経験が無い。
おっさんの俺でも、この言い合いに戸惑ってしまう。
戸惑ってオロオロしていると、二人組が姿を見せた。
「ちょっと、ユメッチ。なんでいるのよ」
腕を組んで睨んでいた葵と、ジュース4本を抱えて持つ聖也が姿を見せていた。
「アオイン、あなた……」
「ユメッチは負け犬なんだから、女々しいのよ!」
葵の言葉が、ナイフのように唐園に刺さっていた。
言われた唐園は、そのまま胸を押さえていた。
葵の言葉が、かなり効いているようだ。唐園の顔が、半泣き顔に変わっていた。
「いいわよ、私の気持ちなんか……」
「ユメッチ、あなたは友達でも何でも無いんだから」
「うー、アオインのバカッ!」
そのまま、唐園は俺たちから離れるように消えていった。
俺はうつむく望月を、黙って見ていた。
うつむいた望月の手には、スマホが握られていた。
スマホに張られたプリクラには、三人の少女が写っていた。
葵と望月と……そして唐園の三人が笑顔で写るプリクラが見えた。
「大丈夫か?」
「うん、平気。あ、今日は疲れたから……帰るね」
疲れた顔で望月は、ジュース4本を両手に抱える聖也の前に近づく。
「はい、ありがとう」
望月は財布から、お金を聖也に渡してお茶を聖也の腕の中から抜き取った。
「望月さん……」
しかし、聖也が言う前に小走りで望月が帰っていった。
俺は寂しそうに帰る望月の背中を見て、どこか不安に思えていた。




