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JK望月 香美の渦  作者: 葉月 優奈
二話:望月と遊びに行くとするか
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結果が出た。優勝は望月、2位は聖也、3位が俺で、ビリは葵だ。

悔しそうな葵だけど、葵のビリは圧倒的だった。

3位の俺と葵は、かなりの差があった。まあ、優勝した望月と2位の聖也もかなりの差があったけど。


「あー、なんでいつも負けるのよ。

せめて学原にだけ(・・)は、勝てると自信があったのに……」

「なんだ、その自信は?」

「じゃあ、アオイン。あたしは、お茶を買ってきて」

望月は、やや渋いオーダーを葵に頼んだ。


「お茶なんだ……へぇ」俺が聞いて、望月は頷く。

「学原は?」聞いたのは葵。

「俺は、ブラックコーヒー」

「学原も渋いじゃん!」

葵に突っ込まれる俺。あっ、しまった。


現代でよく頼む飲み物を、頼んでしまった。

この頃の俺は、何を頼んでいたのだろう。

考えても仕方ないので、否定をするのをやめた。


「じゃあ、行こうか。聖也」

「ボクはオレンジジュース」

「行こうか、聖也」

しかし、聖也のオーダーを聞かずに肩を組んできた葵。

そのまま、にこやかな力業で葵が聖也を連れていった。


「え、あと……ちょっと」

これも、葵の配慮なのだろうか。

聖也と葵が退場して、そばにはベンチがあった。

レースゲームの少し隣で、俺と望月が待たされていた。

再び、俺は望月と二人きりになった。


(そうだ、今度こそちゃんとリードしないと。何より俺の方が、大人なんだから)

俺は心で言い聞かせて、望月にしっかり向き合う。


「あのさ、望月さん」

「ん?どうしたの、学原君」

「望月さんは、彼氏がいるんだよね。俺なんかと一緒にいていいの?」

俺は気を遣うはずの場面で、間違えて変なことを言ってしまった。

その言葉を聞いて、望月は困った顔を見せた。


「ゲーセン、楽しいし。それにこれは、同級生との遊びだよ」

「そうか……そうだよな」

ちょっと安心もして、ガッカリもした。

俺の目の前にいる望月には、彼氏がいて、しかも女子人気抜群の、生徒会長蛭地だ。


「ねえ、望月さん。蛭地ってどんな人なの?」

「蛭地君はね……凄く真面目な人よ。

面白いかって言えば、そうではない……かな」

「あ、そうなんだ」俺は、ぼんやりと聞いていた。

「基本的に普通っていうか、そんな人」

「好きなの?」

「あっ、そうだ。『YUUGA』って、手品師を知っている?」

「ああ、テレビでたまに出ているな」

俺がいる現代でも、『YUUGA』と言う名前を聞いたことがあった。

有名な手品師で、猫を使った手品が多い。


「珍しい手品師だよね」

「そうそう、猫マジシャンとも呼ばれているよね」

「へえ、そうだったね。なんでそんな話をするの?」

「蛭地君は……YUUGAの弟なんだって」

「え?ああ、そうか」

この話は、聞き覚えがあった。

実は高三になったときに、YUUGAがテレビで弟を紹介した。

そのことが原因で、生徒会長の蛭地はさらに有名になった。


「知っていたの?」

「うん、なんとなく」

「そっか、まああの二人は兄弟だしね。ちょっと面影もあるよね」

「まあ、そうだろうね」

望月の彼氏の話、今の俺には正直どうでもいい。

アイドリングの会話は、これでいいだろう。

俺が社会人になって学んだ、会話術の一つだ。


(聞きたいことがあるなら、話しやすく相手をほぐせばいい)

どこかのビジネス書で読んだ知識を、俺は女子高生との会話で実践した。

前回、葵との会話で失敗したことを望月の会話の時に修正してきた。


「ねえ、望月さんはユメッチとは知り合い?」

「え?うん」だけど聞いた瞬間に、彼女の顔が一気に曇った。

やはり、ユメッチという言葉は何かあった。

望月と葵、二人とは良好では無い関係というのが分かっていた。


「学原君は、ユメッチと知り合いなの?」

「うーん、よく分からない子だよね」

適当に、話を合わせた。

実際、どんな子か分からない。


「なんで、そんなことを聞くの?」

「実はね、君に聞きたいことがあるんだ」

「ユメッチの事だよね」

「そう、彼女の名字を知りたいんだ」

「え?そんなのでいいの?」

どうやら、この頃の望月はユメッチの名字を知っていた。

赤ん坊望月が知らない名字の情報が、これで得られると確信した。


「教えて欲しい」

「別に構わないけど、確か……2年B組、唐園(とうその) 夢女」

「唐園?変わった名字だな」

なんで、赤ん坊望月がこんな珍しい名字を忘れているのだろう。

後、B組だから俺の生徒手帳に載っていないのは理解できた。


それよりも、これは大きな情報だ。

赤ん坊化した望月を戻す、きっかけになる重要な情報を得た。


「ありがとう、望月さん」

「うん、でも……」話している望月の顔が、険しいままだ。

「どうしたの?」

「あら、カガミン。生きていたのね」

俺たちに声をかけてくる女の声。

声の主は、間もなく姿を見せた。

俺……というより望月と同じ黄色のブレザーに水色のスカート。

同じ学校の生徒だと、すぐに分かった。


メガネと、巻き髪ツインテールの女生徒が睨んでいた。

睨んでいるのは、望月に対して……だ。

「ユメッチ……どうして?」

「こっちが聞きたいわよ、カガミン」

腕を組んで、一触即発の空気に変わっていくのが肌で感じられた。



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