025
望月は、かなりマニアックなゲームを指さしていた。
葵と聖也も、プリクラを撮って戻ってきた。
そして、戻ってくるなり一つのレースゲームの所に嬉しそうに駆け寄る望月。
「これ、やりたい」
望月が、指さしたのは漫画が原作のレースゲームだった。
原作の漫画も、少年誌の漫画で首都高を走る走り屋のヤツだ。
かなり硬派な少年漫画だったよな。
「これって、知っているの?」
「ううん、ただ面白そうだからって。レースゲームでしょ」
「まあ、そうだけど」
「ちょうど四人、座れるし」
望月は、そういいながら颯爽と運転席の中に入っていった。
隣に三つの運転席が、空いていた。
「ほらほら、みんなもやろ!」
望月の笑顔は、プリクラよりもなんだか嬉しそうだ。
自然の笑顔が、弾けているそんな風に見えた。
それを見ながら、葵が苦笑いをしていた。
「相変わらず好きなのね、車」
「うん、レースゲームをやってみたかったんだ。一度、四人で」
「仕方ないわね。学原……聖也、付き合ってよ」
「何を言っているの、アオインもよ!」
かわいく葵を誘ってきた望月。
葵も渋々参加した。俺も聖也も、この提案を否定することはしない。
望月の強い押しに押されて、俺たちはレースゲームの運転席に座った。
それにしても、望月のテンションが高い。
嬉しそうな望月は、本当に普段見せたことの無い笑顔だ。
でも、それこそ素の望月なのだ。彼女の本当の姿なのだ。
その声を聞く度に、裏山の赤ん坊の声によく似ているのが見えた。
「よし、じゃあお金入れて。スタートして……対戦ね」
「あの、一ついいかな?」
そこに割って入ってきたのは、意外にも聖也だ。
「どうした?」
「ねえ、何かを賭けて勝負しない?
ただレースゲームをするのは、面白くないし」
「いいね、やろやろ」
でも、俺は聖也がゲーム得意なのを知っていた。
それでも、幼なじみの葵も乗り気だ。
軽いノリで、何も考えていないように見えた。
「で、何をかけます?」望月が聞いてきた。
「まあ、そうだね、ジュース買ってくるって言うのは?ビリのおごりで」
「いいよ、やろ」望月がなぜか俺の隣で、手袋をつけていた。
望月は、なぜかレーシンググローブをつけていた。というか、持っていたのか。
目つきが変わると、俺の目の前のゲーム画面も変わっていた。
それは、リアリティある首都高の映像が広がっていた。
「車を選んでさあ、レーススタートよ」
望月の言葉と共に、レースゲームがスタートした。
そして、俺は数秒後彼女の走りに驚愕した。
俺の画面では、驚きの光景が見えた。
「早い」望月の赤い車が、颯爽と首都高を駆け抜けていく。
だけど、賭けレースの言い出しっぺ聖也が追いかけていく。
それでも、望月の早さは圧倒的だった。
(な、なんだこれは!)
ゲームに関しては、俺も多少なりとも腕には自信があった。
だけど俺が、望月に全く追いつけない。
無論、聖也に追いつくのも難しい。
それでも、望月の早さは圧倒的だった。
コーナーワーク、ドリフト、完璧な運転テクを、これでもかと見せつける望月の赤い車。
黒い車の聖也が、必死に追いかけるも最後まで望月の前に出ることはできなかった。
「いっちば~ん!」レースが終わった望月は、興奮していた。
そして、ビリは俺……ではなく葵になっていた。
葵は悔しそうな顔で、運転席から出てきた。
「ちょー悔しい……」
不満な顔で、葵が落胆した顔を見せていた。




