024
大通り、駅の近くに大きなゲーセンがあった。
2000年代頃から、ゲーセンは数が減っているらしい。
そういえばこのゲーセンは、2021年になってもかろうじて生き残っていたな。
二階建てのゲーセンで、一階はプリクラエリアだ。
いくつものプリクラが置かれた場所に、俺たち四人は来ていた。
「ねえ、プリクラ取らない?」
即座に仕切るのは、葵だ。
やはり、この時期の女子高生もプリクラが大好きだ。
「うん、いいよ」
「じゃあ、ペア分けしない?」
「いいですよ」穏やかに答える望月。俺も同意した。
「あたしは、聖也と撮りたいけど……」
「どうぞ」穏やかに促す望月。
聖也の方は、微妙な表情だけどすぐさま近くのプリ機に葵が連行していた。
これも、やはり葵の配慮だろう。
俺は、葵に対して親指を立てていた。
(そうだ、これはチャンスなんだ)
意を決した俺は、緊張した顔で……口を開いた。
「ねえ……も……」
「学原君」声をかぶせてきた望月。
「は、はい」俺の返事は、声がうわずった。
え、名字を知っている。陰キャラの俺の事を、望月が知っていた。
「プリ……好きなの」
「え、や……撮るのは初めてで……」
「だったら、あたしが教えてあげるね」
「いいの?でも望月さん……彼氏いるでしょ」
「いいの、いいの。
蛭地は、あたしが行きたいっていってもゲーセン行かないから」
かわいい笑顔で、望月が言ってきた。
初めてまともに喋ったけど、めちゃくちゃかわいい。
確かに今のこの声は、裏山の赤ん坊によく似ていた。
だけど放つ陽キャラオーラから、天使のような声に聞こえていた。
「じゃあ、これ入ろうか」
望月が近くにある一つのプリクラに、俺を招いた。
俺も望月に連れられて、中に入っていた。
「ゲーム好きなの?」
「うん、学原君も好きそうよね?」
「好きだよ、家にプロステ2あるし」
「それはすごいね」プリクラの中で、感嘆の声を上げる望月。
その後、プリクラの画面が表示されていた。
慣れている望月は、テキパキと画面の操作をしていた。
「学原君は、どんな風に撮りたい?」
「うーん、俺は初めてだから任せるよ」
「うん、オッケー。じゃあ目強調にして……あとはうん、これでいいかな」
「で、どうすればいいの?」
「かわいいポーズを撮ればいいの。
こうやって両手を広げて、かわいさをアピールして」
両手を広げて、笑顔を見せている望月。
やばい、この狭さだと望月のかわいらしさが前面に出てきた。
彼氏でも無い俺が、ものすごく照れてしまう。
「学原君も」
「こう?」俺は両手を広げていた。
なんだかぎこちない俺だけど、それでも俺は両手を広げた。
広げた瞬間に、写真が撮られていた。
「え?終わったの?」
「うん。かわいかったよ、学原君」
「か、かわいい?」俺は幼少期以来、その単語を言われたかもしれない。
リアルおっさんが、女子高生に言われて急に照れてしまった。
「うん、じゃあ出よ」
望月がそのまま、プリクラの外に出て行った。
先に出た望月の後ろから俺が出て行くと、羨ましそうに望月がゲーセンの遠くを見ていた。
「ねえ、学原君はああいうゲームは好きなの?」
望月が指さしたのは、意外にもレースゲームのエリアだった。




