021
夕方になった、俺と聖也は玄関で待っていた。
学校の玄関は、人通りがひっきりなしだ。
放課後で既に、授業が終わってから一時間が過ぎた。
今、俺と聖也は一時間ほど待たされていた。
「遅いな」
「望月さんが生徒会長に呼ばれて、時間がかかっているみたい」
「なんか、悪いことでも……」
「あり得ないよ!」俺の言葉を遮るように、速攻で否定をしてきた聖也。
聖也は、望月のことをなぜか庇っていた。
「でも、涼真。ありがと」
「何がだ?」
「葵との関係を……直してくれて」
いきなり聖也が、感謝をしてきた。
その言葉に、俺は照れた顔を見せた。
「俺は別に……そんなつもりは無い。
だけど、親友のお前が良くなれば……それにこしたことはない」
「黒猫も、涼真が見つけてくれたんだよな」
「ああ」俺は肯定した。
「葵とも、ちゃんと話をしたかったし」
「でも、涼真って変わったよね?」
「そうか?」俺は首をかしげた。
「うん。なんというか最近の涼真は大人びているというか、余裕があるというか」
「ま、まあな」意外と鋭い聖也。
見た目が高校生でも、今の俺の意識は間違いなくおっさん。
人生三十四年も生きている、経験豊富でおっさんくさい男だ。
「だけど、今の涼真も好きだよ」
「おいおい、俺はそんな趣味はないぞ」
「好感が持てるってことだよ、勘違いしないで」
メガネをかけたまま、聖也は怪しく笑っていた。
どこまで言葉を本気で感じればいいのか分からないが、一応言葉は受け止めておこう。
「おー、待っているわね」
生徒達が出てくる玄関に、一人の女が姿を見せていた。
金髪ポニーの葵だ、遠くからでも見て分かるような大声。
聞いているこっちが恥ずかしくなる、周りの注目を集める大声だ。
「あれ、望月さんは?」
「うん、今……来るよ」
葵が、俺たちと合流した。
最近の彼女が放つ陽キャラオーラには、随分慣れていた。
彼女が現れるだけで、周囲の空気が華やかになっていた。
ソレと同時に、聖也の方をチラリと見る葵。
聖也も葵に対しても、よそよそしい態度だ。
二人のぎこちない関係は、まだ雪解けはしていない。
すると、葵が俺の腰の辺りを小突いてきた。
「葵?」俺が言うと、葵が俺に耳をつけてきた。
「どこに行く?」
「どこにって……」俺と葵が、ヒソヒソと喋っていた。
同時にその雰囲気を見て、聖也が少し離れていた。
俺と葵に気を遣っているのだろうか。
でも、そこに太陽のように眩しい一人の少女がこちらに向かって走ってきた。
「みんな、お待たせ」
意外と大きな胸をゆすりながら、栗色のロングヘアーの少女が走ってきた。
紺のブレザー、水色のリボン、優しい顔で光のオーラを放つ少女に、玄関にいる周りの男子も注目してしまう。
そう、彼女こそ『望月 香美』その人だった。




