結.第一のざまぁ:神の審判
人それを、焼糞という
王国の最後の一週間、かつて栄華を誇った王都は瓦礫の山と化していた。街から人が消え、ただ風が吹き荒れる音だけが響く。もはや、国と呼べるものは何も残っていなかった。
それでも王だけは、玉座の残骸に座り、狂ったような笑い声をあげていた。髪は乱れ、王服はほころび、かつての威厳は影も形もない。彼の目には、最後の望みだけが不気味に燃えていた。
「もうどうなってもいい……だが最後に……最後にもう一度だけ儀式を遂行する!」
四度目の儀式には、誰もついてこなかった。衛兵も側近も、生き残った者は皆、この狂気の王から逃げ出していた。王は独りで瓦礫の中をよろめきながら歩き、かろうじて原型を留めていた儀式の間へたどり着いた。
王は震える手で捧げものとなる一切れのパンを置くと、もはや祈りでも詠唱でもない、絶望の叫びを上げた。
「来い!来い!来い!誰でもいいから力ある者よ来い!この私の願いよ、届けぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
召喚陣が輝き始めた。それはこれまでとは比較にならない光だった。太陽そのものが部屋に降りてきたかのような輝きが儀式の間を包み、瓦礫の影さえも消し去った。
「きたきたきたキタキタァァァァァァァァ!!!さぁいでよ!!そして、我が願いをかなえるがいぃぃぃぃぃ!!」
王の狂気じみた叫びに応えるかのように、光の中から姿を現したのは――魔王でも竜人でも聖女でもなかった。
“愚かなる王よ。よくもまぁ四度も禁を破りましたね”
揺らめく陽炎の中に浮かぶ存在は、あらゆる生物を超越した存在。まさしく『神』そのものだった。
“あなたの欲望が、どれだけの民を苦しめ、この地を荒廃させたかわかってますか?”
脳内に直接響かせる神の声は静かだったが、その一言一言が王の魂を震わせた。
“一度目の儀式で、あなたは魔王を呼び出しました。結果は火の玉の雨であり、国土は荒れました”
“二度目の儀式で、あなたは竜人を呼び出しました。結果は光のブレスであり、大地の一部は還りました”
“三度目の儀式で、あなたは聖女の赤ん坊を呼び出しました。結果は天変地異であり、国は滅びました”
神は手をかざす、その動作だけで周囲の空気を圧迫した。
“四度の禁忌、三度の災い。国が滅びてなお、あなたは一度として過ちを認めませんでした。むしろ、最後の最後まで、自分だけの救済を求めました……その行い、断じて許せません”
王はようやく恐怖を覚えた。これまで感じたことのない、根源的な畏怖が全身を貫いた。彼はひざまずき、額を瓦礫に擦りつけながら許しを請おうとした。
「お、お許しを……私は……」
“もう遅いのです。地獄で、永遠に己の愚かさを反省しなさい”
パチンッ!!
神が指を鳴らしたほんの小さな音と同時に、王の影から無数の闇の手が生えだし、絡みつくようにして掴んだ。その感触は冷たく、ぬるぬるとしており、生理的な悪寒を呼び起こすものだった。
「お、お許しを……お許しくださぃぃぃぃぃぃ!!」
王は必死に懇願する。許しを請うが、闇の手はそのまま王を影の中へと……地獄へと引きずりこんだ。
いつのまにか召喚されていた神も消え去っており、後に残ったのは……
完全に滅びた無人の聖堂を駆け抜ける、風の音だけだった。
―——
地獄は王の想像を超えていた。
そこには炎の川も、拷問器具も、悪魔の手下もいなかった。あるのは果てしなく続く白い空間と、その中央に鎮座する一つの巨大な装置――複雑に組み合わされた歯車。通称『奴隷が回してる謎の棒』だけだった。
唖然とする王に、神の声が地獄の空間に響き渡った。
“愚かな王よ、罪が許されるまで歯車を回し続けなさい。
あなたの欲望がもたらした災いが、あなた自身に裁きを与えるでしょう”
「い、嫌だ!!私は悪くない!!悪くないぃぃぃぃぃぃ!!!」
王は泣き叫び、この段階に来てなお言い訳を述べながら労働を拒否した。しかし、彼の意思とは全く関係なく、身体は自動的に歯車の取手に手をかけた。その手は一度握ったら離すことができないものだった。
それでもなお、手を離そうとあがく王に、突如身体が燃えるような痛みが走った。最初は身体の一部から始まり、次第に全身を焼くような苦痛へと変わる。骨の髄まで浸透するその痛みは、彼に選択の余地を与えなかった。
“回しなさい。回す事がその痛みから解放される唯一の手段です”
痛みから逃れたいあまり、王はぐっと力を籠める。
歯車は重かった。信じられないほど重かった。それでも痛みから逃れるため、懸命に力を入れた事で歯車が動き始める。回し始めると、歯車が連鎖運動を始めた。一つの歯車が次の歯車を動かし、それがまた次の歯車を動かし始めた。
一回転するごとに、記憶が蘇った。
最初の回転で、魔王の火の玉で耕す畑と住む家を失った農民の叫びが聞こえた。
二回転目で、竜人の光のブレスで突如愛する者を失った民衆たちの嘆きが皮膚に伝わった。
三回転目で、聖女の赤ん坊が引き起こした天変地異で逃げ惑う人々の恐怖が肺を締め付けた。
「ヤメロ……ヤメテくれ!」
王は叫んだが、歯車を止めようとしたら身体に燃えるような激痛が走る。その耐えがたい痛いから逃れるため、王は歯車を回し続けるしかなかった。彼の腕は悲鳴を上げ、背骨は軋んだ。それでも、燃えるような激痛に比べればまだマシ。
歯車は止まる事なく動く。彼が王国を動かそうとした欲望そのものが、この果てしない労働として具現化していたのだ。
彼の王国は滅び、彼の名は歴史から抹消された。後世の者たちがこの国の廃墟を見つけても、そこに刻まれるのは「禁断の儀式を繰り返した愚王の物語」だけだろう。教訓として、欲望の危険性として語り継がれるだけの存在となったのだ。
時という概念のない地獄で、王は歯車を……『奴隷が回してる謎の棒』を回し続けた。
一回転ごとに蘇る苦痛と、決して軽くなることのない取手の重さ。これが、無辜の民を顧みず、四度も禁忌を破った愚王に与えられた罰だった。
欲望がもたらした代償を支払うため、彼は回し続ける。
果てしない時をかけて。
休みたけければ、死んでからたっぷり休め!!ピシャッ( ºДº)ノ¯ζ
まぁ……そこで死ねるかどうかしらんけどな( ^ω^)




