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?.第〇の儀式:予約された神々の天罰

狭間の神の正体は、かつての『闇堕ち聖女』だったんだ!!


な、なんだってー!

 ここは世界と世界の狭間に存在する次元の狭間。

 時間も空間も、光も闇も、現実も夢も、全てが曖昧に混ざり合う混沌の領域であり、かつては「闇堕ち聖女」と呼ばれた存在が眠っていた地でもあった。彼女な『聖女召喚』の波動をキャッチしては次元の壁を踏み破って『聖女召喚』に割り込んで乱入し、大暴れしてから帰還して眠るを繰り返していた。


 そんな『闇堕ち聖女』は、ある日唐突に『狭間の神』へと昇格し、住処としていた次元の狭間は彼女の支配下として置かれることとなったのである。





 ―——


「ふふ……昔の私がみたら、どんな顔するかしら」





挿絵(By みてみん)

 狭間の神セリアは異世界ネットワークの通販サイト、アマゾソで購入したログハウスの中のソファーでグラス片手にくつろいでいた。その姿はワイシャツとショートパンツというラフな服装であり、グラスに入っているのはサソトリーのレモンティー。『聖女召喚』とは無縁な科学が発展した世界を知る前ではまず考えられない暮らしぶりである。


 そんな彼女の前に置かれているモニターには、先日地獄に突き落とした愚王が映し出されていた。

 王は相変わらず嘆きながら『奴隷が回してる謎の棒』を回している。その様をみて、憐れとは思っても同情はしない。使者を通して何度も忠告やら警告をしてなお、愚行に及んだのだ。少なくとも、王の愚行が原因で滅びた国を復興させるだけの力を生産させない限りは、解放させない。ただ……少し疑問に思うところがある。


「あの『奴隷が回してる謎の棒』って……一体どんな仕組みになってるのかしら?」


 あの装置は回せば土地開発に使える『DP(ダンジョンポイント)』とか呼ばれるパワーを得られる、メノレカレでサツマとかいうある業界では頭の逝かれたマッドサイエンティストとして有名な悪魔が激安でレンタル出品していたものだった。懇意にしてる他の神から、「奴の激安出品物は記載されてないおかしな挙動がわんさか出て来るから絶対ヤメロ!!」っと口をそろえて忠告されたが、使わせるのはあの愚王だし、多少の不都合が起きても問題ないっとばかりにレンタルしたのだ。


 結果としては、懸念していた不都合は使用者に悪夢をみせる程度。

 少なくとも、狭間の神と呼ばれる前——『闇堕ち聖女』と呼ばれていたころに浴びせていた闇の炎が与える精神ダメージよりかは遥かにマシな仕様。というか……


「昔の私は、痛すぎたわ……『闇の炎に抱かれて消えなさい』とか『塵も残しません』とか『もう二度と会う事はないでしょう』とか……これが、黒歴史てやつなのね」


 セリアは苦笑した。あれはまさに『黒歴史』と称するに値する忌々しい記憶の数々。あの頃はもう正気を失っていたとしか思えないほどの暴れっぷりで、多くの人々に『恐怖』や『畏れ』といった思念を向けられた。それらの思念が長い年月を経た事で“信仰心”に変化し、それによって『闇堕ち聖女』は“神”―――“祟り神”へと昇格。その際に並の状態異常を弾き返す神固有の超耐性を手に入れたおかげで、彼女は正気に戻れたのだ。


 あの時の衝撃……いや、笑撃は今も忘れられない。

 あまりの恥ずかしさに「もう生きていけない……」っと本気で自殺まで考えたぐらいだ。


 でも、神は生半可な方法で自殺ができず、かといってこのまま生き恥さらせられない……

 そんな矛盾を解決させるべく、取った手段が……


「……とりあえず、独白的な身の内話はこの辺にしておいときましょうか」


 これ以上『闇堕ち聖女』時代の黒歴史を思い出すと、神の超耐性をもってしても耐え切れない特大精神ダメージを負いかねない。気持ちを切り替えるためにセリアは各世界の波動、『聖女召喚』の儀式の波動をキャッチすべくアンテナを作動させた。


 狭間の神の仕事は違法な『聖女召喚』の取り締まりと裁きだ。

 神となる前の『闇堕ち聖女』時代から継続している仕事ではあるが、あの頃の無差別で容赦ない取り締まりと違い、今は明確なルールを設けている。


 裁きも神となったセリアが直接ではなく、神に仕える使者達――狭間の魔王メルカス、狭間の竜ハロルドの二人を代理として遣わせるようにした。二人は、神の代理としてきっちり仕事をしてくれている程度に優秀。

 ただ、メルカスは傲慢でやることなすことがとにかく派手過ぎる。ハロルドは美食と睡眠しか興味ないっと能力以外の面。主に趣味嗜好や性格にかなりの問題を抱えていた。


「二人とも、魔王と竜の本能に従ってるといえばそれまでだけど……かといって、人間の聖女も問題なく働いてくれるとは言い切れないのがつらいとこだわ」


 そうぼやくセリアの視線はログハウスの隅、ゆりかごでお昼寝中の赤子のミシェルに向けられていた。

 彼女は最近迎え入れた三人目の使者候補であり、内に秘めた聖力は高いのだが……あの愚王が遂行した召喚。滅びを与える存在を呼び出す召喚に選ばれた点からみて、世界は彼女をヤバイ存在として扱っているのだろう。


 現に、召喚された先では泣き声で天変地異を起こすとかいう、めちゃくちゃな力を発揮したのだ。

 このまま成長すれば、『滅びの聖女』とか呼ばれる可能性が極大である。


「……もしかしたら、あの子は私が引き取るのではなく『破壊と殺戮の女神』のフレイガ様に引き取ってもらった方がよかったのかしら?」


 そう思いつつも、一度引き取ると決めた以上は一人前になるまで育てる気満々という、養母としての責任感はあるセリアであった。


 そうこうしてるうちに、アンテナが一通りの『聖女召喚』の波動をキャッチし終えたようだ。詳細が羅列としてモニターに映し出された。

 それを、リモコンで一つ一つ確認していく。


「ふむふむ……相変わらず『聖女召喚』は行われてるけど、召喚の儀式に厳しい制約を設けたり、召喚する聖女を不当に扱わないように厳格化させてる世界も増えてきたから、違法な『聖女召喚』はずいぶん少なくなったわね。これも、私達の長年の地味な活動のおかげかしら」


 有無言わさず王国を滅ぼす行為が地味なわけないだろ!!


 各所でそんなツッコミが入っても、セリアは気にしない。

 ごまんとある世界で、たかだか百や二百の国を滅ぼした程度は誤差の範囲。


 各所の苦情を意図的に遮断しながら、空になってるグラスに注ぎ直したレモンティーを口に付け、各所の『聖女召喚』の内容を精査していく中……







 バリーン!!




 突如、グラスが握り潰された。





挿絵(By みてみん)

 それはもののはずみとかではない。グラスを握り潰してなお、握力を弱める事なくそのまま握り続けていたのだ。

 全身からも凄まじい殺気が炎に変換されて放出されており、ログハウスが激しく……いや、次元の狭間そのものが激しく揺れていた。


 この激しさだと、他の世界にもなんらかの影響が出ているだろう。それだけの殺気を、セリアが放出したのだ。



 その理由は……




「ふ、ふふ……フフフフッフウ……まさか、まさか欲望に塗れてるだけでない。こんな……こんなふざけてるとしか思えない『聖女召喚』の儀式を行う愚者が居ただなんて……」


 セリアはあくまで『愚者』と言ったが、実際は愚者なんかでは言い表せられない程の愚者。

 過去最高ともいえる、愚者の中の愚者。吐き気をもよおす愚者。キングオブ愚者ともいうべき愚者だ。


 セリアはいきなり放出した殺気に驚いて泣きそうになってるミシェルを抱いてあやしながら、スマホで近所の異世界を管理する神々に連絡し、各異世界で悪影響与えかねない殺気を放出した事を詫びて回った。

 その際、なぜあれだけの殺気を出したのかと聞かれたので正直に……

 ある世界でふざけた『聖女召喚』を行ってる事を話した瞬間、びしっと次元の狭間が揺らいだ。

 do

うやら他の神もふざけた『聖女召喚』にセリア同様の怒りが湧いたようだ。代理である二人の使徒を遣わすなんて言わず、狭間の神セリアが直々に降臨して裁きを下せっといわんばかりの免罪符的なメールが次々と届く。

 謝罪の連絡が神直々の天罰後押しという思わぬ事態に、セリアはつい笑う。


「いいでしょう……神々がそこまで言うなら仕方ありません。あのキングオブ愚者には狭間の神セリアの名において、直々に神々の天罰を下してやろうじゃぁないですか!!」


 神は原則として現世に……より正確にいえば、一般レベルの生物が住む世界に舞い降りてはいけないルールが存在する。

 一応各種の抜け道があるとはいえ、神自らが降臨しての天罰はよほどの事態でなければ行えない。


 つまり……あの、キングオブ愚者は神自らが降臨しての天罰を下すべきっと神々から判断される程の愚行を犯したといえる。





―——


 セリアはミシェルを寝かしつけた後、ログハウスの屋根裏部屋に仕舞い込んでいた衣装箱を取り出した。

 そこには、かつての装備。『闇堕ち聖女』時代に装備していた黒き聖衣と錫杖が保管されていた。


 衣装に手を伸ばすと、それは冷たく、重い記憶を宿しているようだった。セリアは一瞬ためらいを見せたが、すぐに表情を引き締めた。


「大丈夫……私はこれから正気を失うのではく……正気を保ったまま……狂う!!」


 黒き衣装を身にまとい、黒水晶で出来た禍々しい錫杖を手にした瞬間、神……いや、セリアの雰囲気が一変した。ラフな普段着のときの緩さは消え、神としての威厳と、心を埋め尽くす復讐心が満ちてきた。

 神としての超耐性を手にした今はその復讐心に正気を狂わさる事はなかった。だが……彼女はあえて狂った。


 キングオブ愚者という、世界のイレギュラーを滅ぼすため……


 彼女は、あえて正気のまま狂ったのだ……



 ログハウスを出ると、そこにはメルカスとハロルドが待機していた。

 二人は母として慕うセリアが次元の狭間を揺るがすほどの殺気を放出した事や自ら出撃する事に驚きはしたが、正気のまま狂うセリアをみて全てを悟ったようだ。


「ついてきなさい」


 二人は黙ってこくりと頷く。

 セリアは二人の間を抜け、次元の壁を踏み破った。空間が裂け、混沌の渦が現れる。その先に続く世界はキングオブ愚者の国。セリアはためらうことなく踏み入り、二人も続けて飛び込んだ。


 三人が旅立った後、次元の狭間に一時的な静寂に包まれた。





 そう、これはあくまで一時的。






 この後、すぐに次元の狭間にまで揺るがす、阿鼻叫喚の悲鳴が響き渡るであろう事は確定的に明らかなのである。












 そして、悲鳴の発生元がどうなったかと言われたら……


 記憶媒体が破損されているため、復旧が済み次第に公表しようと思う。








 とぅーびーこんてにゅーど?

これまた、続きがありそうなところで〆となりました。


しかし……ここでもあの薩摩芋ちゃんの名前が出てくる辺り、奴もこの元闇堕ち聖女様と同じくありとあらゆる次元にその名(悪名)を轟かせている存在なのかもしれない_(:3 」∠)_コレデサンサクヒンニワタッテトウジョウシタコトニナル


ちなみに、薩摩芋ちゃんの活躍がみたいなら『クズぷちっ』と『いいとら』をどうぞw

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― 新着の感想 ―
健康的な生活を送れてるみたいで何よりです。 あの悪魔さんですから、何かしらあるかと思ったのですが……意外と普通でしたね(笑) 泣き声での……ごく小規模だけど出来る方が居たな~。ホントに小規模ですよ…
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